「吸ひさしの煙草で北を指すときの北暗ければ望郷ならず」(『寺山修司全歌集』沖積舎 55頁)
映画『田園に死す』において、「惜春鳥」という曲が流れる直前にこの短歌が出てきますが、何とも言えない風情が感じられます。
その他の短歌も見てみましょう。
「新しき仏壇買ひに行きしまま行方不明のおとうとと鳥」(同書 26頁)
じわじわとしたものが感じられます。言葉で説明するのが困難ですね。
情景が浮かび上がればそれでよいでしょう。
解説、感想、論評、批評などよりも、まずは、感じ取ることであり、それで十分なのかもしれません。
自分が感じ取ればよいわけで、他者に説明する必要性はないでしょうね。他者は他者で感じ取っているでしょうし、説明しなくとも、分かり合える人とは分かり合え、分かり合えない人とは分かり合えないというだけのことでしょう。