A man travels the world over in search of what he needs and returns home to find it.
George Moore: The Brook Kerith
〔訳〕ある人間が必要とするものを探し求めて世界中を旅して回り、家に帰ってきたら、何とそこにある。
岩田一男『英語・一日一言』祥伝社 45頁
身近なところでなく、遠くに真理があるのではないかと思い、旅に出たところ、大した収穫もなく、パッとしないということはよくあることです。
人は、近くを卑しみ遠くを尊ぶという傾向を持っていますが、なぜなのでしょうね。
別に遠くに行ったところで自分にとって必要なものが手に入るわけでもなく、ただ単に遠くに行ったという事実だけが残るだけです。
旅をすることが悪いというわけではありませんが、旅は旅として楽しみつつも、それだけのことと思っておくのがよいですね。何か特別なものがあるのではと期待するほどのことはないと思います。
大切なことは、今いるところで自分にとって重要な事柄を見つけるということでしょう。
実際、必要なものは自分の中にあるものです。あちこちと旅をして回り、結局、今いるところが一番重要ということに気付きます。その意味では、ある程度旅をすることは有用といえるでしょう。ただ、いつまでも旅をしているのは感心できないということでしょうね。
「わしが小坊主のとき、先代がよう云われた。人間は日本橋の真中に臓腑をさらけ出して、耻ずかしくない様にしなければ修業を積んだとは云われんてな。あなたもそれまで修業をしたらよかろ。旅などはせんでも済む様になる」
夏目漱石『草枕』新潮文庫 148頁
最終的には、旅をしなくてもよいような人間になることですね。自分の今いるところで存在しているだけで十分という境涯になる必要があります。
その上で、気晴らしに旅に出るのは価値的でしょう。気楽に旅に出ればよいということです。旅になにがしらの真理を求めるのは愚かというものです。
常に、自分の中、自分の身近に、大切なもの、重要なもの、必要なものを見つけるという態度が求められます。
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