2017年10月09日
統合失調症について
統合失調症患者の看護
(1)特徴
発病時期…統合失調症の経過や症状は様々ですが、思春期から青年期にかけて発症するケースが多く見られます。
だらしなくなったり、引きこもりになったりという神経衰弱の状態から始まり、学校生活や社会生活に著しく支障をきたすことで発見されることが多いのも特徴です。
クレぺリン…早期性痴呆と躁うつ病を疾患単位としました。
ブロイラー…すべてが痴呆にいたるわけではなく、治療可能な疾患であり、いくつかのタイプが混合した「群」であり、1908年に統合失調症という新しい用語を提唱。
クロウ…症状部分類に陽性症状と陰性症状があります。
シュナイダ―…一級症状と二級症状という定式化を行った。
一級症状には、思考化声・応答形式の幻聴・自己の行為に干渉する幻聴・身体への被影響体験・思考奪取とその他の思考への影響・妄想知覚・感情や衝動や意志の領域にあらわれるその他の作為、被影響体験・思考伝播であり、二級症状には診断上それほど重みのないもので、その他の幻覚・思考制止・観念奔逸・錯乱と困惑・強固行為・妄想着想・疎隔体験・気分変調が含まれます。
(2)有病率
・原因はまだ不明だが、日本の人口の1%近くのひとがかかります。
・精神科の入院患者の約7割を占めます。
(3)原因
解剖生理
*神経細胞とシナプスにおける神経伝達物質の流れ*
・脳には140億以上の神経細胞が存在すると言われています。
その神経細胞をニューロンと言います。
・ニューロンは、情報を受け取るために木の枝のように伸びた樹状突起、細胞の中心である細胞体、細胞体で生じた活動電位(インパルス)を伝える軸索、軸索の端にあり次の神経に情報を伝える神経終末の4つの部分からなります。
・軸索は数百以上にも枝分かれして、多数のニューロンの樹状突起や細胞体表面とシナプスを形成する。シナプスを介して、ニューロン間で情報の伝達が行われます。
・ニューロンの間で情報のやりとりをするために必要な物質を神経伝達物質と言います。
・精神疾患の治療薬の多くが、シナプスにおける神経伝達物質の放出や、受容体に作用して効果を発揮しています。
・精神活動の面で重視される神経伝達物質には、
γ-アミノ酪酸(GABA)、ドパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどがあります。
特にドパミン、セロトニン、ノルアドレナリンを総称して脳内モノアミンといい、睡眠や覚醒、情動の調節に深く関与しています。
*脳内の4つのドパミン経路*
・脳内でドパミンを神経伝達物質として用いる経路は、
A中脳辺縁系、B中脳皮質系、C黒質線条体系、D漏斗下垂体系の4つがあります。
・幻覚や妄想などの陽性反応は、中脳辺縁系においてドパミンが過剰になることで生じるとされています。
・抗精神病薬にはドパミン遮断作用があり、本来は中脳辺縁系におけるドパミン受容体だけを適度に遮断することで、過剰になって投与される。
・抗精神病薬でドパミンを遮断すると、中脳辺縁系以外の3つの経路のドパミンも遮断される可能性がある。それによって副作用が出現する。
・約30万人いる精神科入院患者のうち、約62%が統合失調症患者と言われており、統合失調症は精神科領域における代表的疾患。
・統合失調症に確立された概念はいまだないが、
「思春期から成人期にかけて発症し、特徴的な思考障害、自我障害、およびそれに伴う行動異常を示し、多くは慢性的に経過し、自発性や対人接触が低下し、社会生活に困難をきたす疾患」と説明できる。
統合失調症の明らかな原因や発症のメカニズムは解明されていない。単一の原因によって発症するのではなく、さまざまな要因が多次元的に影響し合い発症すると考えられている。
*統合失調症の要因*
4)症状と看護
・クロウ(T.JCrow)による症状分類に陽性症状と陰性症状がある。
・陽性症状とは、
通常の精神活動に病的な要素が加わることで生じる目立った症状のこと。
幻覚・妄想・思考障害(滅裂思考など)、奇怪な行動、興奮などがある。
・陰性症状とは、
通常の精神機能が欠如したように見える目立たない症状のこと。
思考の貧困、感情鈍麻、意欲の低下、無為・自閉、非社交性などがある。
*統合失調症の特徴的な症状*
(5)疾患の経過、健康の段階と看護
前駆期・急性期・消耗期・回復期に分けることができる。
これらの経過は連続・直線的に進むというよりは、波状的に行きつ戻りつしながら進むことが多い。
また、治療に抗して異常体験が固着し、慢性的に経過するケースもある。
*統合失調症の経過*
(6)病型
統合失調症の主な病型として、破瓜型・緊張型・妄想型がある。他に残遺型がある。
しかし、これらの病型にあてはまらない例や、経過とともに別の型に移行していく例もある。
(7)予後
統合失調症の予後は、個人の病状によって様々であるが、5〜10%は重度の障害が残る。
40%近くの人が良くなったり悪くなったりを繰り返し、最終的に寛解する。
経過が長い病気ではあるが、再発を防ぐ意味ではずっと薬物療法を続けるべきである。
(8)治療
治療は薬物療法を中心に、精神療法、社会療法(リハビリテーション)を統合していくことが重要となる。
*統合失調症の主な治療*
*抗精神薬の種類*
(9)関連する法律とその内容
・障害者総合支援法(障害者自立支援法)…障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律。障害者の定義に難病等を追加。
@ 障害者の福祉サービスの一元化、すなわちサービス提供主体を市町村に一元化し、障害の種類(身体障害・知的障害・精神障害)に関わらず、共通の福祉サービスを提供。
A 利用者本位のサービス体系に再編。
B 障害者が「もっと働ける社会」にするための就労支援の抜本的強化。
C 支援決定の透明化および明確化。
D 利用者も応分の費用を負担し、福祉サービスなどの費用を皆で負担し支え合う仕組みの強化・精神保健福祉法…精神障害者の医療及び保護を行うこと・障害者自立支援法とともに、精神障害者の社会復帰の促進、自律と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行うこと・精神疾患の発生の予防や国民の精神的健康の保持および増進に努めることによって精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的としている。
・心神喪失者等医療観察法…殺人などとくに重大な罪を犯しながら、犯行時には心神喪失あるいは心神耗弱の状態にあった精神障害を、特別の治療施設(指定医療機関)で治療し、「病状に伴う同様の行為の再発を防止する」事を目的とした法律。
・障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)…民間企業に1.8%以上の雇用率 (法定雇用率)の達成を義務づけ、それに達しなかった企業からは障害者雇用納付金を徴収している。
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