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2019年06月30日

ハインリッヒ・ベルの「旅人よ、汝スパ…にいたりなば」のバラツキについて6

場面3

Da stand er noch, der Spruch, den wir damals hatten schreiben müssen, in diesem verzweifelten Leben, das erst drei Monate zurücklag: Wanderer, kommst du nach Spa... A2B2C2D2

Oh, ich weiß, die Tafel war zu kurz gewesen, und der Zeichenlehrer hatte geschimpft, daß ich nicht richtig eingeteilt hatte, die Schrift zu groß gewählt, und er selbst hatte es kopfschüttelnd in der gleichen Größe darunter geschrieben: Wanderer, kommst du nach Spa... A1B2C2D2

Siebenmal stand es da: in meiner Schrift, in Antiqua, Fraktur, Kursiv, Römisch, Italienne und Rundschrift; siebenmal deutlich und unerbitterlich: Wanderer, kommst du nach Spa… A1B1C2D1

Der Feuerwehrmann war jetzt auf einen leisen Ruf des Arztes hin beiseite getreten, so sah ich den ganzen Spruch, der nur ein bißchen verstümmelt war, weil ich die Schrift zu groß gewählt hatte, der Punkte zu viele.
A1B1C2D1

Ich zuckte hoch, als ich einen Stich in den linken Oberschenkel spürte, ich wollte mich aufstützen, aber ich konnte es nicht: ich blickte an mir herab und nun sah ich es: sie hatten mich ausgewickelt, und ich hatte keine Arme mehr, auch kein rechtes Bein mehr, und ich fiel ganz plötzlich nach hinten, weil ich mich nicht aufstützen konnte.  A2B1C2D1

花村嘉英(2019)「ハインリッヒ・ベルの『旅人よ、汝スパ…にいたりなば』のバラツキについて」より

ハインリッヒ・ベルの「旅人よ、汝スパ…にいたりなば」のバラツキについて5

場面2

Ich spuckte meine Zigarette aus und schrie; es war immer gut, zu schreien; man mußte nur laut schreien; schreien war herrlich; ich schrie wie verrückt. A2B1C2D2

Als sich jemand über mich beugte, machte ich immer nocht nicht die Augen auf; ich spürte einen fremden Atem, warm und widerlich roch er nach Tabak und Zwiebeln, und eine Stimme fragte ruhig: "Was ist denn?"
A2B1C2D2

"Was zu trinken", sagte ich, "und noch 'ne Zigarette, die Tasche oben." A2B1C2D2

Wieder fummelte einer an meiner Tasche herum, wieder zischte ein Streichholz und jemand steckte mir 'ne brennende Zigarette in den Mund. A1B1C1D2

"Wo sind wir?" fragte ich.
"In Bendorf."
"Danke", sagte ich und zog. A2B1C2D1

花村嘉英(2019)「ハインリッヒ・ベルの『旅人よ、汝スパ…にいたりなば』のバラツキについて」より

ハインリッヒ・ベルの「旅人よ、汝スパ…にいたりなば」のバラツキについて4

場面1
"Da nützt kein Verdunkeln mehr, wenn die ganze Stadt wie eine Fackel brennt", schrie die fremde Stimme. "Ob ihr Tote habt, habe ich gefragt?" "Weiß nicht." A1B1C2D2

"Die Toten hierhin, hört du? Und die anderen die Treppe hinauf in den Zeichensaal, verstehst du?" "Ja, ja."
A2B1C2D2

Aber ich war noch nicht tot, ich gehörte zu den anderen, und sie trugen mich die Treppe hinauf.  
A2B1C2D1

