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2024年09月11日

花村嘉英 履歴書

氏名 花村 嘉英 (はなむら よしひさ)
生年月日 1961年5月12日(63歳)
住所 〒359‐1132 埼玉県所沢市松が丘2丁目22番地14号
電話/Fax 04-2921-1820
専門 比較言語・文学 (英語、ドイツ語、中国語、日本語)、文体論、計算文学(トーマス・マンとファジィ、魯迅とカオス、森鴎外と感情、ナディン・ゴーディマと意欲、川端康成と認知発達など)、健康科学、シナジー論(人文と情報、心理とメディカル、文化と栄養)、リスク社会学、翻訳学(ドイツ語)

【学歴】
●1977年4月 埼玉県立川越高等学校入学
●1980年3月 埼玉県立川越高等学校卒業
●1981年4月 立教大学文学部ドイツ文学科入学
●1985年3月 立教大学文学部ドイツ文学科卒業
●同年4月 立教大学大学院文学研究科博士前期課程ドイツ文学専攻入学
●1987年3月 立教大学大学院文学研究科博士前期課程ドイツ文学専攻修了
修士論文の題目: Anfangen、beginnen、aufhörenにおける様相因子の動きから生まれる文の曖昧性−モンタギュー文法による形式意味論からの考察
●同年8月 ドイツ・マンハイム大学の夏季語学講座参加
●1988年4月 立教大学大学院文学研究科博士後期課程ドイツ文学専攻入学
●1989年9月-1990年8月 ドイツ・チュービンゲン大学へ交換留学
●1993年3月 立教大学大学院文学研究科博士後期課程ドイツ文学専攻退学
●同年4月チュービンゲン大学大学院新文献学部博士課程ドイツ語学言語学意味論専攻入学
●1995年8月チュービンゲン大学大学院新文献学部博士課程ドイツ語学言語学意味論専攻博士論文提出後退学
博士論文の題目と内容: HPSG für Textanalyse – zur Ironie Thomas Manns 論理文法(モンタギュー文法からGPSG、HPSGまで)の小史ならびにトーマス・マンのイロニーとファジー理論の相性の良さを「魔の山」より考察。論理計算による計算文学とシナジー論の基礎をなす。(2005年5月に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか」と題して出版済 出版証明書付)

「学術関連表彰」
「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(2015)(華東理工大学出版社)
●栄誉証書  大連外国語大学(文献学)2017年3月、
●栄誉証書  南京農業大学(文献学)2017年3月、2017年5月
●捐赠証書(奨励)北京大学 2017年3月
●捐赠証書(奨励)北京外国語大学 2017年3月

【職歴】
「ビジネス翻訳・産業翻訳・著述業(学術): 技術文の校正と機械翻訳並びに特許明細書の和訳」
●1995年10月 博士論文の印刷に向けて電子データを作成する傍ら、技術文の翻訳の勉強を始める。
●1996年8月-1997年11月 ユニバーサルインターアド・コピーライティング部
翻訳のチェッカー、退社後、翻訳スクールに通う。(1998年2月まで)
●1998年3月-1999年9月 富士通ラーニングメディア翻訳事業部
英語の技術文の日本語訳をチェックしていた。富士通グループの製品+外資系企業のソフトウェアのマニュアル及び契約書を担当していたため、技術文特有の用語とか文体について日々勉強していた。工業英語3級合格。実用数学技能検定準2級合格、Fisdomも参照すること。
●Babel 修了講座名 ドイツ語翻訳家養成講座1999年3月、中日契約書翻訳講座2017年10月
ドイツ語の古典新訳のワークショップでゲーテの「イタリア紀行」を共訳し、電子出版した(2010年)。2000年以降は、共生を目指して他の企業の技術文の翻訳プロジェクトにも参加した。
●2003年4月-2004年9月 ソニー・ネットワークエンジニアリング事業部
技術者がプログラムを通して組み立てたソフトウェアの日本語の技術文を現場で英訳した。技術者の説明を反映するために、製品のマニュアルにある表現やIT用語辞典を例にして和文英訳のレポートを作成した。
●2004年10月-2009年2月 機械翻訳(SOHO)
翻訳ソフトTRADOSを使用してドイツ語と英語の技術文をメモリーベースで和訳した。(1日に1500ワード翻訳)対応言語は、独日、英日で、分野は、ソフトウェア、汎用機械および特許である。レポート作成済み(「産業日本語の学習法とその応用例」)また、トーマス・マンとファジィ理論に関しても文理シナジー学会で発表し、2005年5月に「計算文学入門−トーマス・マンのイロニーはファジィ推論といえるのか?」を出版した。私にとって翻訳作業は、文理共生の下支えである。
●エイブス・メディカル翻訳修了講座 英和入門2014年5月、英和初級2015年9月、英和上級2016年2月
●2016年3月- 2021年10月 独日特許翻訳(SOHO)
バイオ、医療機器、技術関連(特許デイタセンター及び協和テクノサービス、翻訳エディタ使用)
●2020年11月- 2022年4月 「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファ―の原点を探る」の校正。
●2022年9月- 2023年5月 「小説をシナジーで読む−魯迅から莫言へ シナジーのメタファ―のために」の校正。
●2023年8月- 2024年2月「小説をシナジーで読む−森鴎外から川端康成へ データベースと病跡学に備えて」の校正。
●2024年4月- 2024年8月 「私の病跡学−作家の執筆脳を比較と共生で考える」の校正。

「日本語専門家: 教授法」
●2009年3月-2011年1月 武漢科技大学外語外事職業学院外国語学部日本語科
1年生と2年生の日本語会話を担当した。教材は、「みんなの日本語」と「日本語会話技巧編」等である。共にクラスを通して会話の場面のイメージ作りを試みた。例えば、基礎レベルでは日本語能力試験を模して質問文を読む間に音声から漢字を連想するトレーニングをした。学生が漢字系の学習者ためである。技巧編ではロールカードを使用してペアワークによる場面のイメージ作りを試みた。内容は、学内の研究発表会で説明済。
●2011年2月-2012年1月 集美大学外国語学部日本語科
3年生を対象に日本語の作文と中日翻訳の演習を担当した。教材は、それぞれ「实用日语写作教程」と「汉译日精教程」である。また、2年生の日本概況と1年生の日本語会話も担当した。内容については、「中日翻訳の高速化」と題して延辺大学の中日韓朝比較言語文学の学会で発表した。
●2012年2月-2013年1月 天津外国語大学外国語学部日本語科
3年生を対象に日本語の作文と新聞購読の演習を担当した。教材は「实用日语写作教程」と「構成/特徴/分野から学ぶ新聞の読解」である。作文では添削指導をし、新聞購読では教材終了後、直近の日本の新聞記事を使用して要約のトレーニングも試みた。内容については、国際日本語教育研究大会(名古屋大学)で発表済。
●2013年9月-2014年1月 湖南科技学院外国語学部日本語科
3年生は「日本語総合教程第5冊」のクラスを、4年生は金田一春彦著「日本語上下」を用いて日本語学の講義を担当した。インフルエンザのため帰国。休暇中に森鴎外の「山椒大夫」を題材にしてデータベースを作成した。また、在任中、四川外国語大学の国際シンポジウムで「魯迅とカオス」について研究発表をした。
●2014年9月- 2015年1月 武昌理工学院国際教育学院
文法外国語学部の日本語科の1、3、4年生のクラスを担当。例えば、4年生の「視听说」のクラスではDVDを使用しながら総合的な日本語のトレーニングを試みた。また、中日教学研究会江蘇分会で森鴎外の「山椒大夫」のデータベースについて発表した。(2014年11月)
●2015年3月-2016年1月 寧波大红鹰学院人文学部日本語科
3年生はビジネス日本語と中日通訳のための日本語のシャドウィング及び作文のクラス、4年生は日本の経済学入門を担当。1、2年生は日本語会話の上下巻を担当した。また、在任中に中日対照言語学研究会(上海外国語大学)で「技術日本語の学習法とその応用例」と題して研究発表をし、華東理工大学出版社から著作「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」を出版した。(2015年11月)
●2016年9月-2017年6月 盐城工学院外国語学部日本語科
4年生は視听说、3年生は日本概況、日本文学史、新聞雑誌購読、作文、2年生は中級日本語听力を担当した。また、上海の同済大学で開催された中日教学研究会上海分会で「シナジーのメタファーの作り方」と題して研究発表をし、南京東南大学出版社から著作「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」を出版した。(2017年6月)
●2018年3月-2019年1月 大連交通大学外国語学部日本語学科
3年生は日本語の基礎作文とビジネスメールの書き方に関する演習を、2年生は中級日本語会話を担当した。また、上海の同済大学で開催された中日教学研究会上海分会で「川端康成の『雪国』から見えてくるシナジーのメタファーとは」と題して研究発表をした。

