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2021年08月07日

企業経営理論 〜価格設定戦略〜

価格設定戦略

市場浸透価格戦略

市場浸透価格(ペネトレーティング・プライス)は、短期的には早期に市場シェアの獲得、市場シェアの最大化を目的とし、また長期的には販売量が多くなることで単位コストが減少し利益が上昇することを目的とした価格設定方法である。この価格設定を行うのに優位な条件として、@経験効果により単位コストが減少する、A潜在的競合他社への牽制効果がある、B市場が価格に敏感で、低価格により市場の成長が見込める、の3つが挙げられる。需要の価格弾力性が高いときに採用されやすい。
上澄み吸収価格戦略

上澄み吸収価格(スキミング・プライス)は開発に要した数年にわたる多大な費用を早期に回収するため、初期価格を高く設定すると同時に多額の広告費を集中投入して、短期間に市場から利益を得る戦略のこと。最も高い価格からスタートして、市場の拡大・競合の参入とともに徐々に価格を下げていく価格設定方法である。新技術の製品を発表する際によく用いられる。この価格設定を行うのに優位な条件として、@高い価格でも十分な需要がある、A大量生産によるコスト削減効果の利点を得られない、Bイニシャルコストが高く、潜在的競合が市場に参入しにくい、C高い価格は優れた製品というイメージを伝える、の4つが挙げられる。模倣されやすい新製品にスキミング価格を設定した場合、低価格ラインの模倣品が競合から投入されシェアを奪われる恐れがある。したがって、スキミング価格が有効な条件は、競合他社が模倣品を導入しにくく、製品品質やイメージ面において優れていることとなる。
ターゲット・コスティング

ターゲット・コスティングとは、市場・消費者に規定される目標価格を出発点とし、そこから企業が必要とする目標利益を差し引き、結果として算定される原価をターゲットとして、企画・開発段階から、製造部門や購買、サプライヤーさらには顧客をも巻き込んだ部門横断的な取り組みにより、所定の品質を満たした製品・サービスを具体化する取り組みである。
コストベース価格設定法

あらかじめプロトタイプのテストを繰り返し、最終的に販売を想定した製品のコストに基づいて価格を決める方法で価格を設定すること。コストベース価格設定には、製品の製造コストに標準的な利幅をつけて価格を設定するコスト・プラス法のほか、損益分岐点、目標利益による設定方法がある。
需要志向価格設定法

ユーザーが製品やサービスのベネフィットに対して支払ってもよいと考える対価をベースに設定されるさまざまな価格設定方法のこと
交差弾力性

交差弾力性は、値がゼロより大きくなればなるほど両者は競争関係にあり、またゼロより小さくなればなるほど両者は補完関係にある可能性が高い。また、プラスでもマイナスでもゼロに近ければ近いほど独立製品の関係にある。例えばスポーツカーと軽自動車の場合、利用者層や使用目的が異なるため、軽自動車の価格の変化は、高級スポーツカーの需要量には影響しないことが予想される。こうしたケースの交差弾力性の値はゼロに近い。
交差弾力性=製品Yの需要量の変化率÷製品Xの価格の変化率
プライス・ライニング戦略

ウイスキー、ネクタイ、スーツなどの製品では、低価格の普及品から高価格の高級品までのバリエーションを提供することがある。このように、複数の価格帯で製品展開することを「プライス・ライニング戦略」と呼ぶ。低価格の普及品から高級品までのバリエーションが用意されている製品カテゴリーでは、1,000円、3,000円、5,000円のようにいく つかの価格帯(プライス・ライン)にまとまっている。顧客は、こうした製品に対して、値段の高安を判断する何段階かの参照価格を有しているため、その参照価格に合わせて価格を設定するプライス・ライニング戦略が適する。
キャプティブ価格設定

キャプティブ価格設定とは、同時に使用される2つの商品のうち、基本となる製品を相対的に安く設定し、付随して消費される製品やサービスを相対的に高く設定することで利益を確保する戦略であり、浄水器やプリンターなどで導入されている。例えば、プリンターとインク、カミソリと替刃では、プリンターやカミソリは比較的安価に設定されている。
威光価格

意図的に高価格を設定することによって、高品質を訴求する価格設定方法である。消費者が価格によって品質を判断する価格の品質バロメーター機能は、価格以外の要素で品質が判断できない場合に有効に働きやすいが、逆の場合は有効に働きにくい。
価格の文脈効果

同一価格でも周辺状況によって受け止め方に差が出る現象のこと。消費者は価格を相対的に評価しやすいという一面があり、例えば、4000円の肉は2,000〜3,000円という値札の商品群の中では高いと感じるが、5,000円や6,000円以上の商品が多く並ぶ所では安いと感じられる。
端数価格設定

消費者は、切りの良い価格よりも若干低い価格に対して反応しやすいこと。切りの良い価格より少し低い価格設定にすることで、消費者に安いという印象をもたらす効果である。たとえば3,000円ではなく2,980円で販売することで、消費者は安いという印象を受けやすくなる。
イメージ・プライシング

