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2014年07月15日

梅雨ただ中の奈良盆地(3)「法隆寺プラスあれこれ」

b.さて、法輪寺へ来たし、次はいよいよ斑鳩(イカルガ)の本命、国内初の世界文化遺産、法隆寺ですが、

a.ヒトが多くて苦手や、

b.そんな親方も愛してやまないのは、ヒトもまばらな西大門のあたり、

a.そこは確かに素晴らしい、

b.どうやって行くんすか、こっからやと一番遠いけど、

a.境内にそって味わい深い土壁が続いてて、その小道もエエけど、そこを道なりになぞるだけ、

b.なるほどここかあ、五重塔と夢殿をむすぶ観光ルートから完全にはずれてるし、別のお寺みたいな静けさ、

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a.オマケに西大門からつづく町並みが昔の風情を留(トド)めてとても良い、

b.はるか昔からここに住みついて、法隆寺関連の仕事に就(ツ)いてるんかなあ、

a.ちょっと境内に入ってみようか、

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b.北に向かって登る石段の上に大きなお堂が、

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a.八角形の西円堂、すぐ横には親鸞上人がふた月滞在して勉強された円明院、

b.そんなお寺ありませんよ、

a.今は無き小さき寺院や、加えて昔あった案内板も無くなって、今じゃほとんど霧の中、

真宗大谷派 茨木別院のホームページから
http://ibarakibetsuin.or.jp/3-kotoba/tokusyu/2010-09-1.html

寛永年中法隆寺古図より
http://www.nihonnotoba3.sakura.ne.jp/2013to/horyuji_sin1.jpg

b.法隆寺の西に広がる歴史的集落を抜けると、急に視界が開けて、UFOみたいな円形の盛土(モリツチ)が、これは間違いなく古墳ですね、

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a.藤ノ木古墳、法隆寺の記録には「ミササキ山」とあるらしい、長い発掘調査も終わってステキな公園に生まれ変わってる、

藤ノ木古墳の解説
http://www4.kcn.ne.jp/~ikaru-i/spot2/huzinokikohunn.html

b.しかし、ここへ来て再び過密な住宅街が、世界文化遺産に向かって迫ってきてます、

a.そんな住宅街の住民が日々のウォーキングに活用するのがこの竜田公園、

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b.「たつた」って、あの竜田揚げのタツタ?

a.紅葉の名所なんで、赤味を帯びたら、とりあえず竜田ってことらしい、

「しょうゆ入り 赤みの衣(コロモ) 竜田あげ」、我ながらそのまんまや、

b.観光客はまったく居ないっすね、

a.せっかくこれだけまとまった景観やのにもったいない、

b.法隆寺からはちょっと離れてるし、レンタサイクルなら、自転車道にそって法輪寺の方へ行くしなあ、

a.さあ、この竜田川にそって大和(ヤマト)川へ出てみよう、

b.大和川からは?

a.川ぞいに少し進んで橋を渡り、西名阪道をくぐれば自転車道が南へずっと延びてる、

b.ちょっと振り返っていいすか、

a.なんや、

b.あれがずっと裾野を走ってきた矢田丘陵の端っこか、

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a.法隆寺は右端あたりか、

b.なんて事ない、ありふれた景色やけど、世界も注目するすごい場所なんやなあ、

a.それもそうやけど、そろそろ川底の雑草も刈り取らんとなあ、

b.ああ、そういう見方もできるか、

a.これもありふれた見晴らしやけど、大阪方面へ流れていく大和川、

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b.正面の山並みは?

a.生駒(イコマ)山地、この川から北へ30キロ続いてるそうや、

b.主峰(シュホウ )、生駒山(イコマヤマ)のふもとには生駒市って自治体があるくらいやし、きっと重要な山並みなんすね、

a.そりゃそうや、そもそもこの山並がないと、奈良と大阪がくっついてまうしな、

「奈良ナニワ 生駒はずすと くっつくで」、

b.このサイクリングロードもそろそろ草刈りの時期ですね、

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a.かれこれ正午も20分過ぎか、

b.大和川を渡って走り始めたけど、そろそろ昼めしにしませんか、

a.そうやなあ、休憩のタイミングをはずしてもうた、竜田公園でゆっくりメシにすれば良かったんや、

b.どっかにコンビニないかなあ、

a.そうこうするうちに踏切、

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b.何線かな、

a.近鉄田原本(タワラモト)線、もっぱら地域住民が乗り降りする地味な路線や、

b.しかし、この自転車道って、何かとりとめない感じがしませんか、

a.とりとめないか、確かにこれという見所も無いし単調なコースやなあ、

b.大和川と分かれてしばらくは変化もあるけど、第2浄化センターを過ぎて、葛城(カツラギ)川にそって進み出すと、同じような景色が続いて道もまっすぐばかりなり、

a.しかし、専用道でクルマが入ってこないのはありがたい、それにもうちょっと進むと、右手から葛城山も迫ってきてオモロなるはず、

b.なわけで、飛鳥(アスカ)葛城(カツラギ)自転車道もここまでか、

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a.いや、自転車道はここで終わりやなくて、向きを東に変えて、明日香村の石舞台古墳へ続いてる、

b.じゃあ我々は、

a.ここで自転車道と分かれて、葛城川上流へ向かってさらに南下しよう、





2014年07月03日

梅雨ただ中の奈良盆地(2)「矢田丘陵を斑鳩(イカルガ)へ」

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a.「このヒモをツルがつたってナスになり」、我ながらそのまんまやな、