「取得した主な資格」
●日本成人病予防協会(JAPA)健康管理士一般指導員認定2015年3月、健康管理能力検定1級取得 2015年3月、健康管理士ゴールド認定 2017年4月、健康管理士上級指導員認定 2020年3月、健康管理士統括指導員認定 2023年10月
●予防医学・代替医療振興協会修了講座 予防医学指導士 2015年12月、代替医療カウンセラー 2016年4月、認知症ケアカウンセラー 2016年12月
●Babel 中日契約書翻訳講座修了 2017年10月
●フードデリバリー 熱中症対策アドバイザー認定 2018年7月
●ソラスト修了講座 医師事務作業補助者(ドクターズオフィスワークアシスト)養成講座 2018年10月、医療事務講座クリニックコース 2019年3月
●技能認定振興協会(JSMA)医師事務作業補助者検定試験合格 2019年4年
●埼玉西武消防組合 甲種防火管理新規講習修了 2019年5月
●日本学術振興会 研究倫理eラーニング 「事例で「学ぶ/考える」研究倫理 誠実な科学者の心得」修了 2019年8月
●日本癌治療学会 Cancer eラーニング 104講座修了 受講証明書有 2019年8月
●ICR臨床研究入門修了講座 臨床研究の基礎知識講座、倫理審査委員会向けの倫理研修、臨床研究のデータベースマネージメント、再生医療研究のインフォームド・コンセント、臨床研究法 2019年8月
●Fisdom修了講座 10進法を2進法に変換、暗号化、パリティチェック、情報リテラシー Office2016、統計学入門、Python入門、学校における無線ネットワークの作り方、安全学入門、インターネットセキュリティ、情報法 2019年10月
●JTEX修了講座 製薬・医薬品の基礎 2019年10月、知的財産権入門 2019年12月
●東京女子医科大学 教育・支援プログラム 100講座修了 2020年2月
●動脈硬化予防啓発セミナー eラーニング 55講座修了 2020年5月
●INPIT 工業所有権研修・情報館 eラーニング 20講座受講済 2020年5月
●日本能力開発推進協会 マインドフルネススペシャリスト検定試験合格 2020年10月、上級心理カウンセラー検定試験合格2021年7月、行動心理士検定試験合格 2023年1月
●医療情報処理学会医療情報技師育成部会 eラーニング受講講座 医療情報基礎用語集、個人情報保護法の影響、医療統計セミナーB 2024年9月現在
●Gacco修了講座 セキュリティ・プライバシ・法令、公衆無線LANセキュリティ対策、SDGs(持続可能な開発目標)入門 、Memento Moriー死を想う、大学生のためのデータサイエンス、社会人のためのデータサイエンス 、多変量データ解析法 、統計学−データ分析の基礎、誰でも使えるオープンデータ、進化発生学入門、心理学スパイラルアップ、推論・知識処理・自然言語処理、クラウド基盤構築演習、アーキテクチャ・品質エンジニアリング、スマートIoTシステム・ビジネス入門、IoTとシステムズアプローチ、クラウドサービス・分散システム、センサ、機械学習、深層学習、社会の中のAI、ビジネスフィールドでのAI・データ活用スキル、がんゲノム医療オンライン講座2020 2024年9月現在

「所属協会及び研究会」
●日本成人病予防協会 
https://fanblogs.jp/hanamura4/ 研究一覧

【連絡先】
電話 04-2921-1820、メール hanamura36@gmail.com

フォーマットのシフト18ーモンターギュ文法のシュガーリング

 照応表現の指示は、その表現が現れる文脈内で一意に規定されなけれ ばならない。そこでRanta(1991)は、代名詞を擬似的に範疇化される表現と見なし、照応の依存領域に関する生成方法を問題にした。文脈内で形成される命題は、変項が文脈において自由に出現することを認めている。つまり、タイプ理論と同様に命題の力によって、さらに命題を形成するために、照応の依存関係や前提が所与の命題の真理値を予め仮定することができると考えている。
 文は、命題ではなく形式の判断である。個々の命題は、先行する文脈に依存し、テキストは、形式の文脈として表現される。その際、文に対する証明は、一般的に定項ではなく、変項として生成される。直感主義論理は、テキストのダイナミズムを処理するためにこのような方法を採用している。

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト17ーモンターギュ文法のシュガーリング

 直感主義論理に基づいた簡単なドイツ語の文法を考察する。レキシコンは、基本表現に範疇を割り当てていく。範疇文法は、直感主義のタイプ理論を形式化する規則である。そしてシュガーリングの規則は、形式化された表現がドイツ語として認知される語彙の連鎖を返す。
 Ranta (1991)の文法とMontague文法の違いは、前者がシュガーリングと意味の説明の基礎となる表現を形式化しているにすぎない点である。Montague文法は、@基本表現を分析榭に結合させ、A分析樹を単純な文にシュガーリングするといった二重構造になっている。
 レキシコンを考察しよう。普通名詞、固有名詞、動詞および形容詞が範疇化される。語彙登録は、シュガーリングのパターン(N0、V1、A1)を示している。レキシコンを持つことによって、名詞の集合や動詞の関数が定義され、上述した煤A∏、pair、λ、p、q、apといった演算子もそこに含まれる。さらに、SとNという演算子が導入される。これらは、タイプ理論の命題表現を変数として取り、文章と名詞を返す。

