生産時期
見込生産と受注生産
見込生産は、見越生産ともいい注文を受ける前に生産する形態。生産者が市場の需要を見越して企画・設計した製品を生産する。不特定な顧客を対象として市場に製品を出荷する。受注前にあらかじめ需要を見込んで計画的に生産する。在庫品として蓄えておき注文に応じて即納する。
受注生産は、注文を受けてから生産する形態で注文生産ともいう。顧客が定めた仕様の製品を生産者が生産する。顧客から注文に基づいて製品を生産する。具体的な受注により生産活動を開始する。見込生産と受注生産は、受注と生産開始のタイミングで区別されている。受注生産と見込生産の中間的な生産形態は、デカップリングポイントという。
デカップリングポイント
部品、中間製品などを予測に基づいて生産し、顧客の注文を受けてからそれらの在庫を用いて最終製品の生産を開始するような、見込生産と受注生産の分岐点をデカップリングポイント(Decoupling Point)と呼ぶ。デカップリングポイントは、計画が実際の需要に引き当てられるポイントであることから、受注引当てポイントと呼ばれることもある。デカップリングポイントを設定するときに重要なのは、どのような形態や工程までの部品や中間製品を在庫しておくかにある。木製家具を例に挙げると、組立まで終わっている家具を色を塗らずに保有し、受注に合わせて塗装する生産形態が該当する。同様に染色していないアパレル製品を中間製品として在庫しておくこともデカップリングポイントである。この方式は当然、受注生産よりも早く生産でき、顧客の注文から納品までの期間を短縮できる。また顧客の注文により製品をカスタマイズする場合、見込生産(在庫品のカスタマイズ)よりも早く顧客に納品できる。
個別生産
個々の注文に応じて、その都度1回限りの生産を行う形態で、連続生産の反義語である。個々の注文内容に応じた製品を1個あるいは少量づつ生産する。繰り返して生産する見込みの少ないものに適用する。
個別生産の管理ポイント
@基準日程の設定方法を確立し納期設定を適正化する。
A生産計画と生産実績の差異を減らすことにより納期を確保する
B生産期間や段取替えの時間の短縮により短納期化する
C受注変動を小さくし、変動に対応できるフレキシブルな生産体制を確立する
D工程余力を常に把握し、手待ちや遅れをなくす
連続生産
同一の製品を一定期間続けて生産する形態で、個別生産の反義語である。標準化された1種類の製品を専用の設備で連続的に反復生産する。長期間にわたり同一品種を継続して生産する。
連続生産の管理ポイント
@工程設計や生産計画に重点を置く
A販売活動を強化する
B販売部門と製造部門の連携を強化する
C長期の生産能力計画を立てることで、需要量に見合ったラインを設計する
D綿密な生産計画を立てることで、同一製品を継続して生産する
E材料遅れ、作業ミス、品質不良、日程計画変更をなくし、ラインをストップさせない
ロット生産(断続生産)
ロットは、何らかの目的のもとに、ひとまとまりにされた有形物のグループである。1つのロットの中は、一般にすべて同じ品種で構成される。ロットを構成する有形物の数量をロットの大きさ、またはロットサイズと呼び、ロットサイズを決める手続きのことをロットサイジングという。ロットサイジングは、部品手配を行うとき、段取時間、発注コスト、保管コスト、納期などを考慮して、手配する部品の数量をまとめる活動である。ロットにまとめて生産することにより発生する在庫は、ロットサイズ在庫と呼ばれる。ロット生産は、品種ごとに生産量をまとめて複数の製品を交互に生産する形態で、断続生産ともいい、個別生産と連続生産の中間的な生産形態である。
ロット生産のポイント
@品種ごとに生産量をまとめて複数の製品を交互に生産する
A生産現場で同一の品種をロット単位で扱うことで生産性の向上を図る
B同一設備で複数の品種を作っている場合、ロット単位で品種を切り替える
C同一の生産設備では、類似性のある複数の製品を一定数量ずつまとめ、定期的に品種を切り替えながら繰り返して仕事を流す
ロット生産の管理ポイント
@経済的なロットサイズを設定する
A段取り替えの回数と時間を低減させる
B仕事の投入順序を設定する
C能力と負荷の的確な把握により余力を最小化する
Dロットサイズの乱れを防ぐために数量統制を強化する
生産品種と量
単一品種多量生産
単一品種多量生産はラインバランシングと関係性が強い。ラインバランシングは、生産ラインの各作業ステーションに割り付ける作業量を均等化する方法である。代表的なラインバランシングとして、単一品種組立ラインのバランシングと混合品種組立ラインのバランシングがある。ラインバランシングは連続生産で用いられる方法となる。単一品種多量生産はフローショップスケジューリングと関係性が強い。
