2014年06月22日
山あり谷ありびわ湖から(6)「三つ目の峠越えれば家路かな」
a.珍しいなあ、バイクのツーリング、オマケに原付まで入れた色んなタイプが10台以上も、
b.でも先ほどのがけ崩れじゃ、
a.教えてあげたいけど、音もスピードも出てるし、まあいいか、
b.やっぱ引き返してきました、自転車と違って持って歩くわけにはいかないようです、
a.峠もずいぶん下ったあたりやし、なおさら気の毒や、
b.さて、この峠道も今回で何度目になるのか、
a.最初の新鮮さは薄れたけど、代わりにずいぶん馴染(ナジ)んできた、居心地(イゴコチ)のいい店に居るような、くつろいだ気分、
b.しかし、びわ湖の見晴らしは無理みたいっす、
a.ギリギリこれかあ、梅雨のただ中ならまあ仕方ないか、それよりここで休憩や、なんかこの木のそばがえらい気に入ったし、
b.なんか山寺が建ちそうな風情ですね、見晴らし風通しもいいし、明るく乾いていて、
a.何寺にしようか、
b.寺の名前っすか、下の沢の流れは鵜川(ウカワ)というようなんで、鵜川寺はどうすか、
a.「うかわでら」、それか「うかわじ」か、ありふれてるけど、とりあえずそれでいこう、
b.って、建てるんすか、お寺を、
a.心の中にもう建っておるよ、白木で立派なんが、
「空想の 山寺建てて 腰かける」、
b.でかいアリたちが食べ物に反応して集まってきた、
a.お寺を建てるの大変やったからなあ、腹が減ってるんや、
b.アリが建てたんすか、
a.働きアリがなあ、空想の寺を建てたんや、
b.しかし、ここは樹木が少ないせいか明朗な雰囲気ですね、
a.それを知ってか、ときおり国道からクルマが登ってきて休憩してるな、何するでもなく、
b.いやホンマ、じっとしてるだけで気分いいっす、
a.とはいえ、そろそろ降りようか、
b.ずっと居たいような気分ですけど、帰りの電車もありますしね、
a.これで林道も終わりか、
b.これが行きも乗ったJR湖西(コセイ)線か、帰りはどの駅から、
a.北小松が最寄(モヨ)りやけど、まだ2時過ぎやし、ひとつ先の近江舞子駅まで行こう、
b.そのこころは、
a.始発の京都行きがあるし、内湖(ナイコ=びわ湖のオマケ湖)もあってながめもいい、それから、
b.それから、
a.北小松の歴史的集落が素晴らしい、この路地はホンマ気持ちいい、写真になりにくいけど、
b.たしかに写真は一枚もありません、
a.短い距離やし、あまりに家が近いんで写真も撮りづらい、でも、どことなく漁村の空気が漂ってて、クルマも入れないような路地が濃い味でとても良い、
b.というわけで、何だかんだありましたけど、きょうやっと耳にするびわ湖の波音、
a.いいねえ、この音いつ聴いても、
b.左手の少し黒いんが沖島で、
a.右手の山並みの向こうに近江八幡市、あちらも風光明媚な遊び場ビバ、はあービバノンノン、
b.そして比良(ヒラ)の山並みを背景に初老の男性が釣り糸を垂れる近江舞子の内湖(ナイコ)に到着です、
a.舞子(マイコ)の内湖(ナイコ)か、とうとう旅もおわりか、今回はえらい時間かかったような気分や、まだ3時前なのに、
b.わずかふた駅先の近江高島からスタートしたのがちょうど9時ごろか、やっぱり峠を三つも越えると時間あたりの充実感が全然ちゃいますね、
a.少なく見積もっても、平地より三倍は濃い味やさけえなあ、
b.濃縮三倍か、ヤマキのめんつゆみたいっすね、
「ドラマやな 濃縮三倍 峠道」、