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト16ーモンターギュ文法のシュガーリング

 ここでは、直感主義論理に基づいた簡単なドイツ語の文法を導入する。直感主義は、論理の系統の中で様相論理などと共に多値論理のグループに属し、やはり量化の表現に真理値を割り当てる上で古典的な二値論理では不十分であるという立場を取る。また、直感主義を用いた自然言語に関する証明は、コンピュータのプログラムにも通じる方法であり、Ranta (1991)は、MontagueのPTQを土台にした英語の断片を提示している。ここで導入するドイツ語の文法は、レキシコン、範疇文法そしてシュガーリングを構成要素にする。
 まず前提として、テキストのダイナミズムを直接反映するために、Ranta (1991)は、Matin-Löf (1982)のタイプ理論を取り入れた。Matin-Löfの動機は、統語論と意味論を数学によって明確にするという立場から、 直感主義の数学とプログラミング間をつなぐために(例えば、argument とinput、valueとoutput、x=eとx:=e、関数の合成とS1;S2、条件の定義とif B then S1 else S2、回帰の定義とwhile B do Sなど)、直感主義のタイプ理論を考案した。(Matin-Löf 1982)
 直感主義のタイプ理論は、命題の表現を持っている。まず複合命題を考えてみよう。(66)は、領域Aの中で解釈される述語計算の(ヨx)と(∀x) に相応する。但し、タイプ理論が述語計算に比べてより形式的になっている点に違いがある。それは、タイプ理論が、命題や判断(または主張)を明確にするためである。命題は、判断の一部であるが、その逆となる ことはない。ここでは、A: propは、命題Aが適格な式であるという判断を意味している。a: Aは、Aが真であるという判断である。つまり、aはAの証明になる。こうした判断は、 例えば、疑問文などに生じることがある。
 演算子狽ニ∏は、ドイツ語の文章を形式化する場合、述語計算の(ヨx) や(∀x)と同じ方法で使用される。つまり、直感主義タイプの理論の量化表現を含む命題をドイツ語の文章へシュガーリングする規則と原子的な命題のシュガーリングの規則により、Ein Mann keucht. が派生することになる。
 しかし、自然言語を処理するためにタイプ理論をさらに豊かにする必要がある。一般化された関数のタイプ(x:α)ßの中で判断ができるようにした。判断は、変項に対するタイプ割り当ての中で行われる。そして、仮定の連鎖は、文脈(x1: α1,…, xn:αn )になる。例えば、判断Jが文脈の中で実行される場合、変項x1,…, xnは、自由にJの中に現れることになる。また、判断Jが文脈の中で行われ、定項も(a1: α1,…,an:αn(a1,…, an-1/x1,…, xn-1)が変項x1,…, xnと置換される場合、判断が文脈に依存することはない。 

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト15ーモンターギュ文法のシュガーリング

(46) Die Hilfsregelungen
(REFL) C (a, a) > C (a, REFL (A)) für C: (A) (A) prop atomic.
(M) für jedes atomares C und Variable x,
C(d (p * x))>C(d (Mx))
C (d (p * x), b) > C (d (Mx), b)
C (a, d (p * x)) > C (a, d (Mx)), wenn a kein Mx enthält;
p * x ist irgendein x, p (x), p (p (x)) und d (c) ist c, Vetter (c), Mutter (Vetter (c)).

Die Regelung (M) erzeugt z.B.,

schlafen (x) > schlafen (Mx);
lieben (Vetter (p (x)), p (x)) > lieben (Vetter (Mx), p (x));
verwenden (p (q (x)), p (x)) > verwenden (p (q (x)), Mx).
(SPECTRUM) C (a) > C (a {PRON (A), die-N (A)}) für C: (A)α.

Die Operationen S und N.
(THERE) S (A) > es_ist_INDEF-N (A).

(Q) S((肺:A)B)>
S (B [{INDEF-N (A), ein-N (A), ein gewisses N (A)} / Mx])
S ((Πx: A) B) >
S (B [{jedes-N (A), ein-N (A), jedes-N(A)} / Mx])
wenn es ein Mk in B gibt.
(C) S ((肺: A) B) > (S (A))_und_(S(B))
S (Πx: A) B) > wenn_(S(A))_(S(A))_(S(B))
(R) N ((肺: A) B) > (N (A)) - REL (x: A) - (S(B))

(N0) N(C) > C
(VI) S (C (a)) > a_VF (C)
(V2) S (C (a, b)) > a_VF (C) _ACC (b)
(Al) S (C (a)) > a_VF (sein) _C
(T0) c > c
(T1) c (a) > GEN (a, c)

Die Sugaringsregelungen nehmen die morphologischen Operatoren VF (verb form), ACC (accusative), GEN (genetive), INDEF (indifinite article), PRON (personal pronoun of type A), INDEF-A (“A” preceded by “a” or “an”),PRON (A) (personal pronoun of type A) und REL (x: A) (relative pronoun).
 Die Pronomen und die Phrasen haben ähnliche Quasikategorisierungen.

(47)
PRON < (X) (x) x: (X: set) (X) X,
the < (X) (x) X: (X: set) (X) X.

Hier handelt es sich darum, zu illustrieren, wie der abhängige Bereich der Anapher erzeugt wird. Die Proposition "verwenden" (p(z), p(q(z))), die im Kontext “z: (肺: Mann) (輩: Bleistift) besitzen (x, y)"> geformt wird, enthält freie Erscheinungen der Variable z, die ein Objekt im Kontext erwähnt. Kraft der Propositionen wie Typentheorie werden die Abhängigkeit der Anapher und die Präsuppositionen in solchem Sinn bewertet, daß man die Wahrheit einer gegebenen Propositionen präsupponieren kann, um eine weitere Proposition zu formen.

(48) B: prop (A: true) bedeutet B: prop (x: A).

 Um ein Text darzustellen, wird es schon erklärt, daß die volle Darstellung eines indikativen Satzes keine Proposition, sondern ein Urteil der Form a: A ist. Für einen gegebenen indikativen Satz kann der Beweis im allgemeinen als keine Konstante, sondern als eine Variable wieder hergestellt werden. Das Text wird als das Kontext der folgenden Form dargestellt.

(49) x1:A1,...,xn:An,

wo jede Proposition Ak abhängig vom vorausgehenden Kontext ist. Die intuitionistische Logik nimmt diesen Weg an, um die Dynamischheit eines Textes zu behandeln.

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト14ーモンターギュ文法のシュガーリング

(40)
a. Kategorisieren Sie, was Sie können.
b. Kategorisieren Sie nicht, was Sie nicht können.
c. Kategorisieren Sie quasi gleichbedeutend, was Sie können.

 (40)a fordert, daß viele deutschen Ausdrücke den typentheoretischen Bedeutungen direkt zugewiesen werden. Aber wenn die Kategorisierungen auch ihre ontologische Lesarten haben, muß man den vollen typentheoretischen Sinn jeder kategorisierten Ausdrücke haben können. Das führt zum zweiten Prinzip (40)b, das die Kategorisierung der deutschen Quantoren “irgendein”,“jeder” und “manch” ausschließt, weil diese Wörter nicht immer verwendet werden können, um zu beschreiben, was “Π" und “" ausdrücken.

(41)
jeder: (X: set) ((X) prop) prop,
jeder: Π: (X: set) ((X) prop) prop.

Hier kann man den Sugaringsprozeß von (42) zu (43) verwenden, indem ajeder Patient” durch “X” substituiert wird.

(42) (jeder x: Patient) (weggehen (x) ⊃ Behrens ist froh).

(43) Wenn jeder Patient weggeht, ist Behrens froh.

