無数の経典のなかで、日本の文化と日本人のものの考え方に影響を与えてきた経典の数は限られています。たとえば般若経、法華経といったようなものです。法華経は、いまでも創価学会を生みだす力があり、また、たくさんの仏教系新興宗教をつくり出す力もあるというようなものです。それもまた日本での古典、要するに歴史的に見て、日本精神ができあがるうえに大きな役割を演じてきた本の一つということになるでしょう。
加藤周一『読書術』岩波現代文庫 46頁
仏教には多くの経典があります。
その中でも、日本に根付いている経典は少ないものです。
法華経は、他の経典に比べ、日本での影響力が強い経典です。
僧侶でない在家の人々が勤行をしますが、法華系の教団の人は、当然のことながら法華経を読誦します。
法華系以外の教団において、在家の方がその宗派の経典を読誦しているか、詳らかにしませんが、法華系の教団ほど熱心ではないと思われます。どちらかというと、経典は僧侶まかせなのでしょう。葬式の場面を思い返すと、在家が勤行するのは、創価学会ぐらいでしょうか。
法華経には、僧侶、在家に関わらず、読誦せしめる力があるのでしょうね。
教団としては、日蓮宗各派だけでなく、新宗教団体の創価学会、霊友会、立正佼成会という巨大教団を生み出した力が法華経にはあります。
謎めいた経典といえます。
この謎めいた経典である法華経は、今後も、日本に多大な影響を与え続けていくことでしょう。
我々としては、日本の古典、日本精神の本という側面から、法華経を見直し、研鑽に努めたいところです。