法華経方便品には「略法華」と呼ばれ尊重されている箇所があります。
十如是が含まれているところですね。
確認してみましょう。
「仏の成就したまえる所は、第一希有難解の法なり。唯、仏と仏と、乃し能く諸法の実相を究尽したまえばなり。所謂、諸法の如是相、如是性、如是体、如是力、如是作、如是因、如是縁、如是果、如是報、如是本末究竟等なり」(梵漢和対照・現代語訳『法華経』上 岩波書店 78頁)
如是が「相」「性」「体」「力」「作」「因」「縁」「果」「報」「本末究竟等」と10個あるので十如是です。
それぞれの意味を確認し、人間の生命を観察する際、役立ててみましょう。
@ 「相」…表面にあらわれた姿。
分かりやすく言えば、見た目ですね。
端的に顔、表情にあらわれます。
後ろ姿も相といえますね。
その人の生命は相に如実にあらわれます。
まずは、相を確認することですね。
A 「性」…内面にある性質。
分かりやすく言えば、人の性格と考えればよいですね。
目に見えない性分といってもよいでしょう。
所謂、心というものですね。
人間生命の心の部分を垣間見るには年季が必要とされます。
B 「体」…相と性とを兼ね備えた本体・本質。
その人をその人たらしめている根本的なものといえます。
この「体」は、やや難しいですね。
年をとると見た目も変わり、性格も穏やかになったり、頑固になったりと変化しますが、その人そのものは、いくら年をとってもその人であり変化しません。
全く別人になるということはありません。
この変化しない本質が体ですね。
相、性だけにとらわれず、この体というところにも気を配っておきたいですね。
C 「力」…内に秘めた力。
潜在的能力。
英語にしただけですが、パワーと言うと感じがつかめるでしょうか。
内に秘めた潜在的なものとはいえ、外面ににじみ出るものでもあります。
D 「作」…内に秘められた潜在的な力が外にあらわれた作用。
力が具体化する際の動き、動作、活動といえましょう。
E 「因」…生命の中にある自分が変わっていく際の直接的原因。
この原因は、生命の中にあるというのがポイントですね。
本質的な原因は、目に見えないという特徴があります。
F 「縁」…内面的、外面的にわたって自分が変わっていく際の間接的原因、補助的原因。
所謂、「ご縁」と言えばよく分かると思います。
G 「果」…直接的原因と間接的原因との絡み合いによって生じた生命の中での直接的な結果。
ここでの結果は、因と同様、生命の中にあり、目に見えないという特徴があります。
H 「報」…生命の中での結果が外面に形としてあらわれたもの。
俗にいう結果がこれにあたります。
「報いを受ける」という言い方をするとイメージしやすいかもしれません。
I 「本末究竟等」…相から報までの九如是が究極的に平等であること。
相から報までの九如是がバラバラに存在しいるのではなく、一貫しており統合性があるということです。
相から報の全てに繋がりがあるということですね。
十如是の知見によると生命には一貫性・統合性・共通性がありますから、「相」を正しくつかむことができれば、その「相」の状態に応じた「性」から「報」が推察され、適切に生命状態を把握することができます。
この点から、見た目が重要であることが分かります。
自らを省みるときにも活用したいですね。