2009年10月27日
知らずに良かった
一軒家の解体工事現場があった。
重機の熊手で無造作に引き千切り、
押し倒しては潰している。
壊すのはなんと呆気ないことか。
先日廃材運搬用の大きなコンテナを家の隣に置いて、
二階から家財道具を乱暴に投げ捨てているのを目にしたが、
廃棄作業も終わったと見える。
この家は、あの“ポニーテール風ちょんまげの白髪頭”のご主人の、
理髪店の店舗を兼ねた住居なのだ。
あのご主人を知ってか知らずか、工事屋は黙々と解体作業をしている。
心臓を患いながら散髪してくれたご主人の、
生活の大部分だったあの仕事場に、
重機の熊手が無慈悲に襲いかかったとき、
不覚にも目頭が熱くなった。
やがて廃材の山となり、以前の面影は無く、景色は一変し、
記憶に残されるのみとなった。
目を閉じればまだ眼前にご主人と理髪店が現われるが、
それもやがて遠く小さく薄いぼやけた風景となるのだろう。
更地に新しい家が建ち、新しい人が住み、新しい生活がはじまる。
何事もなかったかのように。
あのご主人は当然この光景は知らない。
知らずに良かった。
読んでくれてありがとう。
重機の熊手で無造作に引き千切り、
押し倒しては潰している。
壊すのはなんと呆気ないことか。
先日廃材運搬用の大きなコンテナを家の隣に置いて、
二階から家財道具を乱暴に投げ捨てているのを目にしたが、
廃棄作業も終わったと見える。
この家は、あの“ポニーテール風ちょんまげの白髪頭”のご主人の、
理髪店の店舗を兼ねた住居なのだ。
あのご主人を知ってか知らずか、工事屋は黙々と解体作業をしている。
心臓を患いながら散髪してくれたご主人の、
生活の大部分だったあの仕事場に、
重機の熊手が無慈悲に襲いかかったとき、
不覚にも目頭が熱くなった。
やがて廃材の山となり、以前の面影は無く、景色は一変し、
記憶に残されるのみとなった。
目を閉じればまだ眼前にご主人と理髪店が現われるが、
それもやがて遠く小さく薄いぼやけた風景となるのだろう。
更地に新しい家が建ち、新しい人が住み、新しい生活がはじまる。
何事もなかったかのように。
あのご主人は当然この光景は知らない。
知らずに良かった。
読んでくれてありがとう。
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