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2012年10月17日

中島敦「李陵」を読む。自分の境涯に見合った人生

「常々、彼は、人間にはそれぞれその人間にふさわしい事件しか起こらないのだという一種の確信のようなものを有っていた。これは長い間史実を扱っている中に自然に養われた考えであった」(中島敦『李陵・山月記』新潮文庫 118頁)

今までの人生を振り返った時に、なぜ、あの時あのような目に遭ったのだろうと思うことがありますが、それは自分自身がそのような目に遭う人間に過ぎなかったからというのが答えになります。

とにかく、相手が悪い、環境が悪い、時代が悪い等々、あれが悪いこれが悪いと言いがちです。

確かに、周りが悪いというのは、その通りでしょうが、周りが悪かろうとどうであろうと、その悪いものに囲まれている自分自身が根本的に悪いという点を見逃してはなりません。

所詮、自分の境涯に見合った人生しか送れないわけですから、自分自身の境涯を高め、自身を磨くことしか解決方法はありません。

さまざまな人を観察したところ、境涯の高い人には、その境涯に見合った事件が起こるものです。

困難があったにしても、境涯の高い人の場合では、その困難も上品な現れ方をしています。

決して下品な困難は出てきません。

ある意味、境涯の高い人に対して現れる困難は、乗り越えるべき困難であり、乗り越えることにより、より一層、境涯が上がるという特徴があります。

しかし、境涯の低い人の場合では、下品でみすぼらしくみっともない困難が襲ってきます。

乗り越えるほどの価値もない、ただただ、つまらない困難であり、乗り越えたところで生命力を失うだけの困難という特徴があります。

境涯の高い人の人生は上向きであり、境涯の低い人の人生は下向きという風に、そもそもベクトルが違うようです。

ここから考えなければならないのは、少なくとも、真ん中よりは上の境涯を確保しておくということですね。

上向きの人生であれば、その上昇気流に乗って、より一層、境涯を上げることができます。

しかし、真ん中より下の境涯であった場合、流れが下向きですから、何もしない場合、どんどん下に落ちていきます。

心して上向きにしようとしても膨大なエネルギーが必要になります。

このことから、真ん中より下の境涯であるならば、どんなに大変でも、まずは、真ん中より上の境涯を確保すべく、懸命になって努力、研鑽をすることですね。

とにかく、一度、上昇すれば、飛行機と同じで、それ以降はさほどエネルギーを消費しないものです。

最初だけが大変ということですね。

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posted by lawful at 19:53| 文学

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