2018年08月24日
残暑お見舞い申し上げます!「熱中症予防」 覚えておきたい熱中症の基本事項
残暑お見舞い申し上げます!「熱中症予防」
覚えておきたい熱中症の基本事項【救急診療の基礎知識】から
公開日:2018/07/25 企画・制作 ケアネット
暑さに負けないために今回は熱中症の基本的事項をまとめておきましょう。
熱中症の定義
以前は熱射病、熱痙攣、熱失神という言葉が使用されていましたが、現在は用いられません(重症度と共に後述します)。
熱中症とは「暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称」とされ、
「暑熱による諸症状を呈するもの」のうちで、他の原因疾患を除外したものと定義されています。
わが国では毎年7〜8月に熱中症の発生率が多く、「今そこにある危機」と認識し、熱中症の症状を頭に入れ意識しておく必要があるのです。
熱中症の死亡率
本邦の年間発症数は約40万人、そのうち8.7%(約3万5,000人)が入院、0.13%(約520名)が死亡しています。
この数値は現在も大きな変化はなく、2016年の死亡者数は621名で65歳以上が79.2%という結果でした(厚生労働省 人口動態統計)。
2018年は2017年より暑く、熱中症患者は増加することが予想されます。熱中症を軽視してはいけません。
熱中症の重症度
以前、熱中症は、熱射病、熱痙攣、熱失神などの呼び名がありましたが、現在は重症度を理解しやすいように分類されています1)。
I度は必ずしも体温は上がりません。症状で判断します。
II度は頭痛や嘔吐、倦怠感に加え、深部体温の上昇を認めます。
III度は、意識障害、臓器障害を認め、早急な対応が必要になります。
熱中症を疑うことは、病歴から難しくありませんが、重症度の判断は初期評価をきちんと行わなければ見誤ります。
とくに重篤化しやすい、非労作性熱中症の高齢者には注意が必要です。
熱中症の治療
治療の原則、「安静」「環境改善」「塩分+水分の補給」は絶対です。
熱中症II度以上は、体温調節中枢が正常に機能していない状態です。
皮膚や筋肉の血管拡張、血流増加、多量の発汗によって循環血液量減少性ショックへと陥ります。
急速な輸液に加え、高体温が持続すると多臓器不全(意識障害、痙攣、急性腎障害、DIC(播種性血管内凝固症候群) etc.)を伴い、
輸液だけでなく呼吸管理や透析などの全身管理が必要となることもあります。
(1)目標体温
深部体温*が39℃を超える高体温の持続は予後不良因子であり、38℃台になるまでは積極的な冷却処置を行いましょう。
*深部体温
中枢温を正確に反映する部位は腋窩温でも皮膚温でもありません。
最も好ましいのは深部体温(膀胱温、直腸温、食道温)です。
救急外来など初療時には、直腸温を測定するか、温度センサー付きバルーンカテーテルを利用し、膀胱温を測定するとよいでしょう。
健康な人の体温の平均値は、
腋窩温36.4℃に対して直腸温37.5℃と約1℃異なると言われていますが、
高体温で発汗している場合や測定方法によって、腋窩温や皮膚温は容易に変化します(正しく測定できません)。
熱中症、とくに重症度が高いと判断した症例では、深部体温を測定する意識をもちましょう。
(2)冷却方法
体表冷却法が一般的です。気化熱を利用します。ぬるま湯(40〜45℃)を霧吹きを用いて体表にかけ、扇風機などで扇ぐとよいでしょう。
熱中症の予防
熱中症は予防可能です。
起こしてしまった人へは、治療だけでなく正しい熱中症の知識、
そして周囲の方への啓発・指導を含め、ポイントを絞って熱中症を起こさないために必要なことを伝えましょう。
●環境省の熱中症予防情報を伝授
環境省熱中症予防情報サイトでは、WBGT(暑さ指数)を都道府県、地点別に確認できます。
3日間の予測も併せて確認できるため、熱中症を予防する立場にある学校の教師や職場の管理者は必ず確認しておく必要があります。
朝のニュースなどで危険性は日々報道されていますが、それでもなお発生しているのが熱中症です。
願わくは、自ら確認し意識しておくことが必要と考えます。「熱中症の危険がある」ということを事前に意識して対応すれば、体調の変化に対する対応も迅速に行えるでしょう。
●熱中症? と思った際の対応を伝授
こむら返りや頭痛、倦怠感などを自覚し、環境因子から熱中症? と判断した場合には、
速やかに環境を改善し(日陰や店舗内など涼しい場所へ移動)、水分だけでなく塩分を摂取するように勧めましょう。
症状が改善しない場合や、自身で水分・塩分の摂取が困難な場合には、時間経過で改善することも多いですが、症状の増悪、一人暮らしで経過を診ることができる家族がいない場合には、病院へ受診するように指示したほうがよいでしょう。
屋内外のリスクを見極め夏を過ごす
7月は熱中症予防強化月間の重点取組期間です(厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」)。
まだまだ暑い日が続きます。日頃の体調管理を行いつつ、屋外でのスポーツや作業をする場合には、リスクを評価し、予防に努め、屋内で過ごす場合には、温度・湿度を意識した環境の設定を行い、夏を乗り切りましょう!
参考文献
1)日本救急医学会熱中症に関する委員会. 熱中症の実態調査-日本救急医学会Heatstroke STUDY 2012最終報告-.日救急医会誌. 2014;25:846-862.
