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b.九月も中旬なら、まだ夏の雲にも出会えますねえ、
a.雲は夏やし気温は秋やし、なんかもうかった気分や、
b.このあたりは北山杉の産地なんすね、
a.岡山に引っ越して一年たつと、見慣れてた杉山もとても新鮮に感じるなあ、
b.岡山にはありませんねえ、こういう人工的な植林の景観はまったく、自然に生えてる松や広葉樹ばかりで、
a.なんか田植えを山に置き換えてやってるようにも見えるなあ、
「山肌に北山杉の田植えかな」、
b.ところで、持越(モチコシ)峠は目前でありますが、何をいったい持越(モチコシ)たんすか、
a.死者をこっち側へ持ち越したから、持越(モチコシ)峠と言われている、らしい、
b.なぜ、わざわざそんな大変な事を行ったんすか、
a.峠の向こう側の集落、雲ケ畑(クモガハタ)には鴨川の源流があって、鴨川は京の町をうるおし、とりわけ御所の横を流れるから、水質管理には最大限のきびしさが求められたようや、
「水守る村は葬儀もままならず」、
「息絶えたあとにもひとつ峠越え」、
b.ところで、いきなり土の道になりましたが、府道じゃないんすか、この峠道、
a.いや、これは持越(モチコシ)峠から南へ伸びてた脇道、先ほどの氷室神社のある集落までつながってるそうや、自転車は無理かもしれないけど、
b.じゃあ途中で引き返したんすか、
a.何か心ひかれる道やったんで、少し先まで走ってみた、
b.どうでした?
a.良い道がずっと続いてた、尾根づたいで明るく乾いてるし、土の道も荒れてなかった、
b.そんな道の途中からの見晴らしか、
a.峠をはさんで雲ケ畑(クモガハタ)の反対側にある真弓の集落、あそこまで仏さんを持ち越していったんやなあ、
b.昔の人は偉いなあ、みんな基本、歩きやもんな、
a.グルコサミンやコンドロイチンもなかったしなあ、
b.どんなヒザしてたんかなあ、ともあれ、持越(モチコシ)峠にもどって、雲ケ畑(クモガハタ)へ降りて行きましょう、
a.「自転車は峠の下り無敵やで」、
b.立派な御神木(ゴシンボク)が根元からいかれてますね、厳島(イツクシマ)神社の、
a.通行の邪魔になったか、倒れる危険があったか、残念なことじゃ、
b.おかげで、ぜいたくきわまりないベンチに早変わり、
a.おお、なんともありがたき座り心地、
「神木(しんぼく)の切り株ベンチありがたい」、
b.あとはひたすら京都の中心街まで下るばかりっす、
a.鴨川ぞいに下るばかりや、どれほど下れるんかのう、
b.この神社の前の道が海抜260m、渓流ぞいにクネクネ下って、京都産業大学のグランド前が117m、143mの位置エネルギーっす、
a.さすが峠をふたつ越えると良いことが待ってるなあ、
b.それからもさらに下り基調(キチョウ=基本的に下り道)なんで、嵐山の渡月橋までさらに108mも下り坂ボーナスがありやすぜ、だんな、
a.そういえば京都は町中もゆる〜く北から南へ下り坂になってるもんな、なんかもうかった気分やな、
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