「特に武智先生から受けた薫陶で「一番いいものを見て、一番いいものの中に育っていないと芸が貧しくなる」ということの意味は、生涯を通して実感しています。すべて一流に行くことを勧めてくださった先生のおかげで、私は本物に出会うことができました。そして本物に触れたことで、役者としての自覚も芽生えたように思います」(坂田藤十郎『坂田藤十郎 歌舞伎の真髄を生きる』世界文化社 51頁)
「一番いいもの」「本物」に触れることは非常に重要ですね。
ひとかどの人を観察してみると「一番いいもの」や「本物」に触れる機会が多いようですし、そのような機会を自ら求めているようです。
どの分野でも「一番のもの」「本物」がありますので、まずは、その「一番のもの」「本物」を見つけて、身に付けておくことですね。
この「一番のもの」「本物」という軸がしっかりしていれば、その他のどのようなものに触れようとも、びくともしないと共にその他の事柄をすべて生かしていけると思われます。
歌舞伎役者が映画に出たり、洋物の演劇に出たりしても、歌舞伎の中での「一番のもの」「本物」を身に付けている役者は、映画、洋物の演劇をすべて自分の中で消化し、歌舞伎にも生かし切っているように思えます。
このことと同様に、自分にとっての「一番のもの」「本物」を身に付けておけば、何事にも応用がきき、消化もでき、自分の本業や自分のフィールドでの仕事に生かすことができるでしょう。