イメージの違いに基づいて、同じ製品にいくつかの異なる価格設定をすることである。大して変わらない類似品質製品に別ブランド名を付けて複数のブランドを持ち、片方を広告などでイメージを高め、より高価格で販売する方法である。高価格バージョンで利幅を拡大し、また全体の販売規模拡大により利益を拡大する。例えば、同じ香水でも、名前や瓶を変えイメージを変えることで、そのイメージに応じた価格設定をすることできる。香水は、消費者の自己イメージ形成欲求や顕示欲求が強い商品のため、このような価格設定を行うことができる。
心理的財布

消費者は心理的に多くの財布を持っており、ある支出を行う場合、どの心理的財布から支出するかで、その金銭的支出による心の痛みが異なるという理論である。たとえば、生活必需品用財布、贅沢用財布、文化・教義用財布、外出用財布、ポケットマネー用財布など数多く存在する。企業は、製品が消費者にどのカテゴリーで認知
されるかで感度が変わる。たとえば、冷風機の価格は、扇風機のカテゴリーに入ると高く感じられ、クーラーのカテゴリーに入ると安く感じられるといったケースである。
支出の痛み

消費者が金銭を支払うことに生じる心理的な痛みのことである。一般的に同規模の金額を支出する場合でも、趣味などに支払う場合と比較し、公共料金などの義務的消費に支払う場合の方が支出の痛みは大きい。
プレステージ効果

プレステージ効果とは、高品質なものを好む消費者の購買意欲を刺激するために、敢えて高価格な価格設定を行うことによる効果のことである。
差別的価格法

同一の製品であっても、国内と海外、シーズン中とオフシーズン、あるいは業務用と家庭用などの区分によって、消費者間での需要の価格弾力性が異なることがある。需要は消費者のニーズと連動するため、地域、季節、消費者の種類によってニーズが変化する。1つの製品やサービスを外部環境の変化に合わせて、複数の価格で販売することを「差別価格」という。市場セグメント間の価格弾力性が等しい場合よりも、価格弾力性に差があるほうが有効である。顧客の知覚する価値に基づいた設定であり「需要」を基準とした設定方法のこと。製品の真の価値ではなく、その製品に対して顧客が支払っても良いと感じる価格を適正価格とするため市場調査を詳細に行う必要がある。化粧品やブランドもののバッグなど、製造原価と顧客の認識価格が大きく異なる製品でよく使われる。また具体的な例として、チェーン居酒屋のターゲット別の出店戦略などがある。同じ系列の居酒屋で、同様のメニュー表にもかかわらず、価格設定が店ごとに違うのは差別的価格法の戦略となる。
慣習価格

慣習価格とは、心理的価格の1つで長期にわたって一定している価格(缶ジュースなど)である。慣習価格の特徴として、価格を一定レベルから下げても需要はさほど伸びない、一方で一定レベルから価格を上げると需要が著しく減少することがあげられる。慣習価格に該当する商品として、ガムやペットボトル入りの清涼飲料水などをあげることができる。
品質バロメーター機能

商品の品質判断を価格以外で行うことが難しい場合、「低価格=低品質」「高価格=高品質」と判断されやすくなること。例えば、消費者吸引を意図して世界各国から仕入れた雑貨を100円均一で販売するキャンペーンを継続的に実施していた。日本ではほとんどみられない商品ばかりだったため、 買い物客の多くは価格を品質判断の手段として用い、「これらは安かろう、悪かろうだろう」という結論に至る場合が目立った。これは、価格の品質バロメーター機能である。
プロスペクト理論

人々が利益よりも損失に対して強い反応を示すという行動経済学の理論。消費者が、例えば800円という内的参照価格を持っていて、1,000円という価格に遭遇し、200円の損をする実感と、消費者の内的参照価格が 1,000円の場合に800円で買える時、すなわち200円の得をする実感を比較する。この場合、損をする方のインパクトの方が大きいと言われている。これを説明するのがプロスペクト理論である。

価格設定におけるセグメント

ライフスタイル

生活者の生活価値観に基づいて形成される生活行動体系もしくは生活のパターンや生活の仕方」と定義されており、具体的な測定尺度はサイコグラフィック変数である。例えば温室効果ガスを一切排出しないという特徴があるバイクのターゲットとしては、ライフスタイルに基づくセグメントは適さず、地球環境への関心が高い顧客層をセグメントすることが有効となる。
ベネフィット

ベネフィットによる細分化変数には、品質、サービス、経済性、迅速性などがある。
パーソナリティ

パーソナリティはサイコグラフィック変数の1つであり、神経質、社交的、権威主義的、野心的などの細分化変数がある。温室効果ガスを一切排出しないという特徴があるバイクをどのセグメントに販売していくかを検討する場合、パーソナリティに関する調査を実施した結果、保守的で権威主義的なユーザーは従来型のバイクを強く好むことが分かったとすれば、従来型のバイクを強く好む保守的・権威主義的セグメントをターゲットから除外し、その他の革新的・野心的セグメントなどを検討するのは有効な戦略となる。
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