少品種多品種生産
類似性の高い製品を少品種に限定して生産する。1品種あたり多量に生産する。
多品種ロット生産
多品種ロット生産はサイクリックスケジューリングと関係性が強い
個別単品生産
個別単品生産はPERTと関係性が強い。PERTはプロジェクト管理の手法である。順序関係が存在する複数のアクティビティで構成されるプロジェクトを能率よく実行するためのスケジューリング機能。
多品種少量生産
類似性の低い製品を多品種にわたって生産する。1品種あたり少量ずつ生産する。多品種少量生産はジョブショップスケジューリングと関係性が強い。加工方法が多様で、需要が安定していない寿命の短い製品の多品種少量生産の場合、加工品の流れが一定ではないので、機能別レイアウトを導入する。
生産指示
押出型と引取型は生産開始のきっかけにより区別されている。
押出型(プッシュ型)
前工程から後工程に物を送り込んでいく生産管理方式であるが、受注生産が前提になる生産管理方式とは限らず、見込生産でも採用されることがある。また、製品の需要変動による欠品を防止するために工程間在庫に余裕を持たせる場合がある。生産管理機能を一か所に集約し、工程全体の統制を行う。生産計画の変更は、最終工程だけでなく、関係する工程すべてに指示する必要がある。管理部門が生産・在庫情報を集中的に把握や進捗管理が不可欠であり、大掛かりな情報システムなどの仕掛けが必要となる。
引取型
引取型は、後工程が前工程から必要とする量だけ引き取る生産管理方法のこと。稼働率を維持するための作りだめなどができないため、過剰在庫が発生する可能性は少ない。プッシュ生産と比較して生産・在庫情報を集中管理する必要性は小さく、作り過ぎによる中間仕掛品の滞留や工程の遊休などが生じないため、生産・配送・在庫状況などの進捗管理が必要性も小さい。
引っ張り方式
「後工程から引き取られた量を補充するためだけに、生産活動を行う管理方式」(JIS Z 8141-4202)のことである。引っ張り方式は、別名、プルシステム、後工程引取方式と呼ばれており、主に見込生産で用いられている管理方式である。
加工の流れ
フローショップ型とジョブショップ型
フローショップ型は、すべての仕事(ジョブ)について、機械装置の利用順序が同一である生産形態。ジョブショップ型は、機械装置の利用順序が異なる多数の仕事(ジョブ)を対象とし、加工を行う生産形態を指す。両者は加工品の流れの違いによって区別されている。
ライン生産方式
ライン生産方式とは、「生産ライン上の各ステーションに作業を割り付けておき、品物がラインを移動するにつれて加工が進んでいく方式。流れ作業ともいう。すべての品物の移動と同期して繰り返されるライン生産方式をタクト生産方式という」(JIS Z 8141-3404)と定義されている。
移動作業方式
一般に作業者と品物が同時に移動し、作業者は所定の作業域内で所定の作業を行う。専用ラインで特定の単一品種を連続して生産する単一製品ライン生産方式の一つ。
静止作業方式
専用ラインで特定の単一品種を連続して生産する単一品種ライン生産方式の一つ。品物が連続して移動し、作業者が定位置において所定の作業を行う。
混合品種組立ライン
あらかじめ準備された一本の組立ラインで作業方法がほぼ同一な複数の類似品種を、混合して流す組立生産ラインのこと。段取りがえを行わずに複数品種を混合して連続的に生産する方式である。混合品種組立ラインの生産方式には、一定の時間間隔で品物を投入する固定サイクル投入方式と、流す品物によって時間間隔を変えて投入する可変サイクル投入方式とがある。
サイクルタイム
生産計画量を正味稼働時間内に生産するための時間間隔、生産ラインに資材を投入する時間間隔を表し、正味稼働を生産計画量で除して求めることができ、生産ラインの生産速度の逆数として計算される。ピッチタイムとも呼ばれる。
サイクルタイム=1日の予定稼働時間(正味稼働時間)÷1日の生産計画量(生産量)
一人生産方式
「一人の作業者が通常停止した状態の品物に対して作業を行う方式」(JIS Z 8141-3405)である。一人生産方式は、複数の作業者が協働して行う場合があるものの、ライン生産方式の対極をなす方式として定義されている。作業時間の変動が多い場合には、作業者数の変更で対応できる。また各作業者の担当する作業サイクルが長くなって作業の単調感が減少する上、それぞれの能力に応じたスピードで作業が行えるため作業に対するモチベーションが高められる。問題点としては、作業が複雑な場合に作業の習熟に長時間を要し、いわゆる習熟ロスが発生するため、作業数が少ないほうが有効である。ライン生産方式の複数ワークステーションに相当する作業習熟のある高い能力の作業者(多能工)が必要である。作業者一人一人に設備が割り当てられるため、製品の組立作業に必要な設備が高価な場合、一人生産方式は採用されない。
