2019年05月24日
橋本病の症状改善に甲状腺全摘出術が有効
(慢性疲労!良性疾患で全摘を勧められるのは珍しい
治療により甲状腺機能が正常となったにもかかわらず症状が改善しない橋本病患者では、甲状腺全摘出術が症状改善に有効)
橋本病の症状改善に甲状腺全摘出術が有効
150例対象のRCT
2019年04月05日 06:05
橋本病では甲状腺機能が低下することにより、重度の疲労感などの症状が現れる。
治療としては甲状腺ホルモン補充療法があるが、
一部で奏効せずに持続的な症状に悩まされるケースもある。
ノルウェー・Telemark HospitalのIvar Guldvog氏らは、
治療により甲状腺機能が正常となったにもかかわらず症状が改善しない橋本病患者では、
甲状腺全摘出術が症状改善に有効であることをランダム化比較試験(RCT)で明らかにし、
Ann Intern Med(2019年3月12日オンライン版)に報告した。
甲状腺機能正常で症状持続する患者が対象
対象は、ノルウェーの二次医療施設を受診し血清抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体が
1,000IU/mLを超える18〜79歳の橋本病患者で、
甲状腺ホルモン補充療法により甲状腺機能は正常状態が得られているが、
持続的な橋本病の症状を呈する150例。
対象を甲状腺全摘出術群とホルモン補充療法群に1:1でランダムに割り付け、
6カ月ごとに症状を評価し18カ月間追跡した。
主要評価項目は、18カ月間の追跡終了時における健康関連QOL測定用自己記入式質問票SF-36の全体的健康感(general health)スコア。
副次評価項目は、
手術による有害事象、
SF-36の全体的健康感以外の7項目(身体機能、身体的日常役割機能、体の痛み、活力、社会生活機能、精神的日常役割機能、心の健康)のサブスコア、
疲労質問票で測定した疲労スコア(総疲労と慢性疲労)、
TPO抗体(6、12、18カ月時)の変化とした。
全摘出術群でのみ症状改善
SF-36全体的健康感の平均スコアは、
ベースライン時は両群ともに38ポイント(95%CI 34〜41ポイント)だったが、
追跡期間終了時には全摘出術群が64ポイント(同59〜68ポイント)に増加したのに対し、
補充療法群では35ポイント(同30〜39ポイント)とほとんど変化せず、
両群に29ポイント(同22〜35ポイント、P<0.001)の差が認められた(図)。
総疲労の平均スコアは、
ベースライン時は両群ともに23ポイント(95%CI 22〜24ポイント)だったが、
追跡期間終了時には全摘出術群が14ポイント(同13〜16ポイント)に減少したのに対し、
補充療法群では24ポイント(同22〜25ポイント)とほとんど変化せず、
両群の差は9.3ポイント(同7.4〜11.2ポイント、P<0.001)であった。
慢性疲労の患者の割合は、ベースライン時は両群ともに83%(95%CI 76〜88%)だったが、
追跡期間終了時には全摘出術群は35%(同25〜46%)に低下したのに対し、
補充療法群では74%(同62〜83%)とほとんど変化せず、
両群に39ポイント(同23〜53ポイント、P<0.001)の差が認められた。
抗TPO抗体も低下
血清抗TPO抗体の中央値は、
全摘出術群ではベースライン時の2,232IU/mL〔四分位範囲(IQR)1,278〜4,263IU/mL〕から
18カ月後には152IU/mL(同100〜286 IU/mL)に低下したのに対し、
補充療法群ではベースライン時の2,052IU/mL(同1,204〜3,791IU/mL)から
18カ月後も1,300IU/mLと高いままで、
群間差は1,148IU/mL(95%CI 1,080〜1,304IU/mL、P<0.001)であった。
今回の研究では追跡期間が18カ月と限られているが、
血清抗TPO抗体1,000IU/mL以上で甲状腺機能低下症以外の症状が重度の橋本病患者において、
甲状腺全摘出術によってのみ健康関連QOLおよび疲労スコアが改善、血清抗TPO抗体が低下した。
これらのことから、Guldvog氏は
「ホルモン補充療法により甲状腺機能が正常にコントロールされているにもかかわらず症状が持続する橋本病患者では、甲状腺全摘出術を考慮すべきである」
としている。
(宇佐美陽子)
