It is generally a waste of time to talk to a reader. He only listens after he has read. It is equally a waste of time to submit a voluminous report to a listener. He can only grasp what it is all about through the spoken word.
Drucker, Peter F.. The Effective Executive (Harperbusiness Essentials) (pp.105-106). HarperCollins. Kindle 版.
ドラッカーは、人間を読む人と聞く人に分類しています。ほとんどの人は、どちらかというわけです。
ネットの世界で考えてみますと、ブログを読んだ方が理解が早い場合、読む人といえるでしょう。また、動画で音声を聞く方が理解が早い場合、聞く人といえましょう。
読む方にしても聞く方にしても、自分の得意な方で情報収集する傾向があるでしょうね。
上記の英文の翻訳ですが、昔の翻訳を確認してみましょう。
一般に読むタイプの人間に対して、いろいろと口で説明してもむだである。彼は、読んだ後でなければ人の意見に耳を傾けないからである。同じように、原則として聞くタイプの人間に印刷された報告書を提出してみても時間のむだである。彼は、その書類が言おうとしている事柄を、口をとおして説明してもらう場合にのみ、その意味をほんとうに把握することができるからである。
『経営者の条件』野田一夫・川村欣也訳 ダイヤモンド社 1966年 176〜177頁
a voluminous report を「印刷された報告書」と翻訳していますが、voluminous は、大部の、巻数の多いという意味ですが、印刷されたものは、大概、大部で巻数が多いという意味合いを加えて印刷された報告書としたのかもしれません。丁寧に翻訳され、字数が多くなっていますね。
では、新しい翻訳を見てみましょう。
読む人に対しては口で話しても時間の無駄である。彼らは、読んだあとでなければ聞くことができない。逆に、聞く人に分厚い報告書を渡しても紙の無駄である。耳で聞かなければ何のことか理解できない。
P F ドラッカー. ドラッカー名著集1 経営者の条件 (pp.143-144). ダイヤモンド社. Kindle 版.
a waste of time について、最初は、「時間の無駄」と翻訳していますが、二番目においては、「紙の無駄」と翻訳しています。分厚い報告書が無駄になるという意味合いで紙の無駄と翻訳したのでしょう。こちらは、簡便な翻訳となっており、字数が少なくなっています。
昔の翻訳と新しい翻訳を比べてみますと、雰囲気が大きく違います。ドラッカーの原文を確認しますと、これまた、雰囲気が違うのですね。
翻訳は助かりますが、それなりに英語を勉強し、原文で読むと日本語で読む感覚とは違う感覚が得られ、ある意味、違うものを読んでいる感覚すら覚えるときがあります。できうる限り原文で読む機会を増やしていきたいものです。