b.しかし、矢田丘陵といってもけっこうな山ですね、

a.いちばん高い松尾山のあたりは300m越えてるしな、丘というより山、

b.手前のこの茂みは古墳すか、

a.さあ、このあたりは全部そんな風に見えるなあ、

b.明日香村や山辺(ヤマノベ)の道にもこんな景色があったような、

a.明日香村も山辺の道もここと同じように丘陵のゆるやかな斜面に広がってたなあ、

b.畑の中に道しるべが、

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a.お地蔵さんで有名な矢田寺はこっちか、

b.行ってみますか、アジサイがきれいなことでも有名じゃ、

a.ホンマや、ちょうどアジサイの見頃やろうけど、それにあわせて人もそうとう多いし、特別に拝観料300円取られるし、貧乏やし、ここは遠慮しとこう、

b.ため池の高台から南が見晴らせます、

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a.前方のこんもりした森も古墳に見えるなあ、

「斑鳩(イカルガ)の あらゆる森が 古墳かな」、

b.中央左よりに何か見えてますね、大きなスポーツ施設かな、

a.大和郡山(ヤマトコオリヤマ)市の総合公園、見えてるのは体育館の大きな屋根と市営球場の照明やな、

b.そこから右手へ向かって、こちらも公園みたいな、

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a.ため池を一周できるように遊歩道が整備されてる、

b.自然の地形をそのまま利用した公園か、高台にあるせいか明るくて爽やかやなあ、

a.奈良盆地の山々を背景に住宅密集地がここへもせまって来てる、

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b.じわじわ、せまってますね、家々の屋根が、

a.手前のほこらはお地蔵さまかなあ、

b.しまいに、ほこらを囲んで家が建つのか、お地蔵さまもちょっと心配ですね、

a.できるなら、広い見晴らしの中でのびのび暮らしたいやろなあ、

b.しかし、矢田丘陵の東の山すそって、観光ルートやないけど、さりげなく良い道が続きますね、

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a.高台を進むから見晴らしもいいし、古代から人が住んでるせいか、まろやかな人間よりの自然を感じるなあ、

b.人間よりの自然ってどういうことすか、

a.古墳時代から人が住んでるようなエリアは、畑を耕したりして人がそうとう関わってるから、自然が人間寄りにマイルドになってるんや、

b.住宅街の横に見えてんのは学校かなあ、

a.矢田南小学校の校舎やろ、地図で見るとすぐとなりは幼稚園やし、この道のすぐ先にも高校が、

b.奈良学園高校か、

a.でもって、これは奈良社会福祉軽費老人ホーム、

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b.どんだけ人口密集地か分かりますね、

a.しかし、軽費老人ホームって初めて聞くなあ、早速ウェブで調べてくれたまえ、

b.60歳以上で介護不要な高齢者が低額で暮らせる施設のようです、食事付き、自炊型、車イス対応の3タイプがあるそうで、

a.なるへそ、

b.ここからはゴルフ場の中を進むんすね、

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a.うむ、法隆寺カントリークラブの中をぬって心地よく走れる細道が続いてる、クルマもめったに来ないし、

b.ここを抜けるといよいよ法隆寺ですか、

a.いや、ゴルフ場を抜けて最初に登場するのは法隆寺とちがって法輪寺のほうや、

b.どおりでこじんまりしてら、

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「ムラサキの 夏の茂みや 法輪寺」、

a.「集落へ 溶けこむような 小寺かな」、

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b.この集落がまた雰囲気抜群ですね、ここもまるで寺の一部みたいな、

a.そういえば聖徳太子ゆかりの井戸が集落の中にあったような、

a.とうとう、紛れもない斑鳩(イカルガ)の地にやってきた、さすがにエエとこやなあ、




2014年06月28日

梅雨ただ中の奈良盆地(1)「大和西大寺駅から矢田丘陵へ」

b.親方、今度はどこ行きやしょう、

a.そうやなあ、丹波も近江も行ったしなあ、

b.斑鳩(イカルガ)は、ここんとこ御無沙汰ですが、

a.奈良か、

b.斑鳩(イカルガ)って奈良のことなんすか、

a.奈良よりずっとせまいんちゃうか、法隆寺のあたり、

b.奈良は苦手なんすか、

a.輪行はじめた最初のころはあちこち巡ってたんやけど、けっきょくあまりにクルマが多いでなあ、心静かに走れる道がそうとう限られてくるんや、

b.じゃあ、今回もその限られたコースに乗っかって行きやしょう、

a.そうと決まればさっそく出陣のしたくをせい、京都駅から西へふたつ目の新駅、桂川駅から輪行ぜよ、

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b.この新駅周辺、かつてキリンビールが所有した広大な敷地が再開発されて、新しい町が生まれつつあります、

a.JRの駅まで作るだけあって、このエリアにかける人々の熱意が伝わってくる、

b.さて、京都駅から近鉄特急に乗り換えてわずか30分、近鉄大和(ヤマト)西大寺駅からの出発になりますが、簡単な旅の説明を、

a.時は2009年7月11日、自転車はジェイミスの旅の自転車オーロラ号の2005年モデル。カメラはオリンパスのアウトドアカメラ、ミュー1050SW、

b.ところで、近鉄の大和(ヤマト)西大寺駅ってどんな駅なんすか、

a.大仏様で有名な奈良公園と大阪を最短ルートで結ぶX軸と、京のみやことサクラの名所、吉野を最短で結ぶY軸、その交点置する重要な駅じゃ、

b.どおりでハンパなく人や車が行かってる、

a.駅前スペースもセマイから、輪行袋から自転車取り出して組み始めてもざわざわして落ち着かん、この辺からもう苦手意識が、

b.じゃあ一気にこのあたりは端折り(ハショリ=省略し)ますか、

a.駅名にもなってる名刹・西大寺は、広くて静かな境内が素晴らしいけど、今回は寄らんと先へ進もう、

b.で、いきなり池に架かる細い橋にやって来ましたが、

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a.桂川駅から80分後の10:40、蛙股(カエルマタ)池っていう変わった名の池にトオチャコ、

