「彼は、人を最も腹立たしくさせることを言う能力があり」(ソロモン ノーサップ『12イヤーズ ア スレーブ』小岩雅美訳 花泉社 153頁)
原文でも確認してみましょうか。
He has the faculty of saying most provoking things.
奴隷所有者は、奴隷に対し、過酷な仕打ちをしていたであろうことは想像できますが、「人を最も腹立たしくさせることを言う能力」まで兼ね備えている奴隷所有者もいたとは驚きですね。
どうすれば、「人を最も腹立たしくさせることを言う能力」が身に付くのでしょうね。
とは言いつつ、万一、自分が奴隷所有者の立場になった場合、非道な人間にならないという保証はありませんね。
人間とは、環境に支配されるものですから、奴隷を所有するのが当然であり、奴隷を家畜同様に扱うのが当然という世界で生きているならば、過去の奴隷所有者と同じ振る舞いになるでしょう。
奴隷所有者は、奴隷を所有しているわけですから、物権に基づき絶対的な支配権があります。
このように絶対的な力、所謂、権力を持つと、人間はかくも獰猛になるのでしょう。
権力には、節度が必要であると共に、品も必要でしょうね。
歯止めとなるものが必要です。
三権分立という工夫も、その歯止めのひとつでしょうね。
とにかく、他の人間のチェックが必要です。
人間は環境に支配されるわけですから、他の人の目が存在しているならば、その他人の目がストッパーの役割を果たし、暴走を防ぐ効果をもたらします。
いずれにしても、奴隷制によって、奴隷とされた黒人の尊厳は踏みにじられると共に、奴隷所有者である白人も俗悪な生命状態に陥り、共々に不幸です。
奴隷制度は、黒人にとって過酷であることは当然ですが、実際のところ、白人にとっても好ましくない制度ですね。
アメリカ北部の人間は、このことに気付き、早々に、奴隷制度を廃止していったのでしょうね。
しかし、アメリカ南部の人間は、奴隷制度を堅持しようとし、結局、アメリカ南北戦争になるわけですが、南部が戦争に負け、奴隷制度が廃止されたとはいえ、現在に至るまで、アメリカ南部では、黒人に対する差別が色濃く残っているようですね。
150年程度では、世の中は変わらないということでしょうか。
地道であっても差別のない社会を目指すことですね。