痛恨の一本負けで五輪連覇を逃した女子52キロ級の阿部詩は、背中を畳につけたまま起き上がることができない。しゃがみ込み、ふらふらと畳を降りると、平野幸秀コーチに支えられ、叫ぶような大声で泣き続けた。
1回戦を快勝し、迎えた2回戦。技ありを奪い、有利に進めていた3分過ぎだった。投げを仕掛けようとした瞬間、懐に飛び込まれて谷落とし。背中から畳に沈み、主審の右手が上がった。全日本女子の増地克之監督は「あの一瞬だけ。相手にチャンスを与えてしまった」と悔やんだ。
対戦相手のケルディヨロワは、世界ランキング1位の強豪。今年来日して全日本合宿に参加した際には、詩からの乱取りの誘いを断っていた。手の内を隠していたのだろう。詩は6月の国際合宿後、「海外の選手は私の技を返そうとしてくる。そこをどう対応するか」と語っていたが、まさにその執念の返し技にのみ込まれてしまった。
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