セル生産方式
グループテクノロジ(GT)を利用した生産方式である。生産する部品の類似性を見出してグループ化すると、グループと加工機械との間に高い関連性が見られるようになる。これにより、それぞれのグループは工場内の機械全体の一部から構成された機械群によって加工することができる。そのような機械群を単位としてセルを構成すると、部品の運搬の手間や時間を省くことができ、仕掛量は減少してリードタイムが短縮される。セル内には、さまざまな機能をもつ機械が配置されるので、作業者は複数の工程を受け持たなければならない場合が多く多能工が必要となる。セル生産方式は設備の効果的な配置を実現するものであり、対象が高価な設備であるか安価な設備であるかは関係がない。
セル型レイアウト
工作物の類似性にもとづいてグループ化し、それに適した機械を構成するものである。セル型レイアウトにおいて類似性をもとにグループ化されるのは、機械ではなく加工物である。なお類似機械がまとめて配置されるのは、機能別レイアウトとなる。
メリット
@分業を無くすため、ラインバランス効率の考慮が必要ない
A生産量の変動や多品種少量生産に対して柔軟に対応できる
B最小単位の仕掛在庫で生産が可能となり、仕掛在庫が少なくなる
Cネック工程がなく、工程待ちがなくなり、製造リードタイムが短縮化する
Dものづくりの達成感を享受でき、作業者のモラール(士気)が高まる
E作業者間で競争意識が醸成される
Fレイアウト変更時に設備投資が少なくなる
デメリット
習熟ロスの発生。作業が複雑な場合に作業習熟に長時間を要する
モジュール生産方式
モジュール生産方式は、「部品又はユニットの組合せによって顧客の多様な注文に対応する生産方式」(JIS Z8141-3205)と定義されている。
工程管理方式
「工程管理」とは、所定の製品を、所定の品質、原価、数量・納期で納品できるように、製造設備、労働力、資材などを効率的に活用する管理活動である。「工程管理」は、「生産管理」の一部の機能であって、「生産管理」の中で主に「製造」の部分を管理することになる。
製番管理方式
受注ごとに製造命令書(製造指図書)を発行する方式で、「製造命令書を発行するときに、その製品に関するすべての加工と組立の指示書を準備し、同一の製造番号をそれぞれにつけて管理を行う方式」(JIS Z8141-3211)と定義されている。製番管理方式では、納期変更や仕様変更などの影響が、該当する製番に紐づいた部品や工程に限定されるため、発注指示や生産指示の変更が行いやすい。製番管理方式は、個別受注生産や、ロットサイズが小さい場合のロット生産で採用されることが多い。個々の注文に部品を引き当てる(受注生産で用いられる)管理方式であるため、在庫は発生しない。製番ごとに必要な部品や材料を引き当てるとともに、発注や加工手配も製番ごとに管理するため、工程の進捗を管理しやすいことや品質保証を行う上で必要な情報のトレースが容易であるなどのメリットがある。その反面、他の製番での管理対象との関係が分離されているため、異なる製番間での部品や材料などの転用ができないことや、部品が1点でも遅延すると組み立てが開始できないというデメリットがある。オーダーごとの同一製造番号で全てを管理するため、製品単位に確実な手配・工程進捗度の状況把握が可能で、受注生産形態で多く用いられる。
追番管理方式
追番管理方式は、期の始まりからアイテムごとに追番といわれる通し番号をつけて、数量管理と日程管理を行う方式であり、見込み生産やロット生産の日程別の数量管理に活用される。最終製品の累計生産台数による一貫番号のことで号機ともいう。追番管理方式は連続生産による数量管理で用いられ、製作番号は異なっても同じ部品であれば同一部品として管理する。
かんばん方式
かんばん方式は、トヨタ生産システムにおいて、後工程引取方式を実現する際に、かんばんと呼ばれる作業指示書を利用して生産指示、運搬指示を行う仕組みである。かんばん方式では、かんばんとモノがほぼ同時に動くため、モノの需要が発生してから、情報が時間差なく流れるという特徴がある。かんばん方式の主な目的は、品質の向上、作業の改善、在庫の低減である。かんばん方式を行う前提(導入条件)として、継続性、反復性がある製品であること、導入に際して小ロット化、平準化が必要であることが挙げられる。かんばん方式は、後工程で使用して補充が必要になった仕掛品などの情報を、「かんばん」を使用して前工程に伝えていく仕組みであり、小刻みに指示が出るため小ロット生産体制が、工程ごとに作業量が大きく異なると待ちが生じる可能性があるため工程負荷の平準化が重要となる。かんばんは、あらかじめ定められた工程間や職場間で循環的に用いられる。例えば、仕掛品aを製造する工程Aと仕掛品aを使用して部品bを製造する工程Bがあった場合、仕掛品aに付けられた「かんばん」は工程bで外され、工程Aに仕掛けかんばん(工程の作業指示を意味する)として循環的に返される。
