2014年01月06日
「人に強くなる極意」 佐藤優
対人関係の心構えについて述べている本というのは2種類に大別される。1つは心理学者やカウンセラー、精神科医といった「人の心と向き合うプロ」が自身の専門知識・学説・経験を元に書いたものである。もう一つはそれこそ多種多様な経歴の「成功者」達が自身の「人間論」を書き下ろしたものである。前者は「ウツにならない方法」「ストレスをためない」といった内容のものが多い。現代医学からチャクラ、呼吸法、瞑想などその内容は多岐にわたる。
一方後者については執筆者自身の力量・実績自体に大きな差があるばかりでなく、内容としてもモノにより相当な差がある場合が多い。装丁・文面・執筆者どれも世間的に見て優等生的な堅実な面をしておきながら、中身が完全な誤謬や虚構・妄想にまみれている本も世の中には多い。しかし、そもそもその「外面」の時点から失格な本が多いのが「心構え」「自信のつけ方」と言った分野である。
上でいう後者すなわち「成功者」の手からなる「人間論」の本については私は基本的に読まない。執筆者の他の著作やその実績まである程度知っている上でしか手には取らない。まあ、酔った親戚の中年オヤジの訓戒と、飲み屋で横になったオヤジの訓戒どちらがまだ聞いてて苦痛でないかというぐらいしか違いはないが。
本書の著者・佐藤優の凄いところは(一般的な意味ではなく原義的な意味で)インテリでありながらその言葉に彼の経験により裏打ちされた重みがあることだ。
「怒らない」「びびらない」「飾らない」「侮らない」「断らない」「お金に振り回されない」「あきらめない」と題された各章では佐藤自身の経験・読書歴からさまざまに事例・教示を引き出しながら如何に「人に強くなるか」が展開される。
「びびらない」では「人間は限界のわからないものに対して恐れを抱く」というチェコの神学者コメニウスの引用から始まり、びびらないために相手や対象を知り、相手の本質や意図を見極めること(外交の世界でいう「相手の内在論理を知る」)が重要と続き、北朝鮮のミサイル問題、検察の取り調べ、太平記の引用と飛びに飛ぶが話が飛躍するたびに読者レベルの事象に対応するために戻って一区切りつけている構成なので、自分で実践する時ばかりでなく、人にアドバイスする際にもこまめに役立つであろう。
興味深いのは佐藤のお金に関する記述である。講演をできるだけ引き受けないようにしているのはギャラが高すぎるから、単行本執筆時には初版が労働のまっとうな対価であり、重版による収入は不労所得、など彼独自のストイックな金銭論が展開する。ある意味この章は独立させても十分に本になる骨子を持っている。
他の章も「『自分を大きく見せたい』という意識が利用される」「夢や目標をただの『執着』と区別する」など示唆に富んでいる。各章末に2冊ずつその章に見合った本が紹介されるのも彼らしい。
一方後者については執筆者自身の力量・実績自体に大きな差があるばかりでなく、内容としてもモノにより相当な差がある場合が多い。装丁・文面・執筆者どれも世間的に見て優等生的な堅実な面をしておきながら、中身が完全な誤謬や虚構・妄想にまみれている本も世の中には多い。しかし、そもそもその「外面」の時点から失格な本が多いのが「心構え」「自信のつけ方」と言った分野である。
上でいう後者すなわち「成功者」の手からなる「人間論」の本については私は基本的に読まない。執筆者の他の著作やその実績まである程度知っている上でしか手には取らない。まあ、酔った親戚の中年オヤジの訓戒と、飲み屋で横になったオヤジの訓戒どちらがまだ聞いてて苦痛でないかというぐらいしか違いはないが。
本書の著者・佐藤優の凄いところは(一般的な意味ではなく原義的な意味で)インテリでありながらその言葉に彼の経験により裏打ちされた重みがあることだ。
「怒らない」「びびらない」「飾らない」「侮らない」「断らない」「お金に振り回されない」「あきらめない」と題された各章では佐藤自身の経験・読書歴からさまざまに事例・教示を引き出しながら如何に「人に強くなるか」が展開される。
「びびらない」では「人間は限界のわからないものに対して恐れを抱く」というチェコの神学者コメニウスの引用から始まり、びびらないために相手や対象を知り、相手の本質や意図を見極めること(外交の世界でいう「相手の内在論理を知る」)が重要と続き、北朝鮮のミサイル問題、検察の取り調べ、太平記の引用と飛びに飛ぶが話が飛躍するたびに読者レベルの事象に対応するために戻って一区切りつけている構成なので、自分で実践する時ばかりでなく、人にアドバイスする際にもこまめに役立つであろう。
興味深いのは佐藤のお金に関する記述である。講演をできるだけ引き受けないようにしているのはギャラが高すぎるから、単行本執筆時には初版が労働のまっとうな対価であり、重版による収入は不労所得、など彼独自のストイックな金銭論が展開する。ある意味この章は独立させても十分に本になる骨子を持っている。
他の章も「『自分を大きく見せたい』という意識が利用される」「夢や目標をただの『執着』と区別する」など示唆に富んでいる。各章末に2冊ずつその章に見合った本が紹介されるのも彼らしい。