Erst ging es in einen langen, schwach beleuchteten Flur, dessen Wände mit grüner Ölfarbe gestrichen waren; krumme, schwarze, altmodische Kleiderhaken waren in die Wände eingelassen, und da waren Türen mit Emailleschildchen: VIa und VIb, und zwischen diesen Türen hing, sanftglänzend unter Glas in einem schwarzen Rahmen, die Medea von Feuerbach und blickte in die Ferne; dann kamen Türen mit Va und Vb, und dazwischen hing ein Bild des Dornausziehers, eine wunderbare rötlich schimmernde Photographie in braunem Rahmen.  A1B1C2D2

Auch die große Säule in der Mitte vor dem Treppenaufgang war da, und hinter ihr, lang und schmal, wunderbar gemacht, eine Nachbildung des Parthenonfrieses in Gips, gelblich schimmernd, echt, antik, und alles kam, wie es kommen mußte. A1B1C2D2

花村嘉英(2019)「ハインリッヒ・ベルの『旅人よ、汝スパ…にいたりなば』のバラツキについて」より


ハインリッヒ・ベルの「旅人よ、汝スパ…にいたりなば」のバラツキについて3

2 場面のイメージを分析する

2.1 データの抽出

 作成したデータベースから特性が2つあるカラムを抽出し、標準偏差によるバラツキを調べてみる。例えば、A:五感(1視覚と2それ以外)、B:ジェスチャー(1直示と2隠喩)、C:情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)、D:情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)というように文系と理系のカラムをそれぞれ2つずつ抽出する。

花村嘉英(2019)「ハインリッヒ・ベルの『旅人よ、汝スパ…にいたりなば』のバラツキについて」より

ハインリッヒ・ベルの「旅人よ、汝スパ…にいたりなば」のバラツキについて2

1.2 標準偏差

 標準偏差は、グループの全ての値によってバラツキを決めていく。グループの個々の値から算術平均がどれだけ離れているのかによって、バラツキの大きさが決まる。
グループd(1、1、4、7、7)の算術平均は4である。それぞれの値から算術平均を引くと、1-4=-3、1-4=-3、4-4=0、7-4=3、7-4=3となる。この算術平均から離れている大きさを平均してやると、バラツキの目安が求められる。しかし、-3、-3、0、3、3を全部足すと0になるため、さらに工夫が必要になる。
 例えば、絶対値をとる方法とか値を2乗してマイナスの記号を取る方法がある。2乗した場合、9、9、0、9、9となり、平均値を求めると、5で割って7.2となる。但し、元の単位がcmのときに、2乗すればcm2となるため、7.2を開いて元に戻すと、√7.2 cm2≒2.68 cmというバラツキの大きさになる。
 
(1) 標準偏差の公式
σ=√Σ (Xi−X)2/n

 次にグループe(1、4、4、4、7)について見てみよう。算術平均は4である。それぞれの値から算術平均を引くと、1-4=-3、4-4=0、4-4=0、4-4=0、7-4=3となる。この算術平均から離れている大きさを平均すると、バラツキの目安が求められる。しかし、-3、0、0、0、3を全部足すと0になるため、それぞれを2乗して、9、0、0、0、9として平均値を求め、5で割って3. 6を求める。
 但し、元の単位がcmのときに2乗すれば、cm2となるため、3. 6を開いて元に戻すと、√3. 6 cm2≒1.89 cmというバラツキの大きさになる。従って、グループdの方がグループeよりもバラつきが大きいことになる。
以下では、標準偏差(1)の公式を使用して、作成したハインリッヒ・ベルの「旅人よ、汝スパ…にいたりなば」のデータに関するバラツキから見えてくる特徴を考察していく。 

