トラブル続発のマイナンバーカードを自主返納する動きが広がっている。
健康保険証や公金受取口座との紐づけミス、住民票誤交付などの不祥事が後を絶たないため、国民が政府とマイナンバーカードのシステムに対する不信感を募らせているのだ。
このため政府は慌てて関係省庁のデジタル庁、総務省、厚生労働省を中心とした「マイナンバー情報総点検本部」を設置。岸田文雄首相は信頼を回復するため、8月上旬までに総点検の中間報告と対策を取りまとめるよう指示した。
しかし、これは焼け石に水だろう。持ち主不明の年金記録が約5000万件も出てきた社会保険庁(日本年金機構の前身)の「消えた年金記録」と同じく、抜本的な問題解決は不可能だと思う。なぜなら、岸田首相も河野太郎デジタル相も松本剛明総務相も加藤勝信厚労相も、問題の本質を全く理解していないからである。
私はマイナンバー関連4法案が国会に提出された10年前から「マイナンバーカードは役に立たない」と批判してきた。さらにその20年も前から生体認証をID(アイデンティフィケーション/本人同定)に使った国民データベース(DB)の構築を提唱している。
しかし、マイナンバーカードに生体認証は付いていない。専用サイト「マイナポータル」では、税・所得や年金、雇用保険、生活保護など29項目の個人情報を閲覧できるが、生体認証が付いていなければ情報漏洩のリスクは避けられない。
国民DBのシステムを構築する正しい方法は、まず1人の特定個人Aさんからスタートし、国との関係で必要な機能をすべて盛り込んだ生体認証付きのカードを1枚作ってみる。そして、それを各役所につなげていくというものである。
ところが、今のマイナンバー制度は順序が逆で、初めに役所ありきでシステムを作り、それに泥縄式で個人をつなげているから、AさんにつながるはずがBさんにつながってしまうという問題が起きているのだ。つまり、マイナンバー制度は最初からやり方が間違っていたのである。
あまりにも時代遅れ
すでに世界ではエストニアやインドなど多くの国が国民とデジタル的につながるシステムを作り上げて行政サービスに活用している。つまり、世界にもう「答え」はあるのだから、今の泥縄式はやめて、それらのシステムをそっくりそのまま持ってくればよい。
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