Aber wenn das deutsche Wort “jeder” einen starken Sinn hat, kann der Sugaringsprozeß keine Bedeutung erhalten. Es handelt sich um den Prozeß von Π.
 Es gibt einen schwachen Sinn, in dem "jeder" eine einzigartige Bedeutung hat. Für "jeder" ist er Π, während der unbestimmte Artikel "ein" in gleicher Weise hat. Die Eigenschaften der Sugaringsregelungen werden durch die Quasikategorisierungen ausgedrückt.

(44)
jeder < Π: (X: set) ((X) prop) prop,
INDEF < : (X: set) ((X) prop) prop.

Wenn ein Ausdruck quasikategorisiert wird, wird immer für die unbestimmte Artikel erzeugt, weil eine Parsingsregelung sie in der gleichenförmigen Weise behandeln kann (siehe (40)c).
 Hier wird das Lexikon eingefiihrt. Die Terminologien sind ein Substantiv, ein Verb und ein Adjektiv und deuten die Ausdrücke für die Menge, die propositionale Funktion und die Funktion an, die ein Individum als den Wert bestimmt. Die lexikalischen Einträge zeigen auch die Sugaringsmuster N0, V1 und V2 usw.

(45)
Mann: Menge von N0
schlafen: (Mann) prop von V1
besitzen: (Mann) (Bleistift) prop von V2
jung: (Mann) prop von A1
Joachim: Mann von T0
Vetter: (Mann) Mann von T1.

Das Lexikon fordert, daß man die Menge “Mann” und die Funktion “schlafen” in einer angemessenen Weise definiert. Die typentheoretische Sprache wird nicht interpretiert wie die intensionale Logik in PTQ. Allerdings enthält das Lexikon die Operatoren , Π, pair, λ, p, q and pq in (32), (33), (34) und (35).
 Zudem werden noch zwei Operationen S und N definiert, die die propositionalen Ausdrücke der Typentheorien in der niedrigeren Ebene als die Argumente nehmen und sie in die Sätze und die Substantive zurückgeben. Zum Beispiel gibt es keinen Weg, der N ((Πx: A)B) ausführt. Wenn der Sugaringsprozeß zum Form weitergeht, muß man einen Weg finden, in dem S ((Πx: A)B) erscheint.
 Es handelt sich um das System der Sugaringsregelungen, das ein kleines Fragment (für die Hilfsregelungen) erzeugt. Die Bezeichnung [E/F] weist auf der Substitution des Ausdrucks E durch den Ausdruck F hin. Der Skopus ist der vorgehende Ausdruck, der durch die Klammern abgegrenzt wird. Die Bezeichnung {E, F, G} weist darauf hin, daß E, F und G alternativ sind.

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より


フォーマットのシフト13ーモンターギュ文法のシュガーリング

 Wollen wir hier die intuitionistische Grammatik für das deutsche Fragment betrachten. Die Grammatik besteht aus manchen Komponenten. Zuerst das Lexion, das den grundlegenden Ausdrücken die Kategorie zuweist. Ferner die kategoriale Grammatik, die aus den Regelungen der intuitionistischen und typentheoretischen Formalismus besteht. Schließlich die Sugaringsregelungen, durch die sich die Ausdrücke des Formalismus zu den deutschen Wörtern verwandeln können.
 Die Sugaringsregelungen sind überhaupt nicht eins zu eins. Im allgemeinen kann ein formaler Ausdruck durch die Sugaringsregelungen in viele alternativen deutschen Ausdrücke bearbeitet werden. Einerseits gibt es gleichbedeutende Ausdrücke. Andererseits gibt es ambige Ausdrücke. Es ist doch zu bemerken, daß das Synonym keine äquivalente Beziehung zwischen deutschen Sätzen ist, weil es folgende Beispiele geben mag.

(36)
F>E und F>E', aber nicht F>EW'';
F'>E' und F'>E'', aber nicht F'>E.

E und E' sind gleichbedeutend, und E' und E'' sind auch so, aber E und E'' sind nicht so.

(37)
F = (肺: Frau) (Πy: Mann) lieben (x, y).
F’ = (Πy: Mann) (肺: Frau) lieben (x, y).
E = Hier ist eine Frau, die jeden Mann liebt.
E' = Eine Frau liebt jeden Mann.
E'' = Wenn ein Mann hier ist, ist eine Frau da, das ihn liebt.

(38)
Lexikon → Formalismus  → Deutsch
Kategoriale Grammatik  Sugaring

 Die Grammatik (38) kann mit der Struktur der PTQ Grammatik vergleicht werden. Die syntaktischen Regelungen der Montague Grammatik spielen eine Doppelrolle wie (i) Verbindung der grundlegenden Ausdrücke mit den Analysenbäumen und (ii) "Sugaring" der Analysenbäume ins einfache Deutsch.

(39)
        S-Regelungen (i)  S-Regelungen (ii)
Grundlegende Ausdrücke  → Analysenbäume →  Deutsch
               ↓  
  Übersetzung   Intensionale Logik

 Der Unterschied besteht darin, daß es nur einen Formalismus gibt, der auf den Sugaringsregelungen und den Bedeutungsausdrücken beruht. Wenn ein logischer Formalismus als die Grundlage der Erzeugung der deutschen Sätze verwendet wird, kann die Erzeugung die effektiven semantischen Bedingungen der Wohlgeformtheit bilden.

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト12ーモンターギュ文法のシュガーリング

 Die einfache Typentheorie ist überhaupt nicht genug für die formale Sprache. Um sie vollständig zu formalisieren, ist die reichere Typentheorie gebraucht. Wollen wir die folgenden Urteile betrachten.

(31)
Urteil α: type, α=ß: type, a: α, a=b: α  
Welche Voraussetzungen -, α:type, ß: type. α: type, α: type, a: α, b: α           
bedeutet daß α ist eine Type, α und ß sind gleiche Typen, a ist ein Objekt von α, a und b sind gleiche Objekte von a.

 Alle Urteile können unter Hypothesen (x: α) gemacht werden, die den Variablen die Typen zuweisen. Ein Kontext ist eine Folge der Hypothesen, deren Form x1:α,...,xn:α ist. Wenn ein Urteil J im Kontext gemacht wird, mögen Variable x1,...,xn in J frei erscheinen. Wenn ein Urteil J im Kontext gemacht wird und Konstanten a1: α1,...,an:αn (a1,...,an-1/x1,...,xn-1) durch Variablen x1,...,xn in J substituiert werden, ist ein Urteil unabhängig vom Kontext.
 Wollen wir weiter und Π auf dem höheren Niveau betrachten. Die Type "prop" einer Proposition wird eingeführt (prop: type und prop = set: type). ist ein Operator, der als das Argument eine Menge und eine propositionale Funktion nimmt, die auf der Menge definiert wird und eine Proposition herausbringt.

(32) : (X:set)((X) prop) prop.

Die Syntax des höheren Niveaus ist (A, B), wo A:set und B:(A) prop eingesetzt werden. Wenn ein Element von (A, B) durch das Operator "pair" geformt wird, sind ein Element a: A und ein Beweis von B(a) gebraucht.

(33) pair: (X:set)(Y: (X)prop)(x:X)(Y(x))(X,Y).