治療により甲状腺機能が正常となったにもかかわらず症状が改善しない橋本病患者では、甲状腺全摘出術が症状改善に有効)
橋本病の症状改善に甲状腺全摘出術が有効
150例対象のRCT
2019年04月05日 06:05
橋本病では甲状腺機能が低下することにより、重度の疲労感などの症状が現れる。
治療としては甲状腺ホルモン補充療法があるが、
一部で奏効せずに持続的な症状に悩まされるケースもある。
ノルウェー・Telemark HospitalのIvar Guldvog氏らは、
治療により甲状腺機能が正常となったにもかかわらず症状が改善しない橋本病患者では、
甲状腺全摘出術が症状改善に有効であることをランダム化比較試験(RCT)で明らかにし、
Ann Intern Med(2019年3月12日オンライン版)に報告した。
甲状腺機能正常で症状持続する患者が対象
対象は、ノルウェーの二次医療施設を受診し血清抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体が
1,000IU/mLを超える18〜79歳の橋本病患者で、
甲状腺ホルモン補充療法により甲状腺機能は正常状態が得られているが、
持続的な橋本病の症状を呈する150例。
対象を甲状腺全摘出術群とホルモン補充療法群に1:1でランダムに割り付け、
6カ月ごとに症状を評価し18カ月間追跡した。
主要評価項目は、18カ月間の追跡終了時における健康関連QOL測定用自己記入式質問票SF-36の全体的健康感(general health)スコア。
副次評価項目は、
手術による有害事象、
SF-36の全体的健康感以外の7項目(身体機能、身体的日常役割機能、体の痛み、活力、社会生活機能、精神的日常役割機能、心の健康)のサブスコア、
疲労質問票で測定した疲労スコア(総疲労と慢性疲労)、
TPO抗体(6、12、18カ月時)の変化とした。
全摘出術群でのみ症状改善
SF-36全体的健康感の平均スコアは、
ベースライン時は両群ともに38ポイント(95%CI 34〜41ポイント)だったが、
追跡期間終了時には全摘出術群が64ポイント(同59〜68ポイント)に増加したのに対し、
補充療法群では35ポイント(同30〜39ポイント)とほとんど変化せず、
両群に29ポイント(同22〜35ポイント、P<0.001)の差が認められた(図)。
総疲労の平均スコアは、
ベースライン時は両群ともに23ポイント(95%CI 22〜24ポイント)だったが、
追跡期間終了時には全摘出術群が14ポイント(同13〜16ポイント)に減少したのに対し、
補充療法群では24ポイント(同22〜25ポイント)とほとんど変化せず、
両群の差は9.3ポイント(同7.4〜11.2ポイント、P<0.001)であった。
慢性疲労の患者の割合は、ベースライン時は両群ともに83%(95%CI 76〜88%)だったが、
追跡期間終了時には全摘出術群は35%(同25〜46%)に低下したのに対し、
補充療法群では74%(同62〜83%)とほとんど変化せず、
両群に39ポイント(同23〜53ポイント、P<0.001)の差が認められた。
抗TPO抗体も低下
血清抗TPO抗体の中央値は、
全摘出術群ではベースライン時の2,232IU/mL〔四分位範囲(IQR)1,278〜4,263IU/mL〕から
18カ月後には152IU/mL(同100〜286 IU/mL)に低下したのに対し、
補充療法群ではベースライン時の2,052IU/mL(同1,204〜3,791IU/mL)から
18カ月後も1,300IU/mLと高いままで、
群間差は1,148IU/mL(95%CI 1,080〜1,304IU/mL、P<0.001)であった。
今回の研究では追跡期間が18カ月と限られているが、
血清抗TPO抗体1,000IU/mL以上で甲状腺機能低下症以外の症状が重度の橋本病患者において、
甲状腺全摘出術によってのみ健康関連QOLおよび疲労スコアが改善、血清抗TPO抗体が低下した。
これらのことから、Guldvog氏は
「ホルモン補充療法により甲状腺機能が正常にコントロールされているにもかかわらず症状が持続する橋本病患者では、甲状腺全摘出術を考慮すべきである」
としている。
(宇佐美陽子)
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