慈恩寺(じおんじ)は、山形県寒河江市にある仏教寺院で、現在は慈恩宗の本山。山号は瑞宝山。宗教法人としての登録名は「本山慈恩寺」。
概要
行基によって見い出され、聖武天皇の勅によって創建したとされる。その後、鳥羽天皇の勅で再建され、後白河法皇と源頼朝によって山号を与えられた。平安時代は荘園領主である藤原摂関家から、鎌倉時代から室町時代にかけては地頭・寒河江大江氏の庇護を受け、寒河江大江氏が滅ぶと最上氏や江戸幕府によって寺領を認められた。
江戸時代には東北随一の御朱印地を有し、院坊の数は3ヵ院48坊に達した。修験による祈願寺として御朱印地を拝領していたため檀家を持たず、明治の上知令により一山は困窮して帰農する坊が続出した。現在は3ヵ院17坊を伝える。
本尊は弥勒菩薩で、脇侍として地蔵菩薩、釈迦如来、不動明王と降三世明王を配する日本国内でも珍しい五尊形式である。創建当初は八幡大菩薩を鎮守神として祭っていたが、時代の変化とともに法相宗、真言宗、天台宗を取り入れ、現在は天台宗真言宗兼学の一山寺院として慈恩宗を称する。
境内地は周囲の中世城館群や行場などとともに2014年10月に国の史跡に指定された。
歴史
奈良時代(創建)
伝承によれば、神亀元年(724年)に行基がこの地を選び、天平18年(746年)に聖武天皇の勅により婆羅門僧正菩提僊那が寺院を建立したのに始まるとされる。山号を寒江山とし、大慈恩律寺と称した。
しかし、奈良時代盛時の勅願寺であれば平地に七堂伽藍を建築するべきところを、慈恩寺は山中に伽藍を構築しており山岳寺院の傾向を持つ。麻木脩平によれば、慈恩寺開創の時期は平安初期の9世紀と考えられるという。その根拠として第一に、全国的に弥勒菩薩を本尊とするか本尊に準ずる扱いを受けている寺院はほとんどが平安初期に創立されたものであること。第二に永仁の大火(1296年、後述)で焼失した本尊は平安初期に盛行した檀像風の像であったと考えられること。第三に慈恩寺が、寺号や弥勒菩薩との関わりが深い法相教学の寺院として創建されたと考えると、この寺を開いた僧侶は南都(奈良)仏教系の人であると考えられ、南都系僧侶が出羽国にまで教線を拡大する情熱と力を失っていない時期は平安初期までで、それ以後とは考えられない。法相宗の徳一が会津で活動したのは9世紀前半であり、山形県内にも徳一開基を伝える寺院があり、南都の法相宗が県内に進出したのはほぼ確実なことを挙げている。さらに、平安時代に出羽国に設置された定額寺の中に慈恩寺の名が見えないことから、慈恩寺は当初、定額寺に列せられるような規模の大きな寺ではなく、小規模な法相系の私寺だったのではないかと論じた。
本山慈恩寺管長布施慶典の『法相宗について』によれば、現在でも本堂で行われる行事、修正会・一切経会などは法相宗の様式を伝えているという。
院坊
慈恩寺は3ヵ院48坊からなる一山寺院を形成し、鎮護国家、除災招福を祈願する寺院であった。一山を代表する支配職は、真言方は宝蔵院・華蔵院、天台方は最上院の3ヵ院で、所属の院坊をまとめ、幕府など大檀那への年礼を主とした。現在は3ヵ院17坊が一山を支える。
文化財
重要文化財
本堂(附:厨子1基)
元和4年(1618年)最上氏により築造。桁行七間、梁間五間、一重、入母屋造、向拝一間、茅葺。明治41年(1908年)、当時の古社寺保存法により特別保護建造物(現行法の「重要文化財」に相当)に指定。近年では、昭和28年(1953年)に半解体修理が行われたほか、令和4年(2022年)から令和6年(2024年)に茅葺屋根の葺き替え、屋根材の補修、天井絵の剥落止めが行われる。
本尊木造弥勒菩薩、釈迦如来坐像、地蔵菩薩坐像、不動明王立像、降三世明王立像、木造騎獅文殊菩薩、木造騎象普賢菩薩、十羅刹女像、木造二天王立像、木造如来坐像及び両脇侍立像、木造如来立像、木造菩薩坐像、木造力士立像などを安置する。
拝観
境内へは無料で入ることができるため、重要文化財である本堂・山門・三重塔などの外観は自由に拝観することができる。
受付 9時 - 16時
拝観料 700円(15名以上600円)
所在地
山形県寒河江市大字慈恩寺地籍31
慈恩寺の所在する旧慈恩寺村は江戸時代を通して慈恩寺の寺領であり[58]、1889年(明治22年)に町村制が発足すると日和田村・箕輪村と合併して醍醐村となった。1954年(昭和29年)、他の村とともに寒河江町と合併して寒河江市の一部となっている。
アクセス
JR奥羽本線天童駅から車25分。
JR左沢線羽前高松駅から徒歩20分、寒河江駅から車12分。
山形自動車道寒河江ICから車15分。
山形空港から車20分。
山交バス慈恩寺口バス停から徒歩20分。
2024年02月26日
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