2018年08月22日
ピロリ除菌は積極的に! ピロリ除菌後の胃がん発癌例は死亡率が低い
ピロリ除菌は積極的に!
ピロリ除菌後の胃がん発癌例は死亡率が低い
m3.com編集部 2018年7月18日
胃癌の発症と関連の深いHelicobacter pylori(H. pylori)だが、除菌治療が成功したにもかかわらず後に胃癌が発見されることがある。
しかし、そうした患者では、H. pylori陽性の癌症例よりも死亡率が低いことが、とよしま内視鏡クリニック(東京都)院長の豊島治氏、さきたに内科・内視鏡クリニック(千葉県)院長の崎谷康佑氏らによって、Helicobacter(6月20日電子版)に報告された。
除菌治療に成功した患者は定期的に内視鏡検査を受けており、それが良好な予後につながっているという。
論文の概要と、筆頭著者である崎谷氏へのインタビューを紹介する。(m3.com編集部・小島領平)
胃癌患者160例を調査
崎谷氏らは今回、とよしま内視鏡クリニックで胃癌と診断された160例(男性90例、平均年齢64.6歳、平均BMI 22.5kg/m2)を対象に調査を実施。
H. pyloriへの感染状態は53例が除菌成功、89例が陽性(除菌失敗を含む)、12例が自然除菌、6例が非感染だった。
平均3.5年(最大11.7年)の追跡期間中に11例(7%)が死亡し(胃癌7例、肺炎1例、心筋梗塞1例、咽頭癌1例、老化1例)、内訳は陽性群10例(群内11%)、自然除菌群1例(同8%)で、除菌成功群と非感染群はゼロだった。
検討の結果、除菌成功群では、陽性群に比べて胃癌の早期発見(ステージI)の割合が高く、胃癌診断前の2年以内に内視鏡検査を受けた割合も高かった。
多変量解析を実施したところ、胃癌診断前の2年以内に受けた内視鏡検査が、胃癌の早期発見に関連していることが分かったという。
m3.comに対し、豊島氏は「H. pyloriの除菌が胃癌による死亡も抑制している可能性を示したことは、大きなインパクトがある。
除菌後、定期的に内視鏡検査を受けて胃癌を早期発見できることが明らかになり、除菌後の診療における内視鏡検査の重要性が示された」とコメント。
除菌後は胃癌が発見しにくくなるという指摘については、「当院では除菌後も多くの胃癌を早期に発見しており、発見しにくくなるのは一部の症例。
一般論ではないと考えている」とした。
筆頭著者・崎谷康佑氏に聞く
――胃癌発症率を比較するのではなく、胃癌患者の死亡率を比べるという観点が興味深く感じました。ここに着目した理由を教えてください。
除菌後の胃癌発症率は他施設からも多く報告されていますが、「胃癌による死亡を避ける」という最終的な目標が達成されているかどうかについては、これまで報告が少なかったため、今回の研究を行いました。
――研究を行う上で苦労した点は?