 Die Projektionen (p und q), die ein Element von A und einen Beweis von B(p(c)) durch einen Beweis c:(A, B) erzeugen, werden in (34) eingeführt. Allerdings sind sie nicht kanonisch.

(34)
p: (X:set)(Y: (X) prop)(z:(X,Y))X;
q: (X:set)(Y: (X) prop)(z:(X,Y))Y(p(X,Y,z)).

 Π ist die gleiche Type wie . Aber die monomorphische λ-Abstraktion und das ap-Operator werden eingeführt, um die monomorphische Regelungen aus der Zuweisung der Kategorien abzuleiten. Die Regelungen entsprechen den polymorphischen Typentheorien, die Matin-Löf darstellte. Diese Operatoren wie , Π, pair, λ, p, q und ap werden im Lexikon der deutschen Grammatik enthalten.

(35)
Π: (X:set)((X) prop) prop;
λ: (X:set)(Y: (X) prop)((x:X)Y) Π(X:Y);
ap: (X:set)(Y: (X)prop)(Π(X:Y))(x:X) Y(x).

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト11ーモンターギュ文法のシュガーリング

(23)
Urteil Wo bedeutet daß

A: prop - A ist eine Proposition.
A=B: prop A: prop, B: prop A und B sind gleiche Propositionen.
a: A A: prop a ist ein Beweis von A.
a=b: A A: prop, a: A, b: A a und b sind gleiche Beweise von A.

 Der Urteil einer Form "A ist eine wohlgeformte Formel" entspricht der Form "A: prop” und der Urteil einer Form “A ist wahr” entspricht der Form “a: A”. Allerdings muß der Beweis für die Formalisierung einer Folge der Sätzen explizit gemacht werden.

(24) Ein Mann keucht.

wird formalisiert wie folgt.

(25) (肺: Mann) keuchen (x).

Das entspricht der Formel der Prädikatenrechnungen wie (26).

(26) (∃x)(Mann (x) & keuchen (x)).

Der große Bereich kann auch verwendet werden.

(27) (肺: D)(Mann (x) & keuchen (x)).

Solche Form ist allerdings für die richtige Formalisierung der Ausdrürcke wie “jeder” und “meist” gebraucht.

(28) Jeder Mann keucht.

(29) (Πx: Mann) keuchen (x).

 Durch eine einfache Regelung (Q), die für "Sugaring" der quantifizierten Propositionen in die deutschen Sätze gegeben wird, und durch die Regelungen für “Sugaring” der atomaren Propositionen kann ein Satz (68) aus (69) abgeleitet werden. Die obengenannte Typentheorie ist polymorphisch.

(30) (Πx: Patient) (輩: Thermometer) besitzen (x, y)
> Jeder Patient besitzt einen Thermometer.

(30) ist ein Beispiel mit zwei Quantoren. Das Zeichen “>” zwischen zwei Ausdrücken wird als “can be sugared into” gelesen.

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト10ーモンターギュ文法のシュガーリング

 Die intuitionistische Logik wird in der Grammatik einer natürlichen Sprache kaum verwendet. Aber es handelt sich hier um die Formalisierung einer natürlichen Sprache in die mtuitionistische Logik, weil der intuitionistische Beweis so ähnlich dem Begrifl eines Computerprogramms ist. Ranta nimmt eine Grammatik eines englischen Fragments an, die ähnlich der Struktur von PTQ ist. Zuerst betrachtet Ranta die Quantoren und Anaphern, und dann diskutiert zusätzlich die Dynamischheit eines Textes.
 Ranta stellt auf Matin-Lör hin die intuitionistische Typentheorie vor. Die intuitionistische Typentheorie hat die Ausdrücke für Propositionen.

(22) (肺: A) B and (Πx: A) B.

 Die Ausdrücke entsprechen (∃x) und (∀x) in der Prädikatenrechnung,die im Bereich A interpretiert wird. Der Unterschied besteht darin, daß die Typentheorie einen Bereich und/oder einen Urteil (oder eine Behauptung) explizit macht. Die Typentheorie ist noch formaler als die Prädikatenrechnung. Der Bereich kann nur von der Interpretation verstanden werden. Der Urteil ist noch breiter in einem Skopus als die Proposition, die als ein Teil eines Urteils angesehen werden mag.

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より)

フォーマットのシフト9ーモンターギュ文法のシュガーリング

 Der zweite Unterschied zwischen der DPL- und der DRS Sprachen besteht darin, daß dieser zwar Negation, Folgerung und Disjunktion, aber keine Konjunktion und keine Quantoren enthält.

(20) Definition der DPL Semantik

1. [[Rt1,...,tn]] = {|h = g & <[[t1]]h,...,[[tn]]h∈F(R)}.
2. [[t1,...,t2]] = {|h = g & [[t1]]h = [[t2]]h}.
3. [[-Φ]] = {|h = g & -ヨk:∈[[Φ]]}.
4. [[Φ ⋀ Ψ]] = {|ヨk:∈[[Φ]] & ∈[[Ψ]]}.
5. [[Φ V Ψ]] = {|h = g & ヨk:∈ [[Φ ]] V ∈[[Ψ]]}.
6. [[Φ→Ψ]] = {|h = g & ∀k:∈ [[Φ]] ⇒ヨj:∈ [[Ψ]]}.
7. [[ヨxΦ]] = {|ヨk:k[x]g & ∈[[Φ]]}.
8. [[∀xΦ]] = {|h = g & ∀k:k[x]h ⇒ ヨj:∈ [[Φ]]}.

 Ein Modell ist ein Paar , wo D keine leere Menge von Individuen ist. F ist eine Funktion der Interpretation, die als den Definitionsbereich die individuellen Konstanten und Prädikaten hat. Wenn α eine individuelle Konstante ist, dann F(α)⊆D; wenn α ein n-stelliges Präaikat ist, dann F(α)⊆Dn. Eine Zuweisung g ist eine Funktion, die jeder Variable ein Individuum zuweist: g(x)∈D. G ist die Menge aller Zuweisungsfunktionen. Dann wird [[t]]g = g(t) definiert, wenn t eine Variable ist, und [[t]]g = F(t), wenn t eine individuelle Konstante ist. Schließlich wird die FunKtion für die Interpretation [[ ]]DPL M⊆G x G definiert. (M ist maximal.)

(21) Definition der DRT Semantik

1. [[Rt...,tn]]Cond = {g|<[[t1]]g,...,[[tn]]g>∈F(R)}.
2. [[t1=tn]]Cond = {g|[[t1]]g=[[t2]]g}.
3. [[-Φ]]Cond = {g|-ヨh:∈[[Φ]]DRS}.
4. [[Φ V Ψ]]Cond = {g|ヨh:∈ [[Φ]]DRS V ∈[[Ψ]]DRS}.
5. [[Φ → Ψ]]Cond = {g|∀h:∈[[Φ]]DRS⇒ヨk:[[Ψ]]DRS}.
6. [[x1,…,xk][Φ1,...,Φn]]DRS = {|h[x1,...,xk]g & h∈[[Φ1]]Cond&...&h∈[[Φn]]Cond}.