花村嘉英(2019)「ハインリッヒ・ベルの『旅人よ、汝スパ…にいたりなば』のバラツキについて」より

ハインリッヒ・ベルの「旅人よ、汝スパ…にいたりなば」のバラツキについて1

1 簡単な統計処理

1.1 データのバラツキ

 グループa(5、5、5、5、5)とグループb(3、4、5、6、7)とグループc(1、3、5、7、9)は、算術平均がいずれも5であり、また中央値(メジアン)も同様に5である。算術平均やメジアンを代表値としている限り、この3つのグループは差がないことになる。しかし、バラツキを考えると明らかに違いがある。グループaは、全てが5のため全くバラツキがない。グループbは、5が中心にあり3から7までばらついている。グループcは、1から9までの広範囲に渡ってバラツキが見られる。グループbのバラツキは、グループcのバラツキよりも小さい。  
 次に、グループd(1、1、4、7、7)とグループe(1、4、4、4、7)だと、どちらのバラツキが大きいことになるのだろうか。グループdは、中心の4から3も離れた所に4つの値がある。グループeは、中心に3つの値があって、そこから3離れたところに値が2つある。 
 バラツキの大きさを定義する方法で最も有名なのが、レンジと標準偏差である。レンジはグループの最大値から最小値を引くことにより求めることができる。グループdは、7-1=6で、グループeも7-1=6となる。レンジだけでバラツキを定義すれば、グループdとグループeは同じことになるが、グループ内の最大値と最小値だけを問題にするため、他の値が疎かになっている。そこでもう一つのバラツキに関する定義、標準偏差について見てみよう。

花村嘉英(2019)「ハインリッヒ・ベルの『旅人よ、汝スパ…にいたりなば』のバラツキについて」より

2019年05月07日

ハインリッヒ・ベルの「旅人よ、汝スパ…にいたりなば」で執筆脳を考える12

5 まとめ
 
 受容の読みによる「空間と荒廃の中の不壊」という出力は、すぐに共生の読みの入力となる。続けて、データベースの問題解決の場面を考察すると、「大脳辺縁系と頭頂連合野」という人間の脳の活動と結びつき、その後、信号のフォーカスは、購読脳の出力のポジションに戻る。この分析を繰り返すことにより、「ハインリッヒ・ベルと頭頂連合野」というシナジーのメタファーが作られる。
 この種の実験をおよそ100人の作家で試みている。その際、日本人と外国人60人対40人、男女比4対1、ノーベル賞作家30人を目安に対照言語が独日であることから非英語の比較を意識してできるだけ日本語以外で英語が突出しないように心掛けている。
 
参考文献

佐藤晃一 ドイツ文学史 明治書院 1979
高島明彦 脳のしくみ 日本文芸社 2006
手塚富雄 ドイツ文学案内 岩波文庫別冊3 1981
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015 
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁/戈迪默 ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
花村嘉英 川端康成の「雪国」から見えてくるシナジーのメタファーとは−「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日语教学研究会上海分会論文集 華東理工大学出版社 2019
藤本淳雄他 ドイツ文学史 東京大学出版会 1981
Heinrich Böll Wanderer, kommst du nach Spa… Reclam 1982

ハインリッヒ・ベルの「旅人よ、汝スパ…にいたりなば」で執筆脳を考える11

A 情報の認知1は、B条件反射、情報の認知2は、A新情報、情報の認知3は、A問題未解決から推論へ、人工知能は@、@である。
B 情報の認知1は、B条件反射、情報の認知2は、@旧情報、情報の認知3は、A問題未解決から推論へ、人工知能は@、@である。
C 情報の認知1は、Aグループ化、情報の認知2は、@旧情報、情報の認知3は、@計画から問題解決へ、人工知能は1@、@ある。
D 情報の認知1は、@ベースとプロファイル、情報の認知2は、@旧情報、情報の認知3は、A問題未解決から推論へ、人工知能は@、@である。
E 情報の認知1は、B条件反射、情報の認知2は、A新情報、情報の認知3は、A問題未解決から推論へ、人工知能は@、@である。

