仏教の各宗派では、それぞれの勤行がありますが、祈りの一つの形式といえますね。
祈りを行うにあたって、注意すべき点は何でしょうか。
十界論をヒントにしながら考えてみたいと思います。
十界の内、六道としては、「地獄界」、「餓鬼界」、「畜生界」、「修羅界」、「人界」、「天界」があります。
六道輪廻などともいわれるように、苦しみの境涯をあらわしています。
特に、三悪道といわれる「地獄界」、「餓鬼界」、「畜生界」や、「修羅界」をも含めた四悪趣の状態は好ましくない状態です。
この好ましくない状態である三悪道、四悪趣の状態である自分を恥じ入り、深く反省するところから祈りを始めるのがよいでしょう。
まずは、自分の悪い状態をきれいにすることですね。
そうしますと、心が平静になり「人界」の状態となり、きれいになったことによる清々しさは「天界」の状態といえるでしょう。
その上で、「法華経」を読誦し、「御書」を読み、自身の境涯を上げていくことです。
「法華経」、「御書」に触れることは、「声聞界」、「縁覚界」の状態といえなくもありません。
そして、人のために生きていくという利他の祈りを行うと、これはまさに「菩薩界」の状態ですね。
この「菩薩界」の祈りが含まれることによって、活動的、実践的、倫理的になり、静的な祈りから動的な祈りになります。
仏教における菩薩の特質が出ているようです。
その上で、自らの仏を開くことを祈ると、「仏界」の状態に至ります。
十界のそれぞれを意識しながら、祈りを行うと、漫然とした祈りでなくなり、ひとつひとつ区切りの付いたメリハリのある祈りになります。
実際は、勤行の中で祈りを行っていきますので、上記の順番にはなりません。
法華経方便品、如来寿量品を読誦しますので、「声聞界」、「縁覚界」からのスタートになるといえます。
別の観点からいうと、題目を三遍唱えて勤行が始まるわけですから、題目そのものは「仏界」を表わしていますので、いきなり「仏界」から祈りが始まっていることになります。
「仏界」、「声聞界」、「縁覚界」からスタートしておりますが、三悪道、四悪趣を反省するという十界を意識した祈りは、重要な視点のように思われます。
十界にはそれぞれ十界があり、十界互具といわれているように、十界のそれぞれが混然一体としたものですから、祈りにおいても、順不同であったにしても、問題はありません。
最終的に「仏界」の境涯を目指すというところがしっかりしていることが大切ですね。