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2014年01月19日

『政治学事典』における「日蓮」

『政治学事典』(弘文堂)で「日蓮」の項目を確認してみましょう。

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▊日蓮 にちれん 1222〜82
鎌倉時代の仏教者。日蓮宗の祖師。安房国(千葉県)長狭郡に漁師の子として生まれる。郷里にほど近い清澄寺で出家後、鎌倉・比叡山など各地に留学、法華至上主義と反念仏の立場への傾斜を深めた。正嘉年間(1257〜58)から天変地災が相次ぐと、日蓮はその原因が「悪法」である専修念仏の流布にあると考え、『立正安国論』を著して鎌倉幕府に念仏の禁止を要請した。だがその激しい他宗批判は、権力者や念仏者の反発を招き、伊豆流罪・竜口法難・佐渡流罪などの数々の弾圧(法難)を被った。

日蓮はこれらの迫害の体験を通じて法華経の至高性の確信を深め、他宗批判をさらにエスカレートさせた。とともに、みずからを法華経の題目弘通の使命を帯びてこの世に出現した「地涌の菩薩」と称するに至る。蒙古襲来にあたっては、それを『立正安国論』で予言した「他国侵逼難」(外国の侵略)の的中であると確信し、改めて幕府にその献策の実施をせまった。晩年には身延に隠棲して、執筆活動と弟子の育成に専念した。その代表的著作として、『立正安国論』の他に『開目抄』『観心本尊抄』などがある。

政治思想という側面から見た日蓮の思想の特色として、第1に、地上の権威に対する、仏や仏法といった宗教的権威の絶対的優越を強調した点があげられる。日蓮はその著作の中で、仏法に背いたという理由で後鳥羽天皇や北条時頼らが地獄に落ちたと明言している。いかなる権力者も、仏法の厳格な因果の理法を逃れることはできなかったのである。

第2点目として、救済は個人の主観においてだけでなく、社会を改造し理想社会をこの世に築き上げることによって、目に見える形で達成されなければならないと考えたことである。あくまで現実世界に仏国土=浄土の建立を目指す点において、日蓮の立場は、この世界での救済を断念し死後の往生を願うべきことを説く法然とは、明確な一線を画すものであった。

第3点目として、日蓮は、この世に理想の仏国土を建設するにあたって、その主体をはっきりと明示したことがあげられる。日蓮は正法流布と現実変革の担い手として、法華経に説かれる地涌の菩薩を措定し、自身とその門弟をそれになぞらえた。彼らが地涌の菩薩であるならば、その実践は仏の予言を実現するための聖なる行為にほかならない。かくして社会変革の主体が具体的に明示され、その行動が宗教的に意義づけられることによって、日蓮の宗教はたぐい希な実践志向を、その構造そのもののなかに組み込むことになった。日蓮における激しい折伏精神と現実変革への飽くなき関心は、のちに近代の日蓮主義者によって着目され、その行動を支える精神的支柱となった。

日蓮の教団は、彼の没後求心力を失い、高弟の主宰する教団に分裂していった。その過程で、日蓮の思想が持っていた普遍主義や現実批判の精神はしだいに色褪せ、ストレートな現世利益主義が表面化した。また近世初頭における不受不施派の禁教は、日蓮の宗教から思想的生命力を奪い去る結果となった。

日蓮の宗教が再び着目されるのは、近代に入ってからのことである。田中智学の創唱した日蓮主義は、宮沢賢治ら多くの人々に影響を与えるとともに、昭和期における国家主義興隆の気運の中で重要な政治的役割を担った。また近代において、日蓮の思想が多くの新宗教に思想的素材を提供したことも見逃せない。霊友会・立正佼成会・創価学会などの大教団は、いずれも日蓮を祖師と仰いでいる。⦿佐藤弘夫
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じっくりと説明されていますね。