b.なんで蛙股(カエルマタ)って言うんすか、

a.調べてくれたまえ、

b.日本建築に、そういう名の部材があるそうです、

a.ああこれが「蛙股」って言うんか、そういえば池の形に似てんなあ、

kaerumata-asukadera.jpg
(グーグル画像検索より)

b.しかし、もっと驚くべきは、このありふれた池が西暦100年ごろに完成した日本最古のダムという点、

蛙股池の解説

http://www.nantokanko.jp/mytown2010026.html


a.ほう、そんないわれのある池やったんか、でも、ダムとため池、どうちがうんや、人工のため池ならここ以外でも太古から作られてるんとちゃうか、

b.確かにそうですねえ、ただ日本書紀にハッキリ記載されてる点が重要なんやないすか、

a.そう考えると、この橋からの眺めも何やら味わい深く感じられるなあ、

「蛙股(カエルマタ) 国内最古の ダムなんか」、

b.しかし、大和西大寺の駅からずっと家だらけです、

a.丘という丘がすべて宅地やさけえなあ、木が生えてる方が珍しいくらいや、

b.たまに見えてくる森はゴルフ場のそれやし、人工の極致っすね、

a.公園の木陰(コカゲ)で休憩しよう、ミドリがないせいか、ちょっと走っただけやのにダルなってきた、
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b.ここまで西に向かって走ってきましたが、こっからずっと南向きですね、

a.うむ、近鉄沿線の過密な住宅街ともそろそろお別れや、こっから一気に田舎の景色になるでよ、

b.ほんまや、すぐ近くなのにえらい遠くへ来たみたいや、

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a.右手に見えてきた山並みが矢田丘陵、この先っぽが「柿食えば」の法隆寺でござる、

b.じゃあいよいよ斑鳩(イカルガ)か、

a.この辺は、宅地開発が制限されてんのか知らんけど、山すそに昔ながらの素朴な風景がつづく貴重なエリア、

b.ゲゲゲの鬼太郎が出てきそうな竹やぶも、

「鬼太郎が 矢田の竹やぶ 抜けて来る」、
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2014年06月22日

山あり谷ありびわ湖から(6)「三つ目の峠越えれば家路かな」

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a.珍しいなあ、バイクのツーリング、オマケに原付まで入れた色んなタイプが10台以上も、

b.でも先ほどのがけ崩れじゃ、

a.教えてあげたいけど、音もスピードも出てるし、まあいいか、

b.やっぱ引き返してきました、自転車と違って持って歩くわけにはいかないようです、

a.峠もずいぶん下ったあたりやし、なおさら気の毒や、

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b.さて、この峠道も今回で何度目になるのか、

a.最初の新鮮さは薄れたけど、代わりにずいぶん馴染(ナジ)んできた、居心地(イゴコチ)のいい店に居るような、くつろいだ気分、

b.しかし、びわ湖の見晴らしは無理みたいっす、

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a.ギリギリこれかあ、梅雨のただ中ならまあ仕方ないか、それよりここで休憩や、なんかこの木のそばがえらい気に入ったし、

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b.なんか山寺が建ちそうな風情ですね、見晴らし風通しもいいし、明るく乾いていて、

a.何寺にしようか、

b.寺の名前っすか、下の沢の流れは鵜川(ウカワ)というようなんで、鵜川寺はどうすか、

a.「うかわでら」、それか「うかわじ」か、ありふれてるけど、とりあえずそれでいこう、

b.って、建てるんすか、お寺を、

a.心の中にもう建っておるよ、白木で立派なんが、

「空想の 山寺建てて 腰かける」、

b.でかいアリたちが食べ物に反応して集まってきた、

a.お寺を建てるの大変やったからなあ、腹が減ってるんや、

b.アリが建てたんすか、

a.働きアリがなあ、空想の寺を建てたんや、

b.しかし、ここは樹木が少ないせいか明朗な雰囲気ですね、

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a.それを知ってか、ときおり国道からクルマが登ってきて休憩してるな、何するでもなく、

b.いやホンマ、じっとしてるだけで気分いいっす、

a.とはいえ、そろそろ降りようか、

b.ずっと居たいような気分ですけど、帰りの電車もありますしね、

a.これで林道も終わりか、

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b.これが行きも乗ったJR湖西(コセイ)線か、帰りはどの駅から、

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a.北小松が最寄(モヨ)りやけど、まだ2時過ぎやし、ひとつ先の近江舞子駅まで行こう、

b.そのこころは、

a.始発の京都行きがあるし、内湖(ナイコ=びわ湖のオマケ湖)もあってながめもいい、それから、

b.それから、

a.北小松の歴史的集落が素晴らしい、この路地はホンマ気持ちいい、写真になりにくいけど、

b.たしかに写真は一枚もありません、

a.短い距離やし、あまりに家が近いんで写真も撮りづらい、でも、どことなく漁村の空気が漂ってて、クルマも入れないような路地が濃い味でとても良い、

b.というわけで、何だかんだありましたけど、きょうやっと耳にするびわ湖の波音、

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a.いいねえ、この音いつ聴いても、

b.左手の少し黒いんが沖島で、

a.右手の山並みの向こうに近江八幡市、あちらも風光明媚な遊び場ビバ、はあービバノンノン、

b.そして比良(ヒラ)の山並みを背景に初老の男性が釣り糸を垂れる近江舞子の内湖(ナイコ)に到着です、

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a.舞子(マイコ)の内湖(ナイコ)か、とうとう旅もおわりか、今回はえらい時間かかったような気分や、まだ3時前なのに、

