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2019年12月15日

イチロー選手の広角打法

野球のフェアグラウンドは、ホームベースから見て

90度の範囲である。

この範囲が広いか狭いか、投手だともちろん広すぎる

と思うだろうし、打者ならもう10度広いと良いのに・・・!

と思うに違いない。

しかし、思いとは裏腹にこの90度を

どれだけ上手に使っているかというと、

今まで何人のプロの野球選手がいたか分からないが

どれだけいたか、あやしいものだ。

その中で、たぶんこの90度の使い方を考え、

実績を上げた選手はイチロー選手がNo.1だろう。


イチロー選手はメジャーリーグで3805本のヒットを打った。

もちろん、ご本人は

審判がもっとキチンと判定してくれていたら、

もう数十本は増えたはずだ、と言っている。


米国には変態的なファンがいて、

その3805本のヒットがどの方向に行って

ヒットになったか調べた者がいる。

野手がヒットになった打球を掴んだ位置をプロップしている。

90度を15度で6分割して調べたようだ。

そうすると、全方角とも15%弱から18%になった。


かって、王貞治選手には「王シフト」が敷かれた。

王選手の打球は極端にライト方向に偏っていたからだ。

それとは対極をなす打球方向だ。


外野は満遍なくという表現が当てはまるだろう。

内野はマウンドのまわりはなく、キャッチャーの前も少ないが、

ドーナツのようになっている。

さすがにホームランはライト側30度、

三塁打もライト線なのは、仕方ない。

大谷選手のように、センターからレフトに

ホームランを打ち続けるほどのパワーはない。


野球の打球は左右だけでなく、上下にも飛んでいく。

イチロー選手は日本にいるときから、ホームランは捨てている。

自分の強みを活かすために、ヒットを打つことを工夫してきた。

一本のホームランを打つことより、二本のヒットを打つことを選んだわけだ。

如何にゴロを打つか。

上に上がる打球はあえて詰まらせて、外野手の前に打球を落とすか。

イチロー選手は試合前の打撃練習では、軽々とポンポンホームランを打つ。

それを見ている相手チームの外野手は前進守備をとることができない。

仕掛をしておくわけだ。

まさに『敵を知り己れを知れば百戦危うからず』なのだ。

三遊間に打球を転がし、遊撃手が捕球すれば自分の走力であれば

ヒットになることを、たぶん経験から知り得たのだろう。

だからメジャーリーグに行って、解説者から

「イチローは、打つ前に走り出している」と言わしめた

変態的打法でヒットを稼いだ。

内野手は、イチロー選手の打球処理には気も心も焦ってしまいエラーをする。

イチロー選手から言わせると「エラーではなく、ヒットやん!」

ここでも何十本ものヒットを損している。


ヤンキースの遊撃手ジーター選手が、

始めてイチローの打球を処理したとき、

一塁に送球するのを諦め肩をすくめた。

一流が一流を認めたシーンだったと思う。

不世出の野球選手だ。
posted by smile at 18:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | スポーツ
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