a.さあ登ってくで、人生みたく(=みたいに)、
b.元気ええなあ、さっきまで寝不足とか言ってたのに、
a.この豊穣(ほうじょう=リッチ)な植物たちが光合成パワーをくれるんや、
b.しかしこの峠道、人っ子ひとり出会いませんね、
a.日影の部分はコケむして、バイクやクルマは滑りやすいし、道幅も無いしなあ、
b.しかし、今さら言うのも何やけど、わざわざ桜峠を越えないでも、手前の幹線道路そのまま南に進んだら直(ちょく)で大阪ですよね、
a.うむ、わしも最初はそう考えて、府道46号線で大阪府へ向かったんやけど、後半の雰囲気が悪いんで、一回でこりた、
b.一見良さそうな道に見えるけど、
a.じっさい走ってみないと分からない、その良い例のひとつ、
b.どこがイマイチなんすか、府道46号線、
a.採石場がらみでほこりっぽく、ダンプカーも多く、景観も荒れている、ただ、近年になって改良区間も出来たそうなんで、前よりはちょっとはましかもしれんけど、
b.なるへそ、そんで桜峠を越えてからも、このダラダラ坂を登らされてるんか、一体いつまで続くんすか、
a.桜峠を越えた地点が標高271m、わりと空いてる府道を5キロほど、途中一度だけアップダウンもあるけど、じわじわ登ってトンネル越えたら標高364m、ざっと100m近く登ることになる、そこから景色が一転するし、そこまでのしんぼうやな、
b.そうかなあ、その先また登りやないんすか、
a.そんな先の事を今から考えてたら、人生と一緒で何もかもイヤになるし、そこはあえて伏せておこうやないか、
b.でも、なんでこの坂、地味にしんどいんかなあ、それほど傾斜はきつくないけど、
a.クルマ用の曲線で道路を作ってるからやろ、
b.クルマ用の曲線?
a.時速40キロ程度で初めて快適に感じるようなゆるいカーブ、俺ら自転車乗りには、逆に見通しが良すぎて、つらく感じるんやないか、
b.なるほど、人生といっしょやも知れませんねえ、
a.そんな地味つらいゆる坂も、この樫田(カシダ)トンネルで終わりや、
b.トンネル抜けると、せまかった谷も見晴らしよく広がって、町と呼んでもいいようなまとまりある村が、ここ雰囲気良いっすね、
「学校と 郵便局で 町らしい」、
a.この樫田(カシダ)小学校を右に見て進むと府道6号線でクルマと共に大阪市街地へ、もちろん俺らはそっち方面じゃなく、途中から林道へと分け入ることになる、
b.しかし、ここはもう大阪府の最北端になるのか、
a.そうや、つまりほとんど大阪に到着してるようなもんや、
b.うまいこと言いくるめられて、きっとこれからきっつい林道登らされるんやろなあ、路面が荒れてないことを祈るばかりっす、
a.ワシもいま懸命にそれを祈っておる、
b.あんまりひどい道なら、勇気ある撤退(てったい=引き返し)をお願いしますよ、寝不足なんやし、
a.うむ、しかし、どうやらその必要はなさそうやな、
b.えっ、これが林道なんすか、イメージと全然違うけど、
a.我々の祈りが天に通じたようじゃ、
b.林道なのに、今までの道とまったく同等か、それ以上になめらか、
a.クルマが来ない分だけ、こっちの方が快適なくらいや、
b.これなら、ちょっときつい坂でも登ろうって気になりますね、
a.そうか、とうとうその気になってくれたか、
「平成の 林道なめらか 嘘のよう」、
b.きつい登りは最初に集中して、あとは割とゆるいっすね、
a.やっぱり標高500mあたりやと、それなりにからっとして涼しいなあ、
b.しかし、いったい自分らはどこにいるんでしょうか、さっぱり感覚がつかめません、
a.そうやなあ、目印になる大きな山もないし、この辺は今回が初めてやし、なおさらや、
b.あと、ハッキリ感じるのは、不法投棄の粗大ゴミ対策が徹底してること、
a.投げ捨てそうな危険個所はことごとくデカい柵(サク)がブロックして、今までのどこよりも徹底してるなあ、
b.これなら、投げ捨てる側もこれ以上は汚さないような気持ちになるやも、
a.人口密集地の大阪やし、どこよりも被害が早く大きく現れたんやな、
「粗大ゴミ 片づきスッキ 林道や」、