「寿命を食する鬼神もあり」(曾谷殿御返事 1060頁)
詐欺にあった人が多額の金員をだまし取られ嘆いていますが、お金は世の中を巡るものですから、努力次第でいずれはお金などどうにかなるものです。
お金の損失は、大きな損失ですが、取り返しのつかない損失という程ではありません。
しかし、時間を失った場合、その時間は、二度と戻りません。時間はお金とは全く違うものなのですね。
時間は、巡るものではなく、瞬間、瞬間に消えていくものです。その都度、その都度、消えていくものなのですね。
過ぎ去れば、それでおしまい。これが時間というものです。
よって、お金を失うより、時間を失うことの方が、損失が大きいわけです。
しかし、時間より、お金の損失に目が行ってしまい、肝心の時間の損失を忘れてしまっている愚があるように思えます。
お金は取り返しがきくけれども、時間は取り返しがきかない。
このことを心に刻んでおきたいですね。
寿命とは、取りも直さず、時間の集積ですから、寿命を食らう鬼神には気を付けておかなければなりません。分かりやすい言い方をすれば、時間食い虫ということですね。
あらゆるところに生息していますので、気が抜けないといったところです。
ある意味、お金を詐取する詐欺師よりも、時間食い虫の方が悪質ですね。
ただ、時間食い行為は犯罪と認定されないため、時間食い虫はうろうろしていますが、犯罪者以上の害悪を垂れ流す鬼神です。
我々としては、時間食い虫を見抜く眼を持ちながら、常にチェックしておくことですね。