b.わずかふた駅先の近江高島からスタートしたのがちょうど9時ごろか、やっぱり峠を三つも越えると時間あたりの充実感が全然ちゃいますね、

a.少なく見積もっても、平地より三倍は濃い味やさけえなあ、

b.濃縮三倍か、ヤマキのめんつゆみたいっすね、

「ドラマやな 濃縮三倍 峠道」、




2014年06月17日

山あり谷ありびわ湖から(5)「闇穴を抜けて見渡す棚田かな」

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b.しかし、ここまで登って引き返すわけにも、

a.当然や、じゃあともかく足、踏み入れてみよう、暗黒のその闇の中へ、

b.たぶん少し歩いていけば、出口側が見えてくるし、そうしたら歩く方向も分かるんじゃ、

a.けれども、なんやこの冷気は、冷たい水の中に全身つかってるみたいや、

b.あきまへん、いきなり寒くて心臓止まりそうです、

a.見えない地面はでも、なめらかやな、

b.だけど、これだけ真っ暗やと、どんな落とし穴があっても分かりません、

a.っていうか、進行方向もわからへんし、左手で壁を触りながら進もう、

b.ああ、ここで死ぬんかもしれませんね、俺たち、

a.あれ、クルマの音ちゃうか、

b.ああ、ありがたい、早くそのヘッドライトでわれわれをまぶしく照らしてくんしゃい、

a.ああ、やっと見えてきた、出口の明かりも、

b.これでなんとか生き延びられそうです、

a.なんと出口の空気はやわらかく暖かいことやろう、

b.明るく暖かく、オマケにこの見晴らし、

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a.あれが日本棚田100選のひとつ、畑(ハタ)の棚田でござる、

b.遠く右奥にもチラッと集落が、

a.あすこまでずっと下って、集落ぞいに右へ登っていくと、本日最後の峠道、コレを越えたら琵琶湖に出られるし、オレらを乗せて帰るありがたいJRもあるでよ、

b.しかし、わざわざそんな事せんでも、このまま出発地点の近江高島駅までゆるやかに下って行けるんじゃ、

a.それもそうやけど、やっぱり峠はドラマがあるしなあ、今度はいつ来られるかも分からんし、

b.まあ確かに、この峠からの見晴らしも、映画のワンシーンみたいやけど、

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a.それにしても、登ってきて良かったなあ、怖いトンネルやったけど、

b.親方、YouTubeにもありやしたぜ、素晴らしい棚田の動画、



a.ほんまや、静止画動かしてんのか思たら、畑仕事のお婆ちゃん動いてんで、どんだけ静かな村なんや、

b.じゃあ、ずんずん降りて行きましょうか、

a.もう少しこの見晴らしのまま走りたいけど、これだけは何ともならへんしなあ、もったいないけど降りようか、

b.シカやイノシシやサルが畑を荒らすから、この道から棚田へは防護フェンスで、直接入れませんね、一回降りてからやないと、

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a.そりゃ残念やなあ、もっと間近で見たかったけど、登り返す元気はないしなあ、

b.じゃあ、この辺でひと休みしますか、

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a.朽ちた木からまた新緑が芽吹いてる、ってことは朽ちて無いんか、見かけほど、

「朽ちたかと 思えば芽吹く 木のチカラ」、

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b.さあ、とりあえずこの橋で下るだけ下ってしまいました、あとはじわじわ登るだけ、

a.最初は集落内走行か、けっこうな登り坂やけど、お寺もあるし、歴史を感じるなあ、

b.今度の峠はどれほど登るんすか、

a.登りはじめとなる鹿ヶ瀬橋のバス停が標高224m、峠のピークが549m、で、下った先、びわ湖ぞいを進む国道161号線が88m、

b.じゃあずいぶん下り多目でお得やなあ、こりゃありがたい、

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a.集落を抜けていよいよ林道へ突入、と思ったら今度はがけ崩れかい、

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b.今回は巻き起こりますねえ、なにかと、

a.最近の雨は降り方エグいしなあ、計算外のことが起こるんやなあ、

b.でもギリギリすり抜けられて良かった、もう何もないことを祈るばかりっす、

a.アジサイのお寺から、こいで登って20分、今度は遠くに畑(ハタ)の棚田が見えるはず、

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b.こうやして眺めて初めて分かったけど、今登ってきた手前の集落もけっこう棚田やったんすね、

a.見るのは良いけど、暮らすのは大変そうやなあ、高齢化もそうとう進んでるし、

「老いるほど ひときわえぐい 棚田かな」、



2014年06月09日

山あり谷ありびわ湖から(4)「安曇川から峠道へ」

a.さあ、上流に向かってサイクリングロードを進んで行こう、

b.残念ですが道もここまで、安曇川(アドガワ)上流へ向かうサイクリングロードはもうありません、

a.なんと、わずかここまでかい、山も雪も深いから自転車乗るヒト居てないんか、

b.どうしましょう、

a.交通量はあまりないけど、そんでも国道は走りたくないしなあ、対岸の細い道を行こう、

b.いや無理です、これもすぐ国道に合流してるし、谷が狭(セバ)まってもう選択肢がありましぇん、

a.しゃあないなあ、じゃあ死を覚悟して、携帯片手運転のドライバーと国道を併走しよう、

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b.ところで、国道と関係あんのか、道べりに見たことないほど立派な四阿(アズマヤ)が、

