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2013年10月18日

テキスト中心主義の観点からの日蓮教学研鑽

テキスト中心主義という言葉がありますが、どのような意味なのかを確認してみましょう。

「ここでいうテキスト中心主義とは、歴史を超えた普遍的な価値基準の存在および永遠の問いとそれへの回答の可能性を信じ、現代の問題に対する示唆や解答を求めてテキストとの直接的対話を行う方法のことである」(『藤原保信著作集』第4巻 解説 新評論 371頁)

規範的なものを求めながら、テキスト、所謂、古典を読み込んでいくということですね。

日蓮教学の観点からいえば、「御書」と「法華経」とを読み込んでいくということになります。

とにかく、「御書」と「法華経」とを繰り返し読み、自分自身のものにしていくわけです。

その上で、「御書」と「法華経」とから汲み出したものを自分自身の現在の生活に活かしていくわけですから、至って実践的です。

しかし、「実はテキスト中心主義がともすると抽象の世界にこもり、コンテキスト主義とは違った意味で実践から後退する危険性をはらんでいる」(同書 372頁)ということですから、話はそう簡単ではないようです。

「御書」と「法華経」とを読み込んでいくにしても、抽象の世界で読んでいくならば、つまり、自分自身の問題として読まないならば、また、単なる昔話として読んでしまうならば、実践的ではなく、「御書」と「法華経」とが宙に浮いた感じになってしまいます。

こうなってしまっては意味がありませんね。あくまでも自分自身と「御書」、自分自身と「法華経」という観点から読み込んでいくべきです。

単なる字面の解釈だけでは、お勉強になってしまいます。実践的に読むという観点がどうしてもはずせません。

そのことから以下の視点は重要ですね。

「学ぶことの意味それ自体を絶えず自問し、学生たちにも学問の社会的責任や実践的な問題意識をもつことの重要性を説き続けた藤原にとって、本質的に実践的であるはずの政治学をやりながら没政治的になるというのは明らかに矛盾であった。それゆえに、藤原は単純な意味でのテキスト中心主義者にはなりえない」(同書 同頁)

日蓮教学を研鑽する意味それ自体を常に自分自身に問い掛けるという姿勢が大切です。

また、社会的責任を果たすといった観点から日蓮教学研鑽を見直すことも必要でしょう。

そもそも、日蓮の「立正安国論」などは、社会的責任を果たそうとしてしたためられた書であり、社会的な観点を外しての日蓮教学研鑽はあり得ないといえましょう。

自分自身の問題を解決するために日蓮教学を研鑽するという点だけでなく、社会的な問題を解決するために日蓮教学を研鑽するという点も忘れてはなりません。

そして、実践的に日蓮教学を研鑽することですね。

ただし、「実践、実践」と言いながら、「御書」と「法華経」とはどこかに置き忘れ、手足をバタバタさせているだけの人もいますから、このような人には惑わされないようにすることですね。

また、「御書」と「法華経」とを単なる古文・漢文としてしか認識できないようでは、実践的以前の問題といえます。

日蓮仏法は、本質的に実践的ですから、日蓮教学を研鑽しながら実践的でない状態になることは自己矛盾です。

そうならないためにも、自分自身という軸と「御書」と「法華経」とのつながりを確固としたものにする必要があります。別々になってはいけません。

実践といっても、「御書」と「法華経」とが自分自身の人生に滲み出てくればよいわけで、そんなに難しいことではありません。

常日頃からの自分の振る舞いの中に「御書」と「法華経」とを体現していくことが実践ということです。

特別なことをするのが実践なのではありません。誰かから言われたことをするのが実践なのではありません。

自分の生命から湧き出るものが実践の元であり、その上で活力ある生活をすることが取りも直さず実践ということです。

そこで「信仰」という側面が重要視されます。「御書」と「法華経」とを自分自身の生命と一体化することが、「信仰」の作用といえましょう。

自分自身の古典として、「御書」と「法華経」とを読み込んでいきながら、実践的であり続けるようなテキスト中心主義であれば、バランスのとれた好ましい状態といえるでしょう。

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