 Hier entspricht ∈ [[Φ]]DRS dem Begriff "h ist eine bestätigende Einbettung von Φ bezüglich g". Da DRS durch die Bedingungen gebildet wird, braucht man einen Begriff der Interpretation der Bedingung [[ ]]Con M ⊆G zu definieren (M ist maximal), wo g∈ [[Φ]]Cond dem Begriff “Φ ist wahr bezüglich g” entspricht.
 Das Modell für die DRS Sprache ist identisch mit DPL. Die Zuweisung und die Interpretation der Terminologien werden auch in den beiden Theorien in gleicher Weise behandelt. Allerdings ist die DPL Formel etwas anderes als die Bedingung von DRT. Das heißt, DPL hält die Zuweisungen für die totalen
Funktionen. Deswegen könnte die Semantik von DPL auch bezüglich der partiellen Zuweisungen begleitet werden.
 Um die Semantik einschließlich Diskurs oder Text in einem Übersetzungsprogramm zu behandeln, wollte man einen Text in der Art und Weise wie “Processing” interpretieren können. Die Komposidonalität war zwar ein intuitiver Weg. Manchmal postulierte doch keine kompositionle Semantik eine vermittelte Ebene zwischen der syntaktischen Form und der eigentlichen Bedeutung für die semantischen Darstellungen wie z.B. Anapher. Das heißt, viele Semantiker nehmen den Standpunkt an, daß der Unterschied zwischen den Anaphern noch mehr in der logischen Form liegt als im Inhalt, trotzdem die Situation gleich ist und die Wahrheitsbedingung auch keinen Unterschied hat.

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト8ーモンターギュ文法のシュガーリング

 In den Achtzigerjahren wurde es in der modelltheoretischen Semantik so angenommen, daß das Prinzip der Kompositionalität beseitigt werden sollte. In der Tat nahmen die verschiedenen Ansätze zur modelltheoretischen Semantik über den Diskurs als ein Ausgangspunkt keine Kompositionalität an. Das war wirklich ein Hindernis, wenn man die neueren Ansätze mit den älteren Ansätzen vergleichte.
 Wollen wir hier DPL mit DRT nur etwas vergleichen. DPL hat zwar die Absicht, empirisch equivalent zu DRT zu sein, aber es gibt folgende Unterschiede zwischen beiden Theorien. Zuerst wird der syntaktische Unterschied zwischen den Bedingungen und DRS (discource representation structure) gemacht. In DRS werden die Sätze und Diskurse einer natürlichen Sprachen dargestellt. Die Bedingungen sind die Elemente, die durch DRS konstruiert werden. Mit anderen Worten erscheinen die Bedingungen als die Subausdrücke von DRS.

(18) Definition der DPL Syntax

1. Wenn t,...,tn individuelle Konstanten oder Variablen sind und R ein n- stelliges Prädikat ist, dann ist Rt,..,tn eine Formel.
2. Wenn tj und t2 individuelle Konstanten oder Variablen sind, dann ist t1= t2 eine Formel.
3. Wenn Φ eine Formel ist, dann ist -Φ eine Formel.
4. Wenn Φ und Ψ Formeln sind, dann ist [Φ⋀Ψ] eine Formel.
5. Wenn Φ und Ψ Formeln sind, dann ist [Φ∨Ψ] eine Formel.
6. Wenn Φ und Ψ Formeln sind, dann ist [Φ→Ψ] eine Formel.
7. Werm Φ eine Formel ist und x eine Variable ist, dann ist ヨxΦ eine Formel.
8. Wenn Φ eine Formel ist und x eine Variable ist, dann ist ∀xΦ eine Formel.
9. Eine Formel ist nichts als der Grund 1-8.

 Das keine logische Vokabular von DPL besteht aus n-stelligen Prädikaten, individuellen Konstanten und Variablen. Die logischen Konstanten sind Negation -,Konjunktion ⋀ ,Disjunktion ∨,Folgerung →,Existenzquantor ヨ,Allquantor ∀ und. Identität =. Somit ist die Syntax von DPL die Syntax der normalen Prädikatenlogik.

(19) Definition der DRT Syntax

1. Wenn t1,...,tn individuelle Konstanten oder Variablen sind und R ein n-stelliges Prädilcat ist, dann ist Rt,...,tn eine Bedingung.
2. Wenn t1 und tn individuelle Konstanten oder Variablen sind, dann ist t1= t2 eine Bedingung.
3. Wenn Φ eine DRS ist, dann ist -Φ eine Bedingung.
4. Wenn Φ und Ψ DRSn sind, dann ist [Φ ∨ Ψ] eine Bedingung.
5. Wenn Φ und Ψ DRSn sind, dann ist [Φ→Ψ] eine Bedingung.
6. Wenn Φ1,...,Φn (n = 0) Bedingungen sind und x1,...,xk Variablen (k = 0) sind, dann ist [x1,...,xk] [x1,...,xn] eine DRS.
7. Eine Bedingung oder eine DRS ist nichts als der Grund 1-6.

 Das keine logische Vokabular besteht aus n-stelligen Prädikaten, individuellen Konstanten und Variablen. Die logischen Konstanten sind Negation -, Folgerung → und Identität =.

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト7ーモンターギュ文法のシュガーリング

 Die Wichtigkeit der Montague Grammatik besteht nicht nur in der ausdrucksvollen Kraft ihres Formalismus, sondern auch in ihrer ausfühlichen Erklärung über die Beziehung zwischen dem englischen Fragment und dem Formalismus. Allerdings hat die Grammatik keine Formalisierung für die englische Sprache, sonderen die Regelungen für “Sugaring in die Sprache und die Überseztung in die intensionale Logik. Die analytischen Bäume konstituieren die formale Sprache. Das Fragment wird durch "Sugaring" bekommen. Die folgende Figur zeigt die Struktur der PTQ- Grammatik.

(13)          
Analytische Bäume → Sugaring → Englisch

        ↓ Übersetzung
     
     Intensionale Logik

 Die Montague Grammatik wird manchmal als kompositional betrachtet, wenn sie dafür gehalten wird, daß jeder englische Ausdruck eine definitive Übersetzung in die intensionale Logik hat und wenn die Übersetzung jedes komplexen Ausdrucks durch die Übersetzung seiner Teile bestimmt wird. Statt der einfachen englischen Sprache erwähnt der Ausdruck auch die analytischen Bäume. Das macht zwar die Kompositionlität trivial. Aber es ist besser, sie nicht so stark zu denken, wenn zwei verschiedenen Formalismen wie z.B. “syntaktisch” und “logisch” vergleicht werden und wenn der logische Formalismus besonders zur Fuzzy Logik führt.
 Um eine dynamische Darstellung zu formalisieren, wird manchmal die Erweiterung vom PTQ- Fragment zur Konditionalsatz diskutiert, weil man erklären kann, warum es keine Möglichkeit gibt, wenn die analytischen Bäume in solcher Weise definiert werden und wenn die Übersetzung in die intensionale Logik dafür gehalten wird, die Konstituente der analytischen Bäume einzigartig zu nehmen.

(14) Wenn ein Mann singt, spricht er.

 Der Satz kann befriedigend nicht betrachtet werden, weil es keinen analytischen Baum gibt, der als “Sugaring” zu (14) angesehen und in die intensionale Logik wie (14) übersetzt wird.