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a.きっと雪の重みに耐えられるような作りなんやなあ、四阿(アズマヤ)というより壁のない頑丈な山小屋みたいや、誰も居ないしちょっと休憩や、

b.ところで、我々はどこへ向かってるんすか、

a.もうじき左手に林道の入り口があるはず、それを登ってまた峠を越えるんや、

b.じゃあまた元のエリアへもどるんすか、せっかく峠を越えて来たってのに、

a.用事で走るわけやなし、走る道すべて回り道みたいなもんや、

「好きで行く 道はおおかた 回り道」、

b.なるほどねえ、こりゃ好きやないと、ただの拷問や、

a.しかし、分からへんなあ、どこが林道の入口や、

b.使い込まれた木製のグリップが、地味かっこよくすりへったクワをにぎる、そこのお婆さんに聞いてみましょう、

a.ああ、やっぱりコレでええんか、集落の道かあ思たけど、

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b.いきなりスゴい水量の渓流ときつい坂のお出迎えっす、

a.でも、意外と路面はアスファルトでキレイやなあ、道幅もそれなりにあるし、

b.さいきん、この手の林道が増えてますね、

a.ちょっと前まで林道って言うと土の道が相場やったけどなあ、

b.さあ、登っていきましょうか、峠までの高低差はどれほどなんすか、

a.さっきと同様に今回もトンネル仕立ての峠、登りはじめの国道からトンネルの手前まで、高低差283m、けっこうあんなあ、数字にしなきゃよかった、

b.ここも杉の密集地帯ですね、オマケにかなりせまくてけわしい谷、

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a.こんだけ森が深いと汗冷えで肌寒い、

b.しかし快適な道ですね、当然ながらクルマは滅多に来ないし、

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a.さあこっからが本番や、スイッチバックできつい坂に入るで、

b.スイッチバックのおかげで、今来た安曇川(アドガワ)やふもとの村が少し見渡せます、

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a.いっつも感じる事やけど、のぼり坂はちょっとの時間で景色が劇的に変わって楽しい、

b.ふもとからわずか10分か、

a.コレがあるから峠はやめられんなあ、

b.そして7分後、ふもとの村も見えないほど高くなりました、

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a.こんな深い谷を登って来たんか、俺らもやるなあ、

b.しかし杉がびっしりですね、急斜面に、

a.なんかクラクラすんなあ、見慣れない山の険(ケワ)しさに、

b.登山なら、遠くに見える尾根づたいにテントかついで歩くんでしょうね、山で1〜2泊とかしながら、

a.ちょっと憧(アコガ)れるなあ、でもその日のうちに家でゆっくりすんのも安楽やしなあ、

b.乙女が池じゃ満開だったアジサイも、まだほとんどつぼみのまんま、

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a.スイッチバックを抜けたら、ずいぶんラクやなあ、

b.ここなんかちょっと下ってますぜ、親方、と思ったらすぐ登り始めたけど、

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a.地図やと昔は左手のルートで越えてたんやな、トンネルが無い分100mほど高い峠道になってる、

b.ああ、ちらっと見えてますね、土の道みたいなんが、もちろん我々はトンネルですよね、

a.そうなんやけど、なんか変やで、このトンネル、明かりが無いんか、

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b.スイッチとかあるんじゃないすか、通るときだけ点(ツ)けるような、

a.いや見当たらんなあ、それに中でカーブしてて、出口も見えへんし、ほんとうの真っ暗闇、

b.どうしましょう、しんどいけど旧道で山越えしますか、

a.770m真っ暗闇のトンネルか、小さい点滅のLEDじゃ役に立たんし、クルマは来ないし、気味悪いなあ、

b.っていうか、心底怖いっす、コトリとも音がしない、

a.やっと登って、ホッとしたら今度は暗闇トンネルかい、かなわんなあ(=まいったなあ)、俺らの人生もここまでかもな、




2014年06月04日

山あり谷ありびわ湖から(3)「峠から安曇川へ」

a.峠のトンネルを前に一句、「トンネルを 抜けて朽木(クツキ)へ 下りっぱ」、

b.ちょっと待って下さい、クルマから降りて誰かこっちへやって来ます。工事関係者かなあ、パリっとした作業服姿の中年男性、

a.なるほど、さすが地元住民の情報はきめ細かい、オジサンの話によると、びわ湖のまん中に「沖の白石」っていう小島というか、岩礁(ガンショウ)があるそうで、それを陸地から確認できる貴重な峠らしい、

b.小さい岩場やから、岸辺からは見えないんすね、

a.でも、鳥たちや船乗りには有名な岩場だそうで、格好の休憩ポイントになってるらしい、

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(グーグル画像検索から、お借りしました。)

「伝え聞く 沖の白石 もやん中」、

b.じゃあ、そろそろ先へ進みますか、ちょっとだけ気味悪いこのトンネル抜けて、

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a.便利でありがたいトンネルやけど、確かにちょっと怖い、神隠しに逢(ア)いそうや、

b.聞こえるはずのない電車の音とかしたら、神隠しの前兆なんで惑わされないよう気をつけて下さい、

a.だいじょうぶ、電車の音は聞こえなかった、で、これが峠のスキー場か、左手の斜面にリフトが見えてら、

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b.当然ながら誰も居ませんね、草刈り機の音が遠くからするだけ、

a.クルマは来ない、そして広くなめらかな道、さあふもとの村まで300mほど一気に下るボーナスタイムや、

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b.しかし、これほどトンネルの前後で路面が変わるのも珍しい、

a.ふもとにの国道は京都に直結してるし、そんでやな、

b.もはや土木というよりアートに近い法面(ノリメン)工事、かっこいいなあ、

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a.ここも杉だらけで迫力あんなあ、一本ずつヒトが植えたんかなあ、