日蓮の主著が『立正安国論』であることは間違いないのですが、日蓮の仏法、思想からすると、『開目抄』、『観心本尊抄』の方が主著といえます。

その点を踏まえてのことと思われますが、『立正安国論』、『開目抄』、『観心本尊抄』の三つを代表的著作として紹介しています。

通常、日蓮の著作に関しては、上記三書に『撰時抄』、『報恩抄』を加えて、五大部という言い方をします。

しかし、最重要なのは、『立正安国論』、『開目抄』、『観心本尊抄』の三大部ですね。

また、『政治学事典』ですから、政治思想の側面から解説がなされています。

現実の政治権力よりも仏法に権威を認めることにより、現実の政治に制約されず、新しい秩序を志向する思想が出てきます。

政治権力の側からすると、いつ新しい秩序によって自らの権力が奪われるか気が気でないでしょう。

権力側の人間からすると、日蓮は危険人物以外の何ものでもなかったと思われます。

しかし、現実の政治秩序を尊重しながらも、問題点が発生し、変革が求められるときには、現在の状況を所与のものとして考えず、果敢に改善、変革をしていくべきでしょう。

この場合、やはり、現在の状況を超えたものの考え方が必要です。

そこで、日蓮は、仏法、就中、法華経をもって現状を変革しようとしました。

当然、反発だらけであり、流罪という追放刑に遭い(それも2回)、竜口では打ち首寸前でした。

法難の部分に着目すると、踏んだり蹴ったりの人生です。

それもレベルが違いすぎますね。

よくも生き延びたという感じです。

尋常ではありません。

やはり、根本的に何かが違うのでしょうね。

境涯が違うといえばよいでしょうか。

このような変革を志向する日蓮ですから、来世で幸せという考え方に違和感があったものと思われます。

日蓮からすると、死後の往生を説く法然こそ、危険人物と映じたことでしょう。

なぜ、来世なの?

このような問いがあったことでしょう。

現世が大事ということですね。

もちろん、法然の時代、現実の世界ではどうしても救済されない人々がいたわけで、いくら現世で変革といったところで、それが不可能であるならば、せめて、来世は往生できるという希望を欲するのは当然と思われます。

この点において、法然の説法に意義を見出せますが、やはり、日蓮は、どのような悲惨な状態であれ、まずは、現世からはじまると考えていたようです。

強い現世志向が窺われます。

よって、この世での変革が必要となれば、政治権力者に献策するのは当然の成り行きでしょう。

そこで、日蓮は、自らが変革の先頭に立つわけですが、自分が何かをするという当事者意識が明確です。

他人ではなく、自分という観点ですね。

この当事者意識をあらわすモデルとなっているのは、「法華経」が示す世界を実現することを託された「地涌の菩薩」ですね。

日蓮は、「地涌の菩薩」との自覚のもと、弟子・檀那らにも自覚を持つよう促していきます。

日蓮の思想からは、行動、実践、変革に至るエネルギーが秘められています。

まずは、今、ここからということですね。

現状に満足している現状維持派からすると、厄介な思想でしょうね。

しかし、どれほど満足の状態であっても、限りなく上をめざし、尊いもの、価値のあるものを志向することが大切です。

安易に満足している状態は、実のところ、「未だ得ざるを為れ得たりと謂い我慢の心充満せん」(法華経勧持品第十三)の状態であるだけです。

法華経は、現状に満足することなく、常に仏を目指す経典であり、自分が仏を開くだけでなく、他の人にも仏を開くことを勧める経典です。

終わりがなく、いつまでも新鮮な気持ちでいられる経典ともいえましょう。

日蓮が法華経を重視したのも頷けます。

このことから、比較的平和であり、変革が出来ないような時代であった徳川時代においては、日蓮の影響力は少なかったようです。

時代の転換点において、日蓮の思想は見直されるのでしょう。

まさに、近代は、大きな時代の変わり目ですから、このころから再び、日蓮の思想が花開きます。

田中智学の日蓮主義は、多くの人に影響を与えたわけではありませんが、人数は少ないながらも強い影響力を受けた人びとはいたようです。

最初は、少数であったにしても、その後、新宗教という形式で一気に日蓮の思想は、多くの人に広がっていきました。

戦後も、大きな時代の転換点でしたから、日蓮の影響力が強くなったものと思われます。

ただ、日蓮の思想は、時代の転換点だけに有用な思想というわけではなく、本来は、法華経に基づく、深い内容を持っているわけですから、平和な平穏な時代においても重要な思想であり得ます。

研鑽する側がいかほどの研鑽ができているかということでしょう。

単なるブームや流行として、日蓮の思想に取り組むのではなく、自らの人生の基盤として、日蓮の思想に取り組むべきでしょう。

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