(15) (∀x)(Mann (x) & singen (x) ⊃ sprechen (x))

 Der Satz enthält den indefiniten Artikel ”ein”. Aber wenn der analytische Baum in die intensionale Logik übersetzt wird, wird F2 in etwas übersetzt, was nicht ∀, sondern ヨ enthält. Die Formalisierung wird als eine Verletzung der Kompositionalität für einen derivativen Grund angesehen. Es handelt sich darum, ob man sowohl den Existenzquantor als auch den Allquantor interpretieren könnte. Zum Beispiel kann der Satz (16) als (17) formalisiert werden.

(16) Wenn ein Mann singt, hört er eine Oper.

(17) (∀x)(Mann (x) & singen (x) ⊃ (ヨy)(Oper(y) & (hören (x,y)))

 Tatsächlich ist es unmöglich, wenn der indefinite Artikel einzigartig dargestellt wird. Daher nahm Groenendijk and Stokhof Kampsche Theorie an, die "discourse representation theory (DRT)" genannt wurde, und weiste darauf hin, daß die Kompositionalität in DRT etwas anderes als Fregesche Kompositionalität in der Montague Grammatik war. DRT bereitete ein vermitteltes Niveau vor, das einen Formalismus konstituierte, dessen Semantik in die Prädikatenrechnung übersetzt wurde. Groenendijk and Stokhof entwickelte weiter auch eine andere Art von Formalismus, der "dynamic predicate logic (DPL)" genannt wurde, um die grammatischen Strukturen von Sätzen und Texten darzustellen. Das enthält auch ein vermitteltes Niveau. Allerdings konstruiert DPL eine alternative kompositionale Semantik über den Diskurs (siehe das Folgende).

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト6ーモンターギュ文法のシュガーリング

 Alle Wahrheitsbedingungen können durch eine Formel der Prädikatenlogik erster Stufe nicht ausgedrückt werden. Der Satz

(1) Hans Castorp sucht eine Frau,

hat nur eine Darstellung.

(2) (∃x) (Frau (x) und suchen (Hans Castorp, x))

 Deswegen erweiterte Montague die Prädikatenrechnung für die intensionale Logik, in der die Referenz zur möglichen Welt gemacht werden kann und mit den willkürlichen Varianten verbunden werden kann. Dann hat der Satz (1) die Formalisierung (3).

(3) suchen (⌃Hans Castorp, ⌃P (∃x)(Frau* (x) und P {⌃x}))

 Das wird als eine Lesart von "de dicto" angesehen. Neben der intensionalen Logik gibt es "analytische Bäume" in der Montague Grammatik. Im Formalismus der analytischen Bäume wird der Satz (1) in zwei Arten betrachtet wie folgt.

(4) F10.0 (F2 (Frau, F4 (Hans Castorp, F5 (suchen, he0))))

(5) F4 (Hans Castorp, F5 (suchen, F2 (Frau)))

 Die Montague Grammatik ist generativ. Zuerst definiert sie die analytischen Bäume und erklärt, wie die Bäume in englische Sätze übersetzt werden. Dieser Prozeß, der ein Gegenteil von “Parsing ist, heißt “Sugaring” in der Computerlinguistik.
 Zum Beispiel kann ein einfacher Baum für "Parsing" illustriert werden wie folgt. Zuerst wird die kontextfreie Grammatik in (6) gegeben und in einigen Programmen wie (7) axiomatisiert. Der normale Begriff für eine kontextfreie Regelung ist N0 → V1,...,Vn, wo N0 kein letztes Wort ist und V1 kein letztes Wort oder ein letztes Wort ist. Solche Regelung hat die folgende informelle Interpretation. Wenn Ausdrücke "w1,...,wn" zu
"V1,...,Vn" passen, dann hat der einzigartige Ausdruck "w1,...,wn" (die Verkettung des Ausdrucks w1) selbst einen Ausdruckstyp N0. Nun wollen wir die folgende kontextfreie Grammatik annehmen.

(6)
S → NP VP (sentence)
NP → Det N OptRel (noun phrase)
OptRel → Empty string (optional relative clause)
VP → TV NP (transitive verb phrase)
VP → IV (intransitive verb phrase)
PN → Hans Castorp (proper noun)
PN → Clawdia Chauchat (proper noun)
Det → ein (determiner)
N → Programm (noun)
IV → hält (intransitive verb)
TV → schreibt (transitive verb)

Es ist hier zu bemerken, daß die allgemeine Form für Axiomatisierungsregelungen selbst in bestimmten Nebensätzen liegt. Das kann dierekt in Prolog dargestellt werden.

(7) Programm
S (P0, P):- NP (P0,P1), VP (P1, P).
NP (P0, P):- Det (P0, P1, N (P1, P2),
(P2, P).
VP (P0, P):- V(P0, P).
OptRel:- (P, P).
Det (P0, P):- connects (ein, P0, P).
N (P0, P):- connects (Programm, P0, P).
IV (P0, P):- connects (hält, P0, P).

 Das Literal connects (Terminal, Position1, Position2) wird verwendet, um zu zeigen, daß das Symbol “Terminal” zwischen “Position1" und “Position2" liegt. Wenn das Prädikat “connects” gegeben wird, kann ein Ausdruck dadurch axiomatisiert werden, um darzustellen, daß das letzte Symbol in der Kette "ein Programm hält" die Kettenpositionen miteinander verbindet.

(8) connects (ein, 0,1).
connects (Programm, 1,2).
connects (hält, 2, 3).

 Die Axiomatisierung der Ausdrücke und der kontextfreien Grammatiken erlaubt einem Beweisverfahren von "Horn-clause", eine Rolle als eine Art von "Parser" zu spielen. Das Beweisverfahren von Prolog gibt einen Parsingsmechanismus wie z.B. "top-down" und "left-to-right". Solche Axiomatisierung der Grammatik ist wichtig, wenn ein Baum für "Parsing" eine Art von Beweis der Grammatikalität eines Ausdruckes vorbereitet.
 Dann wird eine Semantik für das deutsche Fragment spezifiziert. Eine entsprechenae Regelung für die Subkonstituenten in der logischen Form wird mit jeder kontextfreien Regelung verbunden.

(9) S → NP VP

(10) Semantische Regelung 1
 Wenn die logische Form für NP NP' ist und die logische Form für VP VP' ist, dann ist die logische Form für S VP' (NP').

(11) VP → TV NP

(12) Semantische Regelung 2
 Wenn die logische Form für TV TV’ ist und die logische Form für NP NP’ ist, dann ist die logische Form für VP TV’ (NP’).

 Als ein Beispiel wollen wir “Hans Castorp sieht Clawdia Chauchat” betrachten. Jede logischen Formen für "Hans Castorp" und "Clawdia Chauchat", sind Hans Castorp' und Clawdia Chauchat'. Die logische Form für das transitive Verb "sieht" ist der Lambdaausdruck λx.λy.sieht' (y, x). Durch die Regelung in (12) wird die VP “sieht Clawdia Chauchat” mit dem Ausdruck (λx.λy.sieht’ (y, x)) (Clawdia Chauchat') verbunden, die durch ß-Reduktion gleichbedeutend mit λy. sieht' (y, Clawdia Chauchat') ist. Durch die Regelung in (11) wird der Satz "Hans Castorp sieht Clawdia Chauchat” mit der logischen Form (λy.sieht"(y, Clawdia Chauchat')) (Hans Castorp') verbunden, die durch ß-Reduktion gleichbedeutend mit sieht' (Hans Castorp', Clawdia Chauchat') ist. Die Ableitung kann im folgenden Baum für "Parsing" zusammengefaßt werden.

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト5ーモンターギュ文法のシュガーリング

 照応表現の指示は、その表現が現れる文脈内で一意に規定されなければならない。そこでRantaは、代名詞を擬似的に範疇化され る表現と見なし、照応の依存領域に関する生成方法を問題とした。 文脈内で形成される命題は、変項が文脈において自由に出現することを認めている。つまり、タイプ理論と同様に命題の力によって、さらに命 題を形成するために、照応の依存関係や前提が所与の命題の真理値を予め仮定することができると考えている。
 文は、命題ではなく形式の判断である。個々の命題は、先行する文脈に依存し、テキストは、形式の文脈として表現される。その際、文に対する証明は、一般的に定項ではなく、変項として生成される。直感主義論理は、テキストのダイナミズムを処理するためにこのような方法を採用している。

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト4ーモンターギュ文法のシュガーリング

 直感主義論理に基づいた簡単なドイツ語の文法を考察する。レキシコンは、基本表現に範疇を割り当てていく。範疇文法は、直感主義のタイ プ理論を形式化する規則である。そしてシュガーリングの規則は、形式化された表現がドイツ語として認知される語彙の連鎖を返す。
 Ranta の文法とMontague文法の違いは、前者がシュガーリングと意味の説明の基礎となる表現を形式化しているにすぎない点である。Montague文法は、 (i) 基本表現を分析榭に結合させ、(ii) 分析樹を単純な文にシュガーリン グするといった二重構造となっている。もちろん、Ranta の文法も意味と形式間のパラレルな関係を要求する。
 まず、多くのドイツ語の表現がタイプ理論の意味で直接レキシコンに導入される。範疇化が存在論の意味を持っているため、各表現に対してタイプ理論の意味合いを作ることができる。また、ドイツ語の量化表現(jederや不定冠詞)の範疇化は排除する。これらの語彙が狽ニΠによる表現を示すことができないため、レキシコンにjederを登録してから、“jeder Mann”を“x”と置換してシュガーリングを掛けていく。 しかし、jeder が強い意味を持つと、Πのシュガーリングに問題が生じる。 jederが弱い意味を持つと、一意な意味がでる。その場合、jederに対する形式表現はΠとなり、不定冠詞は狽ノなる。こうしたシュガーリングの規則の特徴は、擬似的な範疇化によって表現される。擬似的に範疇化された表現を持つと、パージングの規則は、一定の方法でそれを処理することができる。
 レキシコンを考察しよう。普通名詞、固有名詞、動詞および形容詞が範疇化される。語彙登録は、シュガーリングのパターンを示している。レキシコンを持つことによって、名詞の集合や動詞の関数が定義され、上述した煤AΠ、pair、λ、p、qおよびapとい った演算子もそこに含まれる。さらに、SとNという演算子が導入されます。これらは、タイプ理論の命題表現を変数として取り、文章と名詞を返す。
 シュガーリング規則のシステムを見ていこう。対象は、ドイツ語の断片である。[E/F]とは、表現Eを表現Fで置換することを意味する。{E, F,G} は、E、F、G が選択できることを示している。補助規則は、まず、単数の表現を再帰代名詞に戻し、主要な変数としてマークを付け、照応表現の範囲に設定する。次に、SとNの演算子を規定する際、規則(Q)、(C)、 (R) が重要になる。規則(Q)は、直感主義のタイプ理論の量化表現をドイツ語の文章にシュガーリングする規則である。規則(C)は、狽ニΠを限量詞というよりも連結詞と見なして、結合と条件 のシュガーリングを処理する。規則(R)は、表現が、関係代名詞によつ て修飾された名詞にシュガーリングが掛かることを説明している。最後 に形態操作の説明である。VF動詞(3人称単数現在)、名詞の目的格 ACCと所有格GEN、不定冠詞INDEF、人称代名詞PRON、関係代名詞 REL、再帰代名詞REFLが、シュガーリングの規則のための形態操作とし て導入される。

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト3ーモンターギュ文法のシュガーリング

 テキスト内のダイナミズムを処理するために、直感 主義論理を導入する。直感主義論理は、その基礎にタイプ理論を持っていますが、ここでは、多形(polymorphic) の夕イプ理論を採用する。また、直感主義論理における範疇文法は、 演算子を規定する役割がある。文法構造は、 Montague の PTQ とは異なり、シュガーリングと意味の説明のための形式化が存在するだけである。対象表現は、単文、条件文 そしてテキストになる。
 ここでは、直感主義論理に基づいた簡単なドイツ語の文法を導入する。 直観主義は、論理の系統の中で様相論理などと共に多値論理のグループに属し、やはり量化の表現に真理値を割り当てる上で古典的な二値論理 では不十分であるという立場を取る。また、直感主義を用いた自然言語に関する証明は、コンピュータのプログラムにも通じる方法であり、 Ranta は、Montague の PTQ を土台とした英語の断片を提示している。ここで導入するドイツ語の文法は、レキシコン、範疇文法そして シュガーリングを構成要素とする。
 まず前提として、テキストのダイナミズムを直接反映するために、 Ranta は、Matin-Löf のタイプ理論を取り入れた。 Matin-Löf の動機は、統語論と意味論を数学によって明確にするという立場から、 直感主義の数学とプログラミング間をつなぐために(例えば、argument とinput、valueとoutput、x=eとx:=e、関数の合成とS1;S2、条件の定義と if B then S1 else S2、回帰の定義とwhile B do Sなど)、直感主義のタイプ理論を考案した。
 直感主義のタイプ理論は、命題の表現を持っています。まず複合命題を考えてみよう。これは、領域Aの中で解釈される述語計算の(ヨX)と(Vx) に相応する。但し、タイプ理論が述語計算に比べてより形式的となっている点に違いがある。それは、タイプ理論が、命題や判断(または主張)を明確にするためである。命題は、判断の一部ですが、その逆になることはない。ここで、A: propは、 命題Aが適格な式であるという判断を意味している。a: Aは、Aが真で あるという判断である。つまり、aはAの証明になる。こうした判断は、 例えば、疑問文などに生じることがある。
 演算子狽ニΠは、ドイツ語の文章を形式化する場合、述語計算の(ヨX) や(Vx)と同じ方法で使用される。つまり、直感主義タイプ理論の量化表現を含む命題をドイツ語の文章へシュガーリングする規則と原子的な命題のシュガ ーリングの規則により、派生できるようになる。
 しかし、自然言語を処理するためにタイプ理論をさらに豊かにする必要がある。そのように定義すれば、一般化された関数のタイプ(x:α)ß の中で判断ができるようになる。判断は、変項に対するタイプ割り当ての中で行われる。そして、仮定の連鎖は、例えば、判断Jが文脈の中で実行される場合、変項は、自由にJの中に現れることになる。また、判断Jが文脈の中で行われ、定項が変項と置換 される場合、判断が文脈に依存することはない。
 断片的なドイツ語の文法を記述する準備として、最後に演算子狽ニΠ をさらに高いレベルで考