仕掛けかんばん
工程へ作業指示をする場面で用いられ、どの工程で、何を、どれだけの量生産し、完成したらどこに保管するかを指示する必要がある。
引取りかんばん
部品などを引き取る場合に用いるかんばんのことである。外注先工場や工程間の連絡かんばんの役割を持ち、何をどのくらいの量が必要かを伝える情報となる。
トヨタ生産方式
徹底したムダの排除を基本思想に持ち、原価低減のための改善活動、生産性向上を目指した生産方式
JIT(ジャストインタイム)
JITとは、「すべての工程が、後工程の要求に合わせて、必要な物を、必要なときに、必要な量だけ生産(供給)する生産方式」(JIS Z8141-2201)であり、かんばん方式の導入に際しては、小ロット化と平準化生産が必要になる。
自働化
にんべんのある自動化とも言われる。生産上の良し悪しの判断を人間だけでなく機械にも取り入れる
7つのムダ
@作りすぎのムダ
不必要なものを不必要なときに作ることによるムダ
A手待ちのムダ
前工程待ちや監視作業によるムダ
B運搬のムダ
ものの移動や積み替えのムダ
C加工そのもののムダ
不要な工程や作業が必要のごとく行われていることによるムダ
D在庫のムダ
ものが滞留している状態や保管、工程間の仕掛かりによるムダ
E動作のムダ
不必要な動き、付加価値のない動き、遅速な動きによるムダ
F不良を作るムダ
手直しや返品などの生産性を下げる材料加工の不良によるムダ
生産座席予約方式
「受注時に、製造設備の使用日程・資材の使用予定などにオーダーを割り付け、顧客が要求する納期どおりに生産する方式」(JIS Z8141-3207)と定義されている。これは製造工程の日程計画表を一種の座席予約表と見立て、営業部門があたかも新幹線や航空機の座席を予約するイメージで、顧客が希望する出荷日を予約する方式である。このメリットは、見込生産としてコスト優位な製造部主体の生産計画作成ができるとともに、受注時に製造設備や資材の使用日程について、販売部門と生産部門が情報共有することにより、受注見積り時点で納期回答ができることなどがある。
オーダエントリー方式
オーダエントリー方式は「生産工程にある製品に顧客のオーダを引き当て、製品の仕様の選択又は変更をする生産方式」(JIS Z 8141-3206)のことであり、乗用車の受注生産方式に用いられることが多い。オーダエントリー方式は、上記の通り乗用車の受注生産に多く用いられている。仕掛中で、まだ顧客が決まっていない乗用車に対して顧客の受注を引き当て、顧客のオプション選択や変更を可能にする。
常備品管理方式
常備品は常に所要量を在庫している資材で、@使用頻度が多い、A保管が容易、B調達リードタイムが長い、などの部品で有効である。
生産現場で行われる改善施策
あんどん
各工程の状況を赤青黄などで示し、機械設備の稼働状況を可視化できる機材である。各ワークステーションの作業者が、作業補助者を呼んだり、工程全体を停止させたり、監督者に知らせるために、ランプを点灯させる。
シングル段取
10分未満に行う内段取のことである。段取時間は機械またはラインを停止して行う内段取時間と、機械またはラインを停止しないで行う外段取時間から構成される。内段取の一部を外段取化することにより、機械またはラインを停止して行う内段取の時間を短縮することができる。
1個流し
物の流し方の1つであり、1個を加工したら次工程に送る製造方式で、工程間に仕掛りを作らず1個ずつ流す生産方式(1個の製品を第1工程から最終工程まで途切れることなく生産)である。つまり、後工程が1個ずつ引き取ることで生産を開始するため仕掛りが発生せず、その結果、ロット生産で生じていた、運搬のムダや、動作のムダ、作り過ぎのムダおよび在庫のムダなどへの改善を行うことができる。一方で、1個生産し品種が切り替わるごとに段取替えが発生することから、ロット生産より段取り替えの頻度が多くなる傾向がある。
ポカよけ装置
工場などの製造ラインに設置される作業ミスを防止する仕組や装置のことである。
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