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b.わずか10分でふもとの村へ降りてしまいました、ちなみに(=付け加えて言うと)、武曽(ムソ)横山の村から峠までは登って30分ちょっとでした、

a.で、時刻は11時、近江高島の駅から約2時間、広い谷を流れる広い川、

P6270417.jpg

b.河川敷にクルマ乗り入れて、おおぜい釣りしてます、なんかのイベントかな、

P6270418.jpg

a.右手の堤防は自転車道か、スッキリして走りやすそうや、

b.これがびわ湖西部を代表する河川、安曇川(アドガワ)です、地図によれば、こっから右へ直角に曲がって、広い平野部からびわ湖に注いでます、

a.源流はどの辺かなあ、

b.鞍馬と大原を隔てる百井(モモイ)峠あたりです、

a.じゃあこの国道と同じ谷を流れてるんか、

b.しかし、なに釣ってんのかなあ、

a.安曇川(アドガワ)朽木(クツキ)漁業協同組合のホームページによれば、これはアユ釣りでござるな、6月末にアユ釣りが解禁になるんで、

b.それで、解禁日を待ちかねた釣り人たちが集まってるんか、

a.交通アクセスもいいし、なによりこの景観が素晴らしい、びわ湖もすぐそこやし、

b.自転車道が橋を渡って上流へ続いてるようです、

P6270419.jpg

a.じゃあそれで上流へ進もう、

b.釣り仲間はあんな大勢なのに、自転車仲間は見かけないっす、

a.チャリンコは解禁日とか無いしな、

b.ふりかえると、さっき渡った橋がもうあんな遠くに、

P6270420.jpg

a.あの橋の左手に歴史ある朽木(クツキ)の村が広がってるはず、

b.引き返しますか、

a.国道わたんのも(=渡るのも)おっくうやし、このまま行こか、

b.そういえば職場の同僚に、ここ朽木(クツキ)で生まれたオジサンが居ましたね、

a.雪深い地方なんで、子供のころは自分たちでスキーを作って遊んだり、雪に付いた足跡をたどって野ウサギを捕まえたりしてたそうや、

b.文字通り、「ウサギ追いしかの山」やないすか、

a.ほんまやなあ、歌うか、YouTubeにカラオケバージョンまであんで(=あるぞ)、






2014年05月31日

山あり谷ありびわ湖から(2)「武曽(ムソ)横山」

b.さて、乙女が池をぐるっと一巡(ヒトメグ)りしたし、そろそろ自転車に乗って移動しましょうか、

a.池のほとりで30分もゆっくりしてたんか、楽しい時間はあっちゅうま(あっというま)やな、

b.どう進みましょう、

a.サイクリングロードがJR湖西(コセイ)線の高架にそって伸びてたような、ちょっと味気ない道やけど、迷わんからこんでええ(=これでいい)、

b.右手の畑の中にぽつんと、そこだけえらくスタイリッシュな建造物が、

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a.右は図書館、左は全国的にも響きが良い音楽ホール、

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b.文化的ですねえ、周囲が広々した田園やし、なおさらステキに見えるなあ、

a.この図書館と音楽ホールで育った子供たちが、日本を代表する芸術家になってもまったく不思議やないな、

b.バブル景気の産物とはいえ、そんな勢いを感じます、

a.でもって、我々のほうはJRと分かれて左折、県道295号線に乗って山へ向かおう、

P6270398.jpg

b.「武曽横山」ってひなびた集落、なんて読むんかなあ、

a.「むそよこやま」っていうらしい、

b.これが最後の集落、こっから先は孤独な山道に入ります、

a.土砂崩れでなきゃええけど、

b.この畑清商店さんがたぶん最後のお店、そう思うと、この色あせた門灯までとてもありがたいような、

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a.雪の深い夜、凍えながら峠を越えて、やっとの思いでこの門灯にたどりついたら、きっと泣いてまうな、緊張がほどけて、

「雪の夜 ふもとで光る 畑清(ハタキヨシ)」、

b.そんな寒い夜は、サービスでおでんもやってて欲しいな、

a.そんじゃあ、武曽(ムソ)横山の村をあとにすっか、

b.真っ昼間なのになにやら心細いっす、

a.初めての道はいつも緊張すんなあ、

b.あの山を越えるんすか、

P6270399.jpg

a.たぶん、もっと右手に低い峠があって、峠のトンネルを抜ければスキー場のはず、

b.これで県道なんすか、人っ子ひとり通りませんけど、

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a.こういうところ好きなほうやけど、さすがにちょっと寂しいなあ、京都近辺やとこんな場所でも人気(ヒトケ)を感じるけど、それがまったくない、

b.やっぱり雪が深いせいなんすか、

a.さあ、どうなんやろ、でも、ガードレールのこんなサビは雪深くないとありえへんしなあ、

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b.冬のあいだじゅう、この上に雪が積もったままなんか、

a.たぶん、

b.その雪が人や動物の気配まで吸い取ってしまうんですか、

a.さあ、それ以上のことは蟲師(ムシシ)のギンコさんに聞いてみんと分からへんなあ、

b.いよいよ山ん中に入ります、

a.意外に杉が多いな、京都の山ん中みたいや、

P6270402.jpg

b.がけ崩れもぎりぎりセーフ、路肩の斜面にブルーシートをかけてるだけで、道は通れますねえ、

a.よかった、ここまで来たら気分的に引き返せんし、

b.誰かが遠くで山仕事してます、草刈りか、いやチェーンソーの音やなあ、

a.しかし、ニッポンクネクネ大賞やな、この県道、

P6270405.jpg

b.でも、クネクネするうちに稜線(リョウセン=山の背骨のライン)が近づいて、ずいぶん明るくなってきました、

a.そろそろ峠か、

b.ふもとからどれくらい登ったんすか、

a.武曽(ムソ)横山の村が標高120m、峠のトンネル前で450mやし、330m登ったんか、けっこうあるなあ、ちなみに峠を下った朽木(クツキ)の集落も標高120m、

