2018年10月09日
ベラパミル(ワソラン;頻脈に対する治療薬,抗カルシウム拮抗剤)が早期糖尿病の治療を変える?! 圧倒的に安価な薬で最善のβ細胞保護効果
ベラパミル(ワソラン;頻脈に対する治療薬,抗カルシウム拮抗剤)が早期糖尿病の治療を変える?!
圧倒的に安価な薬で最善のβ細胞保護効果
2018年09月19日 16:52
研究の背景:ベラパミルはマウス実験でβ細胞保護効果を示していた
これまで自己抗原を含む免疫関連薬について、1型糖尿病の発症予防、寛解(β細胞の再生)あるいは進展予防(β細胞減少の阻止)に対する有用性が検討されてきたが,今までの薬剤介入試験では,芳しい成績を挙げられすに終わっていた.
ところが、米・アラバマ大学のグループは、
不整脈や狭心症の治療薬として広く臨床の現場で使用されているCa拮抗薬ベラパミルが、
β細胞のチオレドキシン相互作用蛋白(TXNIP)の発現を低下させること、
ストレプトゾトシン投与によってβ細胞壊死を来す糖尿病モデルマウスにおいて糖尿病発症を抑制できることを示していた(Diabetes 2012;61:848-856)。
このたび、同大学のグループがベラパミルを発症間もない1型糖尿病患者に投与して、
β細胞機能の保護(残念ながら再生とまではいえなさそうではあるが)に成功したことを報告した(Nat Med 2018;24: 1108-1112)。
これまで検討されてきた試験薬に比べて圧倒的に安価な薬剤で最善のβ細胞保護効果が示されたわけであり、
今後、新規発症1型糖尿病のみならず、2型糖尿病を含めて糖尿病の治療シーンを変化させる可能性がある。
私の考察:ベラパミルは早期糖尿病へのルーチン治療になるかも
これまでの新規1型糖尿病患者に対する介入試験の結果は、
HbA1cに影響はなく、インスリン分泌の低下を緩和する程度のものでしかなかった。
しかし、今回のベラパミルはインスリン分泌を低下させず、
HbA1cも統計学的には有意でないものの改善の方向に向かわせ、
さらにうれしいことには低血糖頻度も少なくしていた。
このことはまさにβ細胞機能が保護されていることを意味するであろう。
ベラパミルという安価な薬剤の投与でインスリン投与量も減らせるなら、
医療経済的な意味でも投薬が推奨できるであろう。
さらに、ベラパミルとアテノロールの心血管アウトカムへの影響を比較したINVEST試験(JAMA 2003;290:2805-2816)において、
ベラパミル群で新規2型糖尿病発症抑制効果が認められるなど、
既発表試験のサブ解析でベラパミルの2型糖尿病発症予防効果が示唆されている(Am J Cardiol 2006;98: 890-894)。
ベラパミルは今後、1型、2型といった成因にかかわらず、
新規発症糖尿病や予備軍(耐糖能異常者)に対するβ細胞保護のためルーチンの糖尿病治療薬になるかもしれない。
第V相の大規模な臨床試験の成果が楽しみである。
ドクターズアイ 山田悟(糖尿病)
1994 年,慶應義塾大学医学部を卒業し,同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て,2002年から北里研究所病院で勤務。 現在,同院糖尿病センター長。診療に従事する傍ら,2型糖尿病についての臨床研究や1型糖尿病の動物実験を進める。日本糖尿病学会の糖尿病専門医および指導医
圧倒的に安価な薬で最善のβ細胞保護効果
2018年09月19日 16:52
研究の背景:ベラパミルはマウス実験でβ細胞保護効果を示していた
これまで自己抗原を含む免疫関連薬について、1型糖尿病の発症予防、寛解(β細胞の再生)あるいは進展予防(β細胞減少の阻止)に対する有用性が検討されてきたが,今までの薬剤介入試験では,芳しい成績を挙げられすに終わっていた.
ところが、米・アラバマ大学のグループは、
不整脈や狭心症の治療薬として広く臨床の現場で使用されているCa拮抗薬ベラパミルが、
β細胞のチオレドキシン相互作用蛋白(TXNIP)の発現を低下させること、
ストレプトゾトシン投与によってβ細胞壊死を来す糖尿病モデルマウスにおいて糖尿病発症を抑制できることを示していた(Diabetes 2012;61:848-856)。
このたび、同大学のグループがベラパミルを発症間もない1型糖尿病患者に投与して、
β細胞機能の保護(残念ながら再生とまではいえなさそうではあるが)に成功したことを報告した(Nat Med 2018;24: 1108-1112)。
これまで検討されてきた試験薬に比べて圧倒的に安価な薬剤で最善のβ細胞保護効果が示されたわけであり、
今後、新規発症1型糖尿病のみならず、2型糖尿病を含めて糖尿病の治療シーンを変化させる可能性がある。
私の考察:ベラパミルは早期糖尿病へのルーチン治療になるかも
これまでの新規1型糖尿病患者に対する介入試験の結果は、
HbA1cに影響はなく、インスリン分泌の低下を緩和する程度のものでしかなかった。
しかし、今回のベラパミルはインスリン分泌を低下させず、
HbA1cも統計学的には有意でないものの改善の方向に向かわせ、
さらにうれしいことには低血糖頻度も少なくしていた。
このことはまさにβ細胞機能が保護されていることを意味するであろう。
ベラパミルという安価な薬剤の投与でインスリン投与量も減らせるなら、
医療経済的な意味でも投薬が推奨できるであろう。
さらに、ベラパミルとアテノロールの心血管アウトカムへの影響を比較したINVEST試験(JAMA 2003;290:2805-2816)において、
ベラパミル群で新規2型糖尿病発症抑制効果が認められるなど、
既発表試験のサブ解析でベラパミルの2型糖尿病発症予防効果が示唆されている(Am J Cardiol 2006;98: 890-894)。
ベラパミルは今後、1型、2型といった成因にかかわらず、
新規発症糖尿病や予備軍(耐糖能異常者)に対するβ細胞保護のためルーチンの糖尿病治療薬になるかもしれない。
第V相の大規模な臨床試験の成果が楽しみである。
ドクターズアイ 山田悟(糖尿病)
1994 年,慶應義塾大学医学部を卒業し,同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て,2002年から北里研究所病院で勤務。 現在,同院糖尿病センター長。診療に従事する傍ら,2型糖尿病についての臨床研究や1型糖尿病の動物実験を進める。日本糖尿病学会の糖尿病専門医および指導医
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