a.たしか数年前、谷の北側を通る府道から、棚田の景色が遠くまで広がって見えた、
b.それ見に行きませんか、
a.それもええけど、今回はこっちの細道を試してみよう、もしかしたら府道にもどらんと、ずっと谷を降りられるかもしれない、
b.こんなところに、お地蔵様がひっそりと、
a.ということは、昔はこの道がメインやったかも、
b.「さえずりのみち」って大きな墨の字で書いてある、斜め切りの木目鮮やかな丸太に平仮名ばかりで堂々と・・・シンプルな丸太のベンチも良いなあ、峠も越えたし、ひと休みしましょう、
a.しかし、この道は村民のお散歩コースのような雰囲気、こんな味わい深い小道を散歩できるなんて幸せや、
b.ところで、この先のルートですけど、こっからいったん下ってまた登るんでしたね、
a.うむ、ここが標高330mで、いったん288mまで下ってから、じわじわと長い登りが続いてる、
b.どれくらい登るんすか、
a.大阪府豊能郡能勢町へ入るあたりがピークで609m、いったいなんぼ登ればええんや、
b.標高差321mです、けっこうきついなあ、
a.オマケにこんな風情のある道じゃなくって、クルマのために作られたような味気ない上り坂がしばらく続く、まあ交通量は少ないんで助かるけど・・・
b.こうなったら趣味というより修行ですね、
趣味以上 修行未満の 峠かな
a.せやし(=だから)、今のうちに美しい田植えの曲線をのんびり眺めていよう、
谷あいに みどりの波を 絵書(エガ)いてる
b.いかにも梅雨らしい湿り気を帯びた空気ですけど、山の香りがして実にすがすがしい、
a.やっぱりこの小道、大正解やったなあ、距離はぜんぜん稼(カセ)げないけど、逆にここへずっと居たいほど、
b.この村もまた、「ぼくの夏やすみ」仕様でした、
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梅雨が来て そろそろぼくの 夏休み
a.ああ、夏はいいなあ、
b.なんで夏が良いのでせうか(=しょうか)、
a.汗をかいて峠を越えて、風を受けて下っても、涼しいばかりで心地良いからなあ、
b.小川にそってクリの木が並んでます、
a.そういえば、クリも丹波の名産か、
b.秋になると、よく道の駅なんかで黒豆と一緒に並んでます、
黒豆の となりにならぶ 丹波栗
a.これは珍しいなあ、手前の波打つような草はなんやろ、
b.苗木(ナエギ)が等間隔で並んでるし、なにか実を付けるんかなあ、
a.まえにも丹波の山里で同じようなの見かけたけど、明るくて美しいなあ、
b.さて、まことに残念ですが、さえずりの道もついに終わってしまい、府道へと合流しました、ここからしばらくは峠へ向けて走りに徹しましょう、
a.そやな、しかし、だんだん登って行くにつれて、昔の風情(フゼイ)をとどめる集落が現れてきてうれしいなあ、
b.しかし、それと同時に坂はますますきびしさを増して、
a.ホンマや、あっという間にこんな登ってんで、
b.左には見落としそうなほど慎(ツツ)ましい神社の鳥居が、
a.あんな神社にホンマの神様が居てそやなあ、
b.どんな神様ですか、ホンマの神様って、
a.さあ、オレらよりずっと高齢できっと小柄なんちゃう(=なんじゃないか)、
b.小人(コビト)ですか、
a.物静かな小人のオジイちゃんやないか、ようわからへんけど、
山深い 静かな森の 小人かな