b.しかし、せっかく苦労して登ったのに、このモヤモヤはないっすね、

P6270406.jpg

a.「モヤモヤさまあ〜ず2(ツー)」を越えて、すでに3(スリー)やな、ああ、スッキリすみずみまで琵琶湖を見渡したかったなあ、

b.まあ天気には勝てないから、「雨じゃないだけ良いか」っていうお決まりのセリフで無理やり納得しましょう、

「雨やない そんだけましや とりあえず」、




2014年05月26日

山あり谷ありびわ湖から(1)「乙女が池」

a.沖縄地方はもう梅雨入りか、

b.5月も終わりになると、本州でもたまに湿っぽい風が吹きます、

a.きっと高気圧のふちを回って沖縄から吹いて来るんやなあ、梅雨の走りというか、前ぶれみたいな風が、

b.今回はどちらを旅しましょう、

a.丹波が続いたら、そろそろ近江の出番でござるな、

b.近江といっても広うございます、いずこへ参りましょう、

a.ふだんは琵琶湖も南が多いけど、今回は少し北の方まで足を伸ばそう、

b.びわ湖線と湖西線がありますが、

a.JR湖西線で近江高島駅へ向かおう、

b.では旅の日付とカメラ・自転車など簡単に、

a.2009年6月27日、京都駅から湖西線で近江高島駅まで輪行、自転車は気に入っていたけれど、どういうわけか、わずか三年でフレームが折れてしまった、ジェイミスのオーロラという旅の自転車、カメラは2014年現在でもまったく壊れてない、オリンパスのタフでコンパクトなデジカメ、ミュー1050SW、これって意外と地味良かったなあ、



b.それでは参りましょう、湖西線は京都府から滋賀県に入ると、進行方向右手に琵琶湖が広がって観光列車のような気分ですね、線路も高架で見晴らせるし、

a.これで窓ガラスがもっとキレイなら言うこと無いんやけど、まあもともと通勤電車やさけえなあ、

b.多忙な通勤客のみなさんにこそ、びわ湖の見晴らしが必要な気もしますが、

a.そういえば、左側のながめも良かったなあ、琵琶湖大橋で有名な堅田駅を過ぎると、そそり立つような比良山(ヒラサン)の山並みが続いて、登山装備の乗客も乗り降りする、

b.われわれは今回どんなコースをたどるんすか、

a.反時計回りに、山あり谷ありのコースをいちおう思い描いてるけど、

b.そういえば、昨年の6月14日〜18日のブログもこの辺を旅してました、

a.今回はそれよりもうひと山、内陸へ踏み込んでみよう、

b.それでは、ガリバーで有名な近江高島の駅前で、フレームにタイヤをはめて起動開始!

b.しかし、何回見ても異様な感じやなあ、駅前に立つ巨人のガリバー像、日本中がバブル景気に浮かれてた、その頃の遺産なのかなあ、写真とっときゃ良かった、

b.じゃあ、失礼してグーグル画像検索から他人様(ヒトサマ)の写真をお借りしましょう、

7519c5dd.jpg

a.この駅に降りたら絶対はずせないのが「乙女(オトメ)が池」、まずここをながめてから奥地へ進むことにしよう、

b.車窓からも細長く見えてたあの池か、太鼓(タイコ)橋もあったなあ、

a.細長いといえば、めったに写さないパノラマ写真で池を一枚、

P6270386.jpg
(クリックするとちょっとだけ大きくなります)

b.奥に家が連なって見える、

a.あのすぐ先は琵琶湖、細長いぎりぎりのエリアに国道と旧道が並走してる、

b.水だらけですね、

a.この池もびわ湖のオマケみたいな湖やし、ホンマ滋賀県は水の豊かなエリアやなあ、

b.そういえば、びわ湖の湖底からも水がわき出すとか、

a.そうらしいなあ、

「湖底から わき出す比良(ヒラ)の 清水かな」、

b.四阿(アズマヤ)に哀れな野良猫さんが、

a.野良ネコはひと目で分かるな、栄養が足りてないから、顔が鋭角三角形や、グレープフルーツ味のカロリーメイトしかないけど食うかなあ、

b.食べてますよ、よほど空腹なんすね、

a.ここは雪の深い地方やから、今のうちに何とかスポンサー見つかるとエエなあ、

「雪が降る そのころまでに 家猫(イエネコ)へ」、

b.なんかここだけで半日過ごせるほど、のんびりした良い場所ですね、

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a.山や谷、走るの止(よ)そうか、

b.どっちでもいいですけど、

a.まあとにかくここは自転車を降りてゆっくり歩こう、

「いい場所は 自転車おりて 歩こうよ」、

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b.右端のひときわ大きな屋根はお寺ですね、きっと、

a.江戸時代からこんな感じかなあ、

b.水草といいアジサイといい、水と空気が良いと、こうも色あざやかなんすね、

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a.誰が見るでもなくこんだけ咲きほこるんか、なんだかぜいたくやなあ、


