法華経の漢訳において、最高の評価を得ているのが鳩摩羅什訳の「妙法蓮華経」です。
鳩摩羅什ひとりで翻訳したのではなく、多くの僧や士大夫の協力の上で成立しているようです。
「音韻の面からも十二分に検討がなされた上で、鳩摩羅什を訳主として、中国の多くの僧・士大夫等がその訳場に参集し、梵語あるいは亀茲語で記されていたという『妙法蓮華経』を、推敲に推敲を重ねて漢語に訳出したであろうことが、想像されるのである」(伊藤丈『仏教漢文入門』大蔵出版 164頁)
読誦することも念頭に置きながら、翻訳されていたようですね。
経典は内容もさることながら、音声においても心地よくなければ人々に親しまれることはないでしょう。
その意味から、「妙法蓮華経」は見事な翻訳といえます。
中国においても天台智は、「妙法蓮華経」を基に「法華文句」「法華玄義」「摩訶止観」を講義し、日本においても、平安時代から「妙法蓮華経」は親しまれていました。
鎌倉時代に至っては、日蓮により「妙法蓮華経」が最高の経典であることが強調され、現在に至るまで法華宗、日蓮宗により、「妙法蓮華経」は大切にされています。
伝統仏教教団だけでなく、新宗教の教団においても、法華系が大きな勢力となっており、「妙法蓮華経」は多くの人々に影響を与え続けています。
日本を再認識する際、「妙法蓮華経」を外すわけにはいかないといえるでしょう。