2019年08月23日
ヘリコバクターピロリ感染症の診断と治療
ヘリコバクターピロリ感染症の診断と治療
ヘリコバクター・ピロリ菌とは
図1 顕微鏡写真
ピロリ菌とは人間の胃の中に住んでいる細菌で、
正式名はHelicobactor pylori
(H.pylori:ヘリコバクター・ピロリ)
と言います。
ヘリコは「らせん」という意味で、バクターはバクテリア (細菌)、
ピロリは胃の出口(幽門)をさす「ピロルス」からきています。
体長は約4ミクロン(4/1000mm)と非常に小さく4〜8本のべん毛が
生えており、そのべん毛を回転させ、らせん状に移動します。
ピロリ菌はべん毛をスクリューのように回転させながら、らせん状の本体を回転させて移動します。
スクリューを逆回転にすればバックもできます。
ピロリ菌はべん毛を1秒間に100回転くらい回転させて、自分の10倍ほどの長さを移動します。
この移動の速さは、人間で言うと100mを5.5秒で泳ぐほどの猛スピードですから、
オリンピックなら間違いなく金メダルです。
この細菌はオーストラリアの研究者Jhon Robin WarrenとBarry James Marshallらによって
1980年代前半に発見され、急性胃炎や慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍の原因となっていることが明らかにされました。
そしてその業績が称えられ、彼らは2005年にノーベル医学生理学賞を受賞しています。
その後、このピロリ菌は、慢性胃炎(慢性炎症のため、胃の粘膜が薄くなる萎縮性胃炎)、粘液バリアが薄くなるため、胃から出る胃酸(強塩酸)やタンパク分解酵素であるペプシンによって、壁が溶けてしまう、胃潰瘍、十二指腸潰瘍が発生します。
一旦、治療を受けても、胃の環境は変わらないので、胃潰瘍、十二指腸潰瘍を繰り返すことになります。
炎症を繰り返すことで、絶えず粘膜を再生しないといけなくなるので、
粘膜の細胞回転が早まり、出来損ないの細胞(がん細胞)が発生してきます。
現在、胃がんの99%がピロリ菌の感染によるものとされています。
残りの1%は突然発生によるものとされています。
ピロリ菌の除菌治療により胃がんの予防効果を認めることが
世界的権威のある論文(Lancet)に掲載され、
ついに2013年2月からH.pylori感染性胃炎に対してH.pyloriの除菌療法が保険適応となりました。
しかしH.pyloriの除菌療法を行っても新たながんの発生を100%予防することはできず
1/3の患者さんでは新たな胃がんが発生してきます。
慢性胃炎が何十年にも渡って起きていた人の粘膜には遺伝子異常が集積されていて、
全体で見れば、発がん率は減っているものの、
がんの発生をゼロにはできないことがわかっています。
しかし、除菌をすることで、潰瘍になりにくくする。
発ガンの危険性をさげることができるので、
ピロリ菌陽性の方には、年齢に関係なく、除菌を勧めます。
また、運悪く、脳梗塞をした方、心筋梗塞をした方は、再発予防のため、
抗血小板薬(わざと血小板の機能を落として、血を固まりにくくして、
狭くなってしまった血管の内腔を通り抜けられるようにしてくれる、
バイアスピリンやクロピトグレルなど)を服薬しないといけません。
ピロリ菌がいると潰瘍が発生しやすいので、除菌治療が必要になります。
そうでない場合は、胃酸を抑える、H2ブロッカーやプロトンポンプインヒビター(PPI)
というお薬を予防的に一つ多く服薬しなければならなくなります。
次回は、ピロリ菌の検査や、除菌について具体的な方法など
をお知らせしたいと思います。
ヘリコバクター・ピロリ菌とは
図1 顕微鏡写真
ピロリ菌とは人間の胃の中に住んでいる細菌で、
正式名はHelicobactor pylori
(H.pylori:ヘリコバクター・ピロリ)
と言います。
ヘリコは「らせん」という意味で、バクターはバクテリア (細菌)、
ピロリは胃の出口(幽門)をさす「ピロルス」からきています。
体長は約4ミクロン(4/1000mm)と非常に小さく4〜8本のべん毛が
生えており、そのべん毛を回転させ、らせん状に移動します。
ピロリ菌はべん毛をスクリューのように回転させながら、らせん状の本体を回転させて移動します。
スクリューを逆回転にすればバックもできます。
ピロリ菌はべん毛を1秒間に100回転くらい回転させて、自分の10倍ほどの長さを移動します。
この移動の速さは、人間で言うと100mを5.5秒で泳ぐほどの猛スピードですから、
オリンピックなら間違いなく金メダルです。
この細菌はオーストラリアの研究者Jhon Robin WarrenとBarry James Marshallらによって
1980年代前半に発見され、急性胃炎や慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍の原因となっていることが明らかにされました。
そしてその業績が称えられ、彼らは2005年にノーベル医学生理学賞を受賞しています。
その後、このピロリ菌は、慢性胃炎(慢性炎症のため、胃の粘膜が薄くなる萎縮性胃炎)、粘液バリアが薄くなるため、胃から出る胃酸(強塩酸)やタンパク分解酵素であるペプシンによって、壁が溶けてしまう、胃潰瘍、十二指腸潰瘍が発生します。
一旦、治療を受けても、胃の環境は変わらないので、胃潰瘍、十二指腸潰瘍を繰り返すことになります。
炎症を繰り返すことで、絶えず粘膜を再生しないといけなくなるので、
粘膜の細胞回転が早まり、出来損ないの細胞(がん細胞)が発生してきます。
現在、胃がんの99%がピロリ菌の感染によるものとされています。
残りの1%は突然発生によるものとされています。
ピロリ菌の除菌治療により胃がんの予防効果を認めることが
世界的権威のある論文(Lancet)に掲載され、
ついに2013年2月からH.pylori感染性胃炎に対してH.pyloriの除菌療法が保険適応となりました。
しかしH.pyloriの除菌療法を行っても新たながんの発生を100%予防することはできず
1/3の患者さんでは新たな胃がんが発生してきます。
慢性胃炎が何十年にも渡って起きていた人の粘膜には遺伝子異常が集積されていて、
全体で見れば、発がん率は減っているものの、
がんの発生をゼロにはできないことがわかっています。
しかし、除菌をすることで、潰瘍になりにくくする。
発ガンの危険性をさげることができるので、
ピロリ菌陽性の方には、年齢に関係なく、除菌を勧めます。
また、運悪く、脳梗塞をした方、心筋梗塞をした方は、再発予防のため、
抗血小板薬(わざと血小板の機能を落として、血を固まりにくくして、
狭くなってしまった血管の内腔を通り抜けられるようにしてくれる、
バイアスピリンやクロピトグレルなど)を服薬しないといけません。
ピロリ菌がいると潰瘍が発生しやすいので、除菌治療が必要になります。
そうでない場合は、胃酸を抑える、H2ブロッカーやプロトンポンプインヒビター(PPI)
というお薬を予防的に一つ多く服薬しなければならなくなります。
次回は、ピロリ菌の検査や、除菌について具体的な方法など
をお知らせしたいと思います。
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