2017年10月10日
双極性障害について
気分障害患者の看護
@ 特徴は、内因性精神障害で、主として20〜50歳代に発症する。
A 有病率は、全人口の0.5〜0.8%
B 原因は、気分の障害(躁状態やうつ状態)を呈し、多くは周期性か挿間性に経過し(すなわち、病期と寛解期を繰り返し)、多くの場合、後遺症を残さず治癒する疾患である。
内因性精神障害とは、身体因性(脳や身体に原因がある)か心因性(心的ストレスや葛藤に原因がある)か明確に特定できず、いまだ原因不明の精神障害。
C 症状と看護
(1) うつ状態
・抑うつ気分(憂鬱、気がめいる)があり、何をしても気持ちが晴れない。
日内変動を示し朝がもっともひどい、意欲低下、テレビや新聞も読みたくなくなり閉じこもりがちになる。
・思考が進まず理解力や判断力が低下し制止状態となる。
・妄想状態が合併することもあり、心気・罪業・貧困の三大妄想を認める。
心気妄想とは、身体的な不調を訴えることから、さらには「脳が溶けてしまった」「心臓がくさってしまった」などを訴える。
罪業妄想とは、ささいな失敗について自責の念にとらわれ、「罪を犯した」「警察につかまる」などを考える妄想。
貧困妄想は、「お金がなくなってしまった」「暮らしていけない」などの妄想。
・睡眠障害として中途覚醒、早朝覚醒がある。
・その他の身体症状として、疲労倦怠感、食欲不振、また、器質的異常を認めないが感覚異常、関節や筋肉の痛み、呼吸器症状など不定愁訴を示すことが多い。
(2) 躁状態
・理由もなく気分爽快で自信にあふれている。
そして、無遠慮で傲慢な態度を示す。自分の考えや行動が妨げられると容易に刺激的となり、ささいなことで激高し、攻撃的となりやすい。
・多動多弁でイライラしており、落ち着かなさがある。作業をしてもまとまりがない。
・思考は、回転が良く次から次へと考えが湧き出すが(観念奔逸)、内容にまとまりがない。誇大的で自分を過大評価し現実離れしたことを言うなど、誇大妄想を示す・
・身体症状は過活動となるが疲労感はなく、寝ないで活動することもあり、睡眠障害が現れるが、本人が不眠を訴えることは少ない、食欲亢進もみられる。
(1) うつ状態
・意欲が著しく低下し日常生活に支障をきたしているため、セルフケアのレベルを判断し援助が必要である。
・自責的な訴えや悲観的な訴えが多く、自殺念慮を持っている場合があり、自殺企図を防ぐことが重要となる。
そのため、居場所の確認や危険物の管理、対応として安易に励まさないことが重要である。
・身体的な症状として、食欲不振による栄養状態の低下や消化器症状などを訴える場合は、身体疾患が潜んでいることもあり、身体症状の観察が重要となる。
(2) 躁状態
・気分が高揚し易刺激性が著しくなり、多動、多弁、思考のまとまりがなく、ささいなことで易怒的になる。
そのため、刺激を少なくするよう周囲の環境を整える目的で隔離となる場合もある。隔離状態となっても日常生活に支障をきたさないように援助することが重要。
・気分安定薬や抗精神病薬が処方されるため、副作用である便秘や悪心、口渇、振戦などに注意し観察する。
・身体的な症状として、食欲亢進、不眠がみられる。食欲亢進は過活動であるため代謝が亢進し肥満にならないが、偏食となりやすいので栄養バランスに注意する。過活動のため不眠となり、体力を消耗するため休養を促すことが重要である。
・双極型の場合、躁状態からうつ状態へ移行したとき、躁状態の自分の行動や言動を自責的にとらえ自殺念慮を抱くことがあるため、病状の変化時の観察は重要である。
G 治療
(1)うつ病・うつ状態
・薬物療法:抗うつ薬を使用する。
副作用の比較的少ない選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)や
セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬(SNRI)が第一選択薬として推奨されている。
抗うつ薬の副作用はSSRIで悪心(とくに投与初期)、食欲低下、下痢などを生じる場合があり、SNRIでは、口渇、便秘、悪心がみられる。
これらの抗うつ薬で無効な場合は、従来型の薬物である三環系抗うつ薬や四還系抗うつ薬を用いる。
三環系抗うつ薬は副作用が強く、口渇、便秘、排尿困難、起立性低血圧などを認める。
四環系抗うつ薬は三環系の副作用を軽減する目的で開発された薬である。
また、精神症状の妄想がみられるときには、抗精神病薬や抗不安薬が使用される。
・電気けいれん療法:薬物療法で効果がみられない場合、身体療法として行う。
・精神療法:病気であることを説明し休養を促し、必ず治ることを保証し、自殺を禁じ、安易に励まさず、重大なことは当面決めないように指導する。
・作業療法:うつ病の回復期に社会復帰と再発防止を目的に行われる。陶芸、園芸などの作業を行い、精神機能や作業能力の向上を図る。
(3) 躁状態
・薬物療法:躁状態に有効な気分安定薬(炭酸リチウム、バルプロ酸ナトリウム、カウバマゼピン)を用いる。
また興奮状態を鎮静させる目的で、レボメプロマジン、スルトプリド、ハロペリドールなどの抗精神病薬を併用する。
炭酸リチウムは有効血中濃度と中毒濃度の差が小さいので、定期的に血中濃度を測定し、悪心、嘔吐、集中力減退、振戦、多尿などの副作用、中毒症状に注意する必要がある。
・精神療法:まず躁状態であることを患者に説明し、治療に同意させる。そのうえで、休養がとれるように関わる。ただし、病識がない場合も多いので、入院治療を行い、場合によっては保護室隔離を必要とすることもある。お名前.com
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