数多くの施設に胃癌患者の追跡を依頼するということで、開始前は困難を予想していました。
しかし、実際には共同執筆者の方々の施設(東京大学、慶應義塾大学、国立がん研究センター、がん研有明病院、虎の門病院、日本赤十字社医療センター、公立学校共済組合関東中央病院)では患者の追跡が、しっかりと的確に行われており、そのご協力のおかげで、研究はスムーズに進みました。
――結論として、除菌成功例は頻繁に内視鏡検査を行っており、それが早期発見、ひいては死亡率低下に寄与したとされています。
飛躍してしまいますが、除菌の有無にかかわらず、内視鏡検査を頻繁に行うことが重要という捉え方もできそうですが……。
内視鏡の頻度によらない、除菌治療単独の胃癌死抑制効果については今後、症例数を増やした検討が必要です。
しかし、除菌治療が胃癌の頻度自体を減らすことは過去の研究から明らかなので、必ずしも「除菌をしなくても定期的に胃カメラさえしておけばよい」という結論にはならないと考えます。
アレルギーなどで除菌ができない方には、一般的には年1回の内視鏡検査が推奨されると思います。
関連リンク
Early detection of gastric cancer after Helicobacter pylori eradication due to endoscopic surveillance
ピロリ除菌後の胃がん発癌例は死亡率が低い
m3.com編集部 2018年7月18日
胃癌の発症と関連の深いHelicobacter pylori(H. pylori)だが、除菌治療が成功したにもかかわらず後に胃癌が発見されることがある。
しかし、そうした患者では、H. pylori陽性の癌症例よりも死亡率が低いことが、とよしま内視鏡クリニック(東京都)院長の豊島治氏、さきたに内科・内視鏡クリニック(千葉県)院長の崎谷康佑氏らによって、Helicobacter(6月20日電子版)に報告された。
除菌治療に成功した患者は定期的に内視鏡検査を受けており、それが良好な予後につながっているという。
論文の概要と、筆頭著者である崎谷氏へのインタビューを紹介する。(m3.com編集部・小島領平)
胃癌患者160例を調査
崎谷氏らは今回、とよしま内視鏡クリニックで胃癌と診断された160例(男性90例、平均年齢64.6歳、平均BMI 22.5kg/m2)を対象に調査を実施。
H. pyloriへの感染状態は53例が除菌成功、89例が陽性(除菌失敗を含む)、12例が自然除菌、6例が非感染だった。
平均3.5年(最大11.7年)の追跡期間中に11例(7%)が死亡し(胃癌7例、肺炎1例、心筋梗塞1例、咽頭癌1例、老化1例)、内訳は陽性群10例(群内11%)、自然除菌群1例(同8%)で、除菌成功群と非感染群はゼロだった。
検討の結果、除菌成功群では、陽性群に比べて胃癌の早期発見(ステージI)の割合が高く、胃癌診断前の2年以内に内視鏡検査を受けた割合も高かった。
多変量解析を実施したところ、胃癌診断前の2年以内に受けた内視鏡検査が、胃癌の早期発見に関連していることが分かったという。
m3.comに対し、豊島氏は「H. pyloriの除菌が胃癌による死亡も抑制している可能性を示したことは、大きなインパクトがある。
除菌後、定期的に内視鏡検査を受けて胃癌を早期発見できることが明らかになり、除菌後の診療における内視鏡検査の重要性が示された」とコメント。
除菌後は胃癌が発見しにくくなるという指摘については、「当院では除菌後も多くの胃癌を早期に発見しており、発見しにくくなるのは一部の症例。
一般論ではないと考えている」とした。
筆頭著者・崎谷康佑氏に聞く
――胃癌発症率を比較するのではなく、胃癌患者の死亡率を比べるという観点が興味深く感じました。ここに着目した理由を教えてください。
除菌後の胃癌発症率は他施設からも多く報告されていますが、「胃癌による死亡を避ける」という最終的な目標が達成されているかどうかについては、これまで報告が少なかったため、今回の研究を行いました。
――研究を行う上で苦労した点は?
数多くの施設に胃癌患者の追跡を依頼するということで、開始前は困難を予想していました。
しかし、実際には共同執筆者の方々の施設(東京大学、慶應義塾大学、国立がん研究センター、がん研有明病院、虎の門病院、日本赤十字社医療センター、公立学校共済組合関東中央病院)では患者の追跡が、しっかりと的確に行われており、そのご協力のおかげで、研究はスムーズに進みました。
――結論として、除菌成功例は頻繁に内視鏡検査を行っており、それが早期発見、ひいては死亡率低下に寄与したとされています。
飛躍してしまいますが、除菌の有無にかかわらず、内視鏡検査を頻繁に行うことが重要という捉え方もできそうですが……。
内視鏡の頻度によらない、除菌治療単独の胃癌死抑制効果については今後、症例数を増やした検討が必要です。
しかし、除菌治療が胃癌の頻度自体を減らすことは過去の研究から明らかなので、必ずしも「除菌をしなくても定期的に胃カメラさえしておけばよい」という結論にはならないと考えます。
アレルギーなどで除菌ができない方には、一般的には年1回の内視鏡検査が推奨されると思います。
関連リンク
Early detection of gastric cancer after Helicobacter pylori eradication due to endoscopic surveillance
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