結果
 言語の認知の出力「空間と荒廃の中の不壊」が情報の認知の入力となり、まずギムナジウムにある黒板の筆跡に反応する。次に、黒板にある自分の筆跡が情報の認知で新情報となり、結局、「空間と荒廃の中の不壊」は、ベンドルフのギムナジウムにある黒板の自分の筆跡に象徴される一つの変わらぬ空間が、記憶という大脳辺縁系が担う機能と頭頂葉の空間認識を担う連合野からなる組みと相互に作用する。
 記憶については、A、B、Cは個人の経験にまつわる長期記憶で、D、Eは、学習した知識や経験と照合して目的を達成していく作業記憶になる。この場面では空間認識が強いため、ベルの執筆脳は、頭頂葉や頭頂連合野に特徴があるといえる。

花村嘉英(2005)「ハインリッヒ・ベルの『旅人よ、汝スパ…にいたりなば』で執筆脳を考える」より

ハインリッヒ・ベルの「旅人よ、汝スパ…にいたりなば」で執筆脳を考える10

分析例
(1)“Wanderer, kommst du nach Spa…”執筆時のベルの脳の活動を「大脳辺縁系と頭頂連合野」という組からなると考えており、その裏には、先にも書いた、コンパクトなスケッチ風の空間描写を好むベルの文体がある。頭頂連合野は、視覚野とか側頭連合野から視覚の感覚や空間認識の情報を受けて処理している。
(2)頭頂連合野の働きが悪いと、空間認識の情報を処理することはできない。
(3)情報の認知1(感覚情報)
感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、@ベースとプロファイル、Aグループ化、B条件反射である。
(4)情報の認知2(記憶と学習)
外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。また、未知の情報はカテゴリー化されて、経験を通した学習につながる。このプロセルのカラムの特徴は、@旧情報、A新情報である。
(5)情報の認知3(計画、問題解決)
受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、@計画から問題解決へ、A問題未解決から推論へ、である。
(6)人工知能1、2 執筆脳を「空間と荒廃の中の不壊」としているため、心の働きのうち@記憶絡みで大脳辺縁系が重要となり、そこに@空間認識が関係してくる。

花村嘉英(2005)「ハインリッヒ・ベルの『旅人よ、汝スパ…にいたりなば』で執筆脳を考える」より

ハインリッヒ・ベルの「旅人よ、汝スパ…にいたりなば」で執筆脳を考える9

【連想分析2】
表3 情報の認知
主人公が自分の筆跡を黒板で確認する場面

A Irgendwo in einer geheimen Kammer meines Herzens erschrak ich tief und schrecklich, und es fing heftig an zu schlagen: da war meine Handschrift an der Tafel.
情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2、人工知能 1

B Oben in der obersten Zeile. Ich kenne meine Handschrift:es ist schlimmer, als wenn man sich im Spiegel sieht, viel deutlicher, und ich hatte keine Möglichkeit, die Identität meiner Handschrift zu bezweifel
情報の認知1 3、情報の認知2 1、情報の認知3 2、人工知能 1

C Alles andere war kein Beweis gewesen, weder Medea noch Nietzsche, nicht das dinarische Bergfilmprofil noch die Banane aus Togo, und nicht einmal das Kreuzzeichen über der Tür: das alles war in allen Schulen dasselbe, aber ich glaube nicht, daß sie in anderen Schulen mit meiner Handschrift an die Tafeln schreiben.
情報の認知1 2、情報の認知2 1、情報の認知3 1、人工知能 1

D Da stand er noch, der Spruch, den wir damals hatten schreiben müssen, in diesem verzweifelten Leben, das erst drei Monate zurücklag: Wanderer, kommst du nach Spa...
情報の認知1 1、情報の認知2 1、情報の認知3 2、人工知能 1

E Oh, ich weiß, die Tafel war zu kurz gewesen, und der Zeichenlehrer hatte geschimpft, daß ich nicht richtig eingeteilt hatte, die Schrift zu groß gewählt, und er selbst hatte es kopfschüttelnd in der gleichen Größe darunter geschrieben: Wanderer, kommst du nach Spa...
情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2、人工知能 1

花村嘉英(2005)「ハインリッヒ・ベルの『旅人よ、汝スパ…にいたりなば』で執筆脳を考える」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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