2014年05月22日

奥深い丹波の森へ(5)「終着の園部駅へ」

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b.さて、篭坊(カゴボウ)温泉も素通りしたし、そろそろ帰りましょうか、

a.目的地の温泉を素通りとは、われわれもスカしちょる、

b.まあ、温泉については大勢の人たちが感想を語っているやろうし・・・

a.うむ、それもそうやな、ほなボチボチ帰路につきまひょか、

b.しかし、あの田んぼにこの村のヌシみたいな、人格を感じさせる樹木が、

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a.豊かな自然のせいか、あばら屋のさびたトタン屋根までステキやな、

b.コレも丹波マジックでせうか、

a.ところで、疲労もじわじわと溜まってきたおり、チミ(=君)には申し訳ないんやが、ひとつワガママを聞いてもらえんか、

b.なんすか、

a.われわれは、こっからUターンしてJR園部駅を目指すんやけど、まずは右手の山を越えねばならん、

b.県道12号線ならトンネルもあって便利ですけど、

a.それがいかん、便利なんはええ事やけど、そのおかげで交通量も多い、そこで、すこし遠回りになるが、ヒト気の途絶えた細道で峠を越えたいんや、

b.ああ、またすか、もう慣れっこになってしまいました、

a.県道37号線の途中から右手の細い谷へ入り、さらにクルマも走れんような細い道を登って峠を越えるんや、

b.高低差どれくらいあるんすか、

a.標高345mから登りはじめて、峠のてっぺんが461m、下った先が272mや、なんぼ登ってなんぼ下るんや、

b.ええと、116m登って、189m下ります、こっちから行く方が下りが多くてずいぶんお得ですねえ、

a.細道とはいってもぜんぶ舗装してあるから、それなりに走りやすい、それに何より、

b.何より?

a.雰囲気がすばらしい、歩いて峠を越えていた時代の雰囲気が今でも感じられる、

b.じゃあ行きますか、ぱったりヒト気の無くなった細道のさらにわき道に分け入って峠越えか、ちょっと怖いな、

a.このあたりはヒトよりも草木(クサキ)が主役やから失礼の無いように、

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b.たしかに、えらい伸び伸び生き生き育ってますね、名もない雑草まで、

a.道ばたのガードレールまで草木に食べられてしまいそうや、

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「草木(ソウモク)も ガードレールを 食べはじめ」、

b.それから33分が過ぎました、

a.峠はとうに越えて、最短距離というだけで国道にしぶしぶ付き合い、たどり着いたのは安田の大杉

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b.ここだけ見てると、すぐ横を通る国道の喧噪(ケンソウ=騒々しさ)がウソのような、

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a.推定樹齢700〜800年か、長生きしちょるのう、

b.すぐ横にコンビニもできたし、そんでやないすか、栄養がしっかり取れるし、

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a.買いに来るんか、この大杉がコンビニへ、そんなわけ無いやろ、

b.いや、そうとも限りません、大杉の弟子に小人みたいな妖精がいたら、ヒトに化けてさり気なくからあげクンやポテチやカレーパン買って、大杉に食べさせてるかも、

a.それは今オマエが食べたいもん、言うてるだけやろ、

b.いや、それならペプシネックスも頼みますよ、

a.大杉はペプシ飲まへんのか、

b.炭酸やカフェインは刺激が強すぎるとか言ってもっぱら雨水がいいそうです、根っこへ届くまでに地中で濾過されてまろやかになりますし、その辺は700歳といってもやっぱり樹木なんですね、

a.なるほど、妙に説得力あるなあ、じゃあ我々も大杉君といっしょにコンビニのあれこれ飲み食いして、もうええかげん草臥(クタビ)れてるし、次の天引(アマビキ)峠は素直に楽チントンネルを抜けて、終着の園部(ソノベ)駅へひたすら急ごう、

b.そうすね、峠の先に続く府道54号線も広くて滑らかなわりに、意外なほどクルマが少ないし、あとは楽勝です、

a.とはいえ、峠を抜けてからここを眺めずには居られん、一本で森のような八幡宮の御神木(ゴシンボク)をしばし振り返らせてくれたまえ、

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「一本で 森林みたいや 御神木」、

b.手前の趣ある茅葺き(カヤブキ)小屋も気になりますね、ここにも神様が住んでんのかなあ、

a.ああそうかも、すこし離れたほうが、大樹の枝振りとか全体像も愛(メ)でられるし、

b.そして、それから30分、府道54号線など広くなめらかでクルマも少ない道をすいすい進み、園部(ソノベ)の町へやって参りました、

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a.防災用のヘリポートも完備された公園の向こうは中学校か、

b.ええと、そうですね、南丹市立園部(ソノベ)中学校、

a.たしか、任天堂の立役者・宮本茂氏と自民党の影の総理・野中広務氏が共にこの町の出身やったなあ、

b.そのせいか、クルマもめったに来ない道まで恐ろしく幅広くなめらかです、

a.二人の偉人になんか共通点あんのかなあ、

b.さあ、活躍の場もぜんぜん違うし、どうなんすかねえ、

a.しかし、現代日本を代表するような二人やから、きっと共通点があるはずやろ、

b.じゃあ雨水が地中深くまでしみ込んで、まろやかになった地下水を飲んでるとか、

a.それは安田の大杉君やろ、それに、もしそうなら、今ごろ園部の全員が偉人になってるはずや、

b.まあ、その話はともかく、あとちょっとでJR園部駅なんで、そろそろ、

a.ホンマや、すっかり油断して話し込んでた、

b.駅に着いたら自転車を袋につめて、嵯峨嵐山駅までの30分間、人まかせの運転でウトウトしましょう、

a.うむ、園部(ソノベ)の駅なら確実に座れるし、漕()がないでも景色は流れるし、こんなありがたいことはない、






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