2015年09月22日
「ネリカン・ブルース」の変遷
『浮浪児の栄光』の「資料編」として、「ネリカン・ブルース」の変遷を取り上げたいと思います。
『浮浪児の栄光』──佐野美津男の不良少年入門で紹介した『練鑑ブルース』は、基本形の(ほぼ)フル・バージョンですが、このほかにも「大阪少年鑑別所」バージョンとか、いろいろあるようです。
歌詞に違いがあるということで、メロディの方は共通で、軍歌『可愛いスーチャン』の替え歌です。軍歌とはいっても、「小唄」系の非公式に歌われたタイプのものに属します。
こちらが練鑑ブルースの元歌になります。
『可愛いスーチャン』
作詞・作曲者不詳
軍隊も鑑別所も、「鉄の規律」と「いじめ体質」はおなじだということなんでしょうね。曲想が「ネリカン・ブルース」として相応しいと感応した替歌作者の感性には、うならされます。
作曲家・音楽評論家の森一也によれば、この曲は三拍子の五音長音階で、三拍子の民謡というのは日本にはなく、韓国民謡にみられる特徴だそうです。戦前に朝鮮守備隊に入営していたひとか、あるいは、日本軍に徴兵された朝鮮人による作曲ではないか、と推測しています。
たしかに、ちょっと、日本の曲とは違ったものを感じさせられますね。日本文化に流入した朝鮮文化の一端が、ここにはあるのかもしれません。
つぎは、「ネリカン・ブルース」の「簡略」バージョンです。
『練鑑ブルース』
これぞ「演歌」といった歌いっぷりです。
日本の「演歌」そのものが、古賀政男によって朝鮮の旋律がもちこまれ、日本の流行歌の旋律と交合することによって生まれたことがしられています。それとは別ルートで、軍歌を通しても朝鮮の旋律が持ち込まれていたことは、強調しておくべきことかもしれません。
「ネリカン・ブルース」の「歌謡曲化」という現象もみられました。
守屋浩の『檻の中の野郎たち』は、昭和34年(1959)8月4日に封切られた同名の東宝映画の主題歌でした。ロカビリー歌手総出演の少年院を舞台にした喜劇だったようですが、設定だけ見てもすでに「ゆるさ」を感じるし、歌詞をみてもだいぶロマンチックなものになってしまって、リアリティが感じられません。
作詞は、「姿三四郎」「柔」などを書いている関沢新一で、「ネリカン・ブルース」の替歌になっています。
レコードも発売されましたが、歌詞が問題にされ抗議を受けて、販売中止になっています。
つぎに、こちらは「純演歌」として生まれ変わった「ネリカン・ブルース」です。
『ネリカンブルース』 藤圭子
藤圭子の場合は、彼女のオリジナルの歌詞で歌っています。「圭子の夢は夜ひらく」も替歌といえば替歌だったけど、彼女を発掘した石坂まさをが作詞していました。でも『ネリカンブルース』の作詞は、若杉嵐となっています。この人の情報は、ほとんど得られませんでした。
たしかに、藤圭子の持ち歌にふさわしい一曲ではありますね。
このような商業ベースでの継承とは別に、
岸和田のだんじり祭の「曳き歌」としても歌い継がれているようです。
むかしもいまも、「ネリカン・ブルース」は不良少年の「聖歌」なんだな。
『浮浪児の栄光』──佐野美津男の不良少年入門で紹介した『練鑑ブルース』は、基本形の(ほぼ)フル・バージョンですが、このほかにも「大阪少年鑑別所」バージョンとか、いろいろあるようです。
歌詞に違いがあるということで、メロディの方は共通で、軍歌『可愛いスーチャン』の替え歌です。軍歌とはいっても、「小唄」系の非公式に歌われたタイプのものに属します。
こちらが練鑑ブルースの元歌になります。
『可愛いスーチャン』
作詞・作曲者不詳
軍隊も鑑別所も、「鉄の規律」と「いじめ体質」はおなじだということなんでしょうね。曲想が「ネリカン・ブルース」として相応しいと感応した替歌作者の感性には、うならされます。
作曲家・音楽評論家の森一也によれば、この曲は三拍子の五音長音階で、三拍子の民謡というのは日本にはなく、韓国民謡にみられる特徴だそうです。戦前に朝鮮守備隊に入営していたひとか、あるいは、日本軍に徴兵された朝鮮人による作曲ではないか、と推測しています。
たしかに、ちょっと、日本の曲とは違ったものを感じさせられますね。日本文化に流入した朝鮮文化の一端が、ここにはあるのかもしれません。
つぎは、「ネリカン・ブルース」の「簡略」バージョンです。
『練鑑ブルース』
これぞ「演歌」といった歌いっぷりです。
日本の「演歌」そのものが、古賀政男によって朝鮮の旋律がもちこまれ、日本の流行歌の旋律と交合することによって生まれたことがしられています。それとは別ルートで、軍歌を通しても朝鮮の旋律が持ち込まれていたことは、強調しておくべきことかもしれません。
「ネリカン・ブルース」の「歌謡曲化」という現象もみられました。
守屋浩の『檻の中の野郎たち』は、昭和34年(1959)8月4日に封切られた同名の東宝映画の主題歌でした。ロカビリー歌手総出演の少年院を舞台にした喜劇だったようですが、設定だけ見てもすでに「ゆるさ」を感じるし、歌詞をみてもだいぶロマンチックなものになってしまって、リアリティが感じられません。
作詞は、「姿三四郎」「柔」などを書いている関沢新一で、「ネリカン・ブルース」の替歌になっています。
レコードも発売されましたが、歌詞が問題にされ抗議を受けて、販売中止になっています。
つぎに、こちらは「純演歌」として生まれ変わった「ネリカン・ブルース」です。
『ネリカンブルース』 藤圭子
藤圭子の場合は、彼女のオリジナルの歌詞で歌っています。「圭子の夢は夜ひらく」も替歌といえば替歌だったけど、彼女を発掘した石坂まさをが作詞していました。でも『ネリカンブルース』の作詞は、若杉嵐となっています。この人の情報は、ほとんど得られませんでした。
たしかに、藤圭子の持ち歌にふさわしい一曲ではありますね。
このような商業ベースでの継承とは別に、
岸和田のだんじり祭の「曳き歌」としても歌い継がれているようです。
むかしもいまも、「ネリカン・ブルース」は不良少年の「聖歌」なんだな。
タグ:ネリカン・ブルース
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