2013年06月10日
バランスバイク(ペダルなし自転車)にブレーキは必要か?
バランスバイク(ペダルなし自転車)の登場からしばらく経ち、ブレーキ付きが現れるようになってきましたが、はたしてこのブレーキ、実際に役に立つのでしょうか・・・?
想像と現実との違い
「もし自分が普段乗っている自転車にブレーキが無かったとしたら」
とっさの危機回避のことを考えると、バランスバイク(ペダルなし自転車)にもブレーキが無いよりはあったほうが当然良い、良いに決まっている・・・という思いを、バランスバイク購入当時の僕は思っておりました。市場に流通しているバランスバイクに、ブレーキ単体のみでネット販売できないか?という「すきま産業」すら考えていたぐらいの、ブレーキ肯定派でした。(僕がブレーキなしの「キッカー」を選んだのは、単純に安さが理由です。)
しかし、実際は・・・不要というのが僕の結論です。子供が自転車に乗れるようになるまでの間に、180度考え方が変わりました。
●理由その1:握力が足りない
2013年6月現在、補助輪なしの12インチ自転車に乗れるようになって2カ月以上が経過し、つい先日4歳になった長女ですが、いまだに「急ブレーキ」をかけることはできません。
ほぼ自由自在に乗れるにもかかわらず、手元のブレーキと両足を地面につくことを「併用」して止まることがほとんどで、少し急な下り坂や長く続く下り坂では、止まれる自信がないからなのか、自転車から降りてしまいます。
「手元のブレーキを引けば止まる」ということは確実に理解しているのですが、後輪をロックさせて「キキーッ!」という音が鳴るほどの握力はまだ備わっていないのです。
男女差・個人差はもちろんあると思いますが「目の前で起きている現実」はその状態です。よい例えが浮かびませんが、自動車のエンジンブレーキのような「じわ~っ」とした減速しかできません。
長女にブレーキ付のバランスバイク(ペダルなし自転車)を与えたと仮定した場合、両足を地面から浮かせる状態になるまでの過程で、しっかりと手元でブレーキをかけられるようになったかというと、上記理由により「無理」だったと思います。いや、今でもできないので無理です。断言します。
●理由その2:ブレーキの有無に関係なく、保護者は寄り添う必要がある。
バランスバイク(ペダルなし自転車)を与える時期は、きっと2歳〜4歳ぐらい・・・かな?まだ幼い子供が公園で練習している間、親は子供を放っておくでしょうか?
半径2m以内とは言わないまでも、保護者は数秒後の危険を予測し、いつでもそれを回避することができる場所にいるべきなのです。練習中の子供を横目に「ブレーキがあるから安心して見ていられる」なんてこと、あるでしょうか?
ブレーキは保護者自身です。危険を察知したら身をもって子供を助けなくてはならないのです。足けり自転車にブレーキが付いていても、いなくても、大きな事故につながる予感がした場合、それを避けるのは親の役目です。
●理由その3:ブレーキが「必要」な場面はあるのか?
大きな公園で周囲に障害物がなければ、少し離れた場所で観察することもできますが、その場合手元のブレーキは必ずしも必要とは言えないでしょう。両足を地面について十分に止まることができるのですから。
では実際に必要となるのはどういう場合かというと、下り坂でスピードが出すぎた時だけだと思うのです。
過去の記事で「ゆるい下り坂は練習に効果的」と何度か触れておりますが、この「ゆるい」とは、見た目では平地とさほど変わらない「スキー場の初心者コースの終点」ぐらいのゆるさのことで、もちろん両足をついて止まることができることが大前提です。足をついて止まれないほどのスピードは、事故の危険性に加え恐怖心を与えることにもつながり、逆効果になりかねません。
つまり、バランスバイク(ペダルなし自転車)を「スピードが出すぎる場所」で乗せなければ両足で止まれるため、ブレーキは必要とは言えないのです。練習場所をきちんと選べばいいのです。
●理由その4:製品レビューでの意見がおもわしくない。
ショッピングサイト等で販売されているブレーキ付きバランスバイク(ペダルなし自転車)のユーザーレビューを探し、自分で見つけられた限りの情報ですが、「ブレーキが役に立った」という意見が無いのです(2013年6月現在)。売り手側の宣伝文句で「ブレーキ付きで安心!」は当然見かけるのですが・・・。
いざ、検証!
自転車販売店でブレーキ付きバランスバイク(ペダルなし自転車)を見つけたので、4歳0ヶ月の長女に試乗してもらいました。12インチのオーソドックスな形状のバランスバイク(ペダルなし自転車)です。ブレーキとハンドルの空間はうちのプリンセス号よりも広く、そして動きも固かったです。
試乗中に「ブレーキかけて!」と声をかけても、やはり「じわ〜っ」とした減速しかできませんでした。
一応、ブレーキレバーを手元に引き寄せる力はあるようです。しかし後輪ブレーキが「パッドを押しつける摩擦力で止まる」方式のため、短い制動距離で止まるためには、この「パッドを押しつける力」が強くないといけないのです。結局、行き着くところは「握力」です。
プリンセス号に比べると車体はずっと軽いため、同じ力でブレーキをかけた場合を比較するとこちらのほうが短い制動距離で止まれるはずですが、それ以前の話で、長女の握力は「役に立つレベル」まで全く達していませんでした・・・。
ブレーキ付きの利点
バランスバイク(ペダルなし自転車)にブレーキは必要か?の問いには不要と答えますが、利点は無いか?と聞かれたならば、これはあると思います。「バランス感覚とブレーキの使い方を完全に覚えてから自転車へ移行する」という考え方のもとでブレーキ付きを選ぶことに対しては、全く異論はありません。自転車はバランスバイク(ペダルなし自転車)よりもスピードが出せるため、ブレーキを実際に使えるようになってから移行するほうが安全ではあると思います。子供の握力が強くなる年齢まで待たねばなりませんが・・・。
具体的には、小学校入学までに補助輪なしの自転車に乗れるようになるという目標を立て、ブレーキ付きのバランスバイク(ペダルなし自転車)でじっくりと教育する、といったようなスタンスの場合ですね。これは賛成です。
【まとめ】大人の「思いこみ」が大きい
結局「ブレーキがないと止まれない。あると安心」というのは僕たち大人の勝手な思いこみであり、もちろん個人差はあると思いますが、うちの場合は握力不足のため、役に立ちませんでした。「あぶない」と事前に察知してブレーキをかけることが2〜4歳で普通にできるのであれば、ボールを追いかけて道路に飛び出すこともないでしょう。実際にブレーキを使えるようになったとしても、無茶をしがちな幼児に対して、正しい判断・正しいタイミングでブレーキをかけることを期待するのは、無理があると思います。
子供自身の危機管理能力は、僕が想像していた以上に時間のかかるものだと今は感じており、親の指導に加えて交通安全関係の教育番組・本・自分の体験・目の前での目撃などの「積み重ね」によって、少しずつ学んでいくものだと思います。
何よりも大切なことは、バランスバイク(ペダルなし自転車)はブレーキの有無にかかわらず、ひとつ間違えば大きな事故につながる遊具、という意識を親が持ち続けることではないでしょうか。
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