頑張ると言っていた翌日に頑張れなくなるのが貧困だ。
鈴木大介『最貧困女子』幻冬舎新書 35頁
貧困に陥るのは、本人の責任というよりは、巡り合わせによると思われますね。所詮は、運ではないだろうかと思います。
貧困に陥らなかったのは、運が良かっただけと考えるのがよいでしょう。
頑張ればどうにかなるというのは、その通りでしょう。
しかし、頑張りたくとも、頑張ることができない。これが貧困なのでしょうね。
周りから「頑張れ、頑張れ」と声援を送ったところで、何にもならないようです。
ある意味、社会のしくみそのものに変化をつけないことには、解決は難しいでしょう。なにせ、運なのですから。
彼女たちのワンコインは「500円ではなく100円」だという。
同書 42頁
貧困とは、どういうことなのか。この一節が教えてくれます。
通常、ワンコインといえば500円であり、私もそう思っており、いまどき、ワンコインでは、大したものは食べられないなどと思っていましたが、貧困状態のワンコインは100円なのですね。
やはり、貧困とは、通常の感覚を越えた次元なのですね。
ためしに、100円で食事を作るとなると、さまざまな知恵を出さなければなりません。普通の考えでは、まともな食事はできないでしょう。
そして、貧困とはどういうことか。明確に示す一節があります。
圧倒的に「何も持たざる者」だった。
同書 58頁
「持たざる者」ではないのですね。「圧倒的に」、「何も」、「持たざる者」ということです。
一般的に、「持つ者」と「持たざる者」との格差がどうのこうのと議論しますが、本当の貧困は、「持たざる者」にも含まれていません。よって、議論の対象にすらないっていないというのが現状でしょう。
本書で紹介されている「最貧困女子」は、普段見るテレビや新聞等々のマスコミから紹介されることは稀であり、可視化されていません。
著者はそのことを危惧し、本書を執筆しています。
紹介されている事例のあまりの貧困さ、悲惨さに驚愕するばかりです。
世界各地での貧困についてのレポートを見聞きし、遠くの世界は大変な状態なのだなと思うところですが、日本国内という身近なところで、最貧困という状態があるわけで、本書のような本を読むことにより、まずは、事実を見つめていきたいものです。
その上で、何ができるのかと考えるのですが、大したことができるとは思えないにしても、常に考え続ける習慣は持っておきたいと思いますね。
その中で、妙案が浮かぶかもしれませんし、浮かばないにしても、ちょっとした心掛けを持つきっかけになるでしょう。
少なくとも、日本における最貧困について、関心を持ち続けるということが大切だろうと思います。