坂本 壮 ( さかもと そう ) 氏
順天堂大学医学部附属練馬病院 救急・集中治療科
西伊豆健育会病院 内科
覚えておきたい熱中症の基本事項【救急診療の基礎知識】から
公開日:2018/07/25 企画・制作 ケアネット
暑さに負けないために今回は熱中症の基本的事項をまとめておきましょう。
熱中症の定義
以前は熱射病、熱痙攣、熱失神という言葉が使用されていましたが、現在は用いられません(重症度と共に後述します)。
熱中症とは「暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称」とされ、
「暑熱による諸症状を呈するもの」のうちで、他の原因疾患を除外したものと定義されています。
わが国では毎年7〜8月に熱中症の発生率が多く、「今そこにある危機」と認識し、熱中症の症状を頭に入れ意識しておく必要があるのです。
熱中症の死亡率
本邦の年間発症数は約40万人、そのうち8.7%(約3万5,000人)が入院、0.13%(約520名)が死亡しています。
この数値は現在も大きな変化はなく、2016年の死亡者数は621名で65歳以上が79.2%という結果でした(厚生労働省 人口動態統計)。
2018年は2017年より暑く、熱中症患者は増加することが予想されます。熱中症を軽視してはいけません。
熱中症の重症度
以前、熱中症は、熱射病、熱痙攣、熱失神などの呼び名がありましたが、現在は重症度を理解しやすいように分類されています1)。
I度は必ずしも体温は上がりません。症状で判断します。
II度は頭痛や嘔吐、倦怠感に加え、深部体温の上昇を認めます。
III度は、意識障害、臓器障害を認め、早急な対応が必要になります。
熱中症を疑うことは、病歴から難しくありませんが、重症度の判断は初期評価をきちんと行わなければ見誤ります。
とくに重篤化しやすい、非労作性熱中症の高齢者には注意が必要です。
熱中症の治療
治療の原則、「安静」「環境改善」「塩分+水分の補給」は絶対です。
熱中症II度以上は、体温調節中枢が正常に機能していない状態です。
皮膚や筋肉の血管拡張、血流増加、多量の発汗によって循環血液量減少性ショックへと陥ります。
急速な輸液に加え、高体温が持続すると多臓器不全(意識障害、痙攣、急性腎障害、DIC(播種性血管内凝固症候群) etc.)を伴い、
輸液だけでなく呼吸管理や透析などの全身管理が必要となることもあります。
(1)目標体温
深部体温*が39℃を超える高体温の持続は予後不良因子であり、38℃台になるまでは積極的な冷却処置を行いましょう。
*深部体温
中枢温を正確に反映する部位は腋窩温でも皮膚温でもありません。
最も好ましいのは深部体温(膀胱温、直腸温、食道温)です。
救急外来など初療時には、直腸温を測定するか、温度センサー付きバルーンカテーテルを利用し、膀胱温を測定するとよいでしょう。
健康な人の体温の平均値は、
腋窩温36.4℃に対して直腸温37.5℃と約1℃異なると言われていますが、
高体温で発汗している場合や測定方法によって、腋窩温や皮膚温は容易に変化します(正しく測定できません)。
熱中症、とくに重症度が高いと判断した症例では、深部体温を測定する意識をもちましょう。
(2)冷却方法
体表冷却法が一般的です。気化熱を利用します。ぬるま湯(40〜45℃)を霧吹きを用いて体表にかけ、扇風機などで扇ぐとよいでしょう。
熱中症の予防
熱中症は予防可能です。
起こしてしまった人へは、治療だけでなく正しい熱中症の知識、
そして周囲の方への啓発・指導を含め、ポイントを絞って熱中症を起こさないために必要なことを伝えましょう。
●環境省の熱中症予防情報を伝授
環境省熱中症予防情報サイトでは、WBGT(暑さ指数)を都道府県、地点別に確認できます。
3日間の予測も併せて確認できるため、熱中症を予防する立場にある学校の教師や職場の管理者は必ず確認しておく必要があります。
朝のニュースなどで危険性は日々報道されていますが、それでもなお発生しているのが熱中症です。
願わくは、自ら確認し意識しておくことが必要と考えます。「熱中症の危険がある」ということを事前に意識して対応すれば、体調の変化に対する対応も迅速に行えるでしょう。
●熱中症? と思った際の対応を伝授
こむら返りや頭痛、倦怠感などを自覚し、環境因子から熱中症? と判断した場合には、
速やかに環境を改善し(日陰や店舗内など涼しい場所へ移動)、水分だけでなく塩分を摂取するように勧めましょう。
症状が改善しない場合や、自身で水分・塩分の摂取が困難な場合には、時間経過で改善することも多いですが、症状の増悪、一人暮らしで経過を診ることができる家族がいない場合には、病院へ受診するように指示したほうがよいでしょう。
屋内外のリスクを見極め夏を過ごす
7月は熱中症予防強化月間の重点取組期間です(厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」)。
まだまだ暑い日が続きます。日頃の体調管理を行いつつ、屋外でのスポーツや作業をする場合には、リスクを評価し、予防に努め、屋内で過ごす場合には、温度・湿度を意識した環境の設定を行い、夏を乗り切りましょう!
参考文献
1)日本救急医学会熱中症に関する委員会. 熱中症の実態調査-日本救急医学会Heatstroke STUDY 2012最終報告-.日救急医会誌. 2014;25:846-862.
坂本 壮 ( さかもと そう ) 氏
順天堂大学医学部附属練馬病院 救急・集中治療科
西伊豆健育会病院 内科
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