完了の助動詞「ぬ」の活用を確認してみましょう
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
な に ぬ ぬる ぬれ ね
打消の助動詞「ず」の活用を確認してみましょう。
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
な に ず ぬ ね ざれ
ざら ず ざる ざれ
ざり
このことを踏まえて、日蓮の以下の一節を確認してみましょう。
「かかる日蓮を用いぬるともあしくうやまはば国亡ぶべし」(『日蓮大聖人御書全集』919頁)
ここで注目したいのは、「日蓮を用いぬるとも」の中の「ぬる」の部分です。
この部分を「完了」とみるか「打消」とみるかで意味が反対になります。
つい打消の助動詞「ず」の連体形である「ぬ」と読んでしまいがちですが、よくよく見ると「ぬ」ではなく「ぬる」です。
完了の助動詞「ぬ」の連体形である「ぬる」ですね。
よって、正しくは、完了の助動詞として読まなければなりません。
現代語訳すると「日蓮を用いたとしても」となります。
「日蓮を用いないとしても」ではありません。
「ぬる」と「ぬ」との違いだけですが、意味が逆ですから、注意して読んでいきたいものです。