2018年03月16日
アカギが気に入る凡人の形ー「アカギー闇に降り立った天才」より
先日、長年に渡った「鷲巣巌」との対局を終え、長い連載の幕を下ろした「アカギ」。
「天ー天和通りの快男児」のスピンオフとして開始した作品で、アカギこと「赤木しげる」(以下表記はアカギで統一する)の潔いその生き方に魅せられている男女がとても多い作品である。
天については後日又書こうと思っていのでここでは触れないが、おそらく作者の「福本伸行」氏も相当にアカギを気に入っているようである。
今回はそんなアカギが、作中でなにかしらの形で助けた人間たちについて触れていきたい。
…………
アカギが作中で助けたのは、「南郷」「治」の二人。
やや年上の「平山幸雄」(日本最大級の動画サイト【niconico】こちらやpixivでは「ダメギ」と呼ばれることが多い)や、刑事の「安岡」には見向きもしない。
二人との出会いを簡略化して書いておこう
南郷は自身の借金返済を賭けて麻雀を打っている時。大雨の真夜中の雀荘にて、負けこんで空気が少しでも変わるのを望む南郷の元に、雀荘に紛れ込んできたのがアカギだった。
治はおもちゃ工場の社員寮で、給料日に先輩三人からカモられるのが恒例だった。麻雀勝負の中で四人中三人がグルであるとは気づかないままカモられつづける治。そんな彼にアカギは声をかけるが、「やったのは自分だから」と給料を取り出す。
見向きもしなかった平山に無いモノがある。
自分がしでかしたことに率直に向き合う事だ。この言い方ではかなり違和感を感じるかもしれない。それは考え方による部分はあるだろう。
平山は賭けの中で金銭の損得をすることに関しては特にコメントは無い。しかし負けによって否応なく消されるような、理不尽な死、無意味な死はイヤだと述べている。
この考え方は普通だろう。おそらく平山は安定感を望む質の人間であることは、確率論から生まれた戦い方からも見て取れる。だいたいの一般人は同意できるのではないだろうか。
よくできた凡人でも、知り合いや家族の損害を免れるための死までは許容できるかもしれない。しかし何故、理不尽な戦いを強いられた先で、言い分も尊厳もなく殺されなければならないのか。
皮肉というか、聞くとしょんぼりするが、この後平山は「鷲巣麻雀」で大敗し死亡している。
アカギが気に入る人間は一見単純だ。
きちんと自分のしたことに責任がとれること。
大人にいわれて育った人もいるだろう。これだけ聞けば簡単だ。自身を節制し、物事に対して無責任な背負い方をしないこと。自重と等しい事柄でもある。
しかしアカギが望むのはその先だ。
自らの手で大きなリスクを背負っても、そのことに対して無様に抵抗せず、請け負ったことに対して、生活費なり命なりを削る懲罰を厭わないこと。
通常断ればいいとおもうかもしれないが、どうしても断れない内容の出来事が発生する。南郷がギャンブルで借金したはいいが、どうにも首が回らなくなってしまったこと。治であれば年功序列を強いられる時代の中で、寮生活を平穏に過ごすためには、万が一知っていたとしても断れなかったこと。そんな感じだろう。
この責任を負うことを厭わず、巻き込まれたからには文句言わずに受け入れるという潔さ、この点である。後の「天」で「井川ひろゆき」を諭してきたというか、説いてきたのも、彼にそんな傾向があるからである。
結局細かい生い立ちについて語られることは無かったが、アカギの周囲にはそんな大人がいなかったのだろう。深い愛情、というほどの愛情を受けてきたとは思えないが、それなりの生き方はしてきていると思われる。何故なら自己の意志が確立しているからである。
福本作品の主人公としては「涯」に近いメンタル構造といえるかもしれない。
自己の中に絶対曲げられない深い自立心と信念が根付き、言動に現れる。どちらかといえば「零」はそういった信念を隠しながら消化するタイプだろう。
そういった大人や友人(クラスメート止まりでも)が周囲に現れなかった場合、孤立した世界に住むことになる。
だが南郷を見た辺りから、人生の分岐点になったことが推測される。なんといっても久しぶりにあった南郷に、なんだかんだで笑って受け入れたあたりに尊敬の念が見られる感があるからだ。南郷との出会いや、雀荘で麻雀を教わったことなど、親身に見てくれる人間がそういう人間なら、少なくとも会話する位の親愛は見せてもいい、という状況を学んだのだろう。
アカギが気に入る凡人は、本当に凡人なのだ。
ちょっと能力に秀でていると、人間はそこに甘える。そこから生まれる満身=単純な約束や契約に対する拒否なのだ。
もしかしたらアカギ自身、元々秀でた人間の方向にいるので、なおさら同族嫌悪になるのかもしれない。
ごく普通のことをごく普通に出来る。
いうなれば、自身にも相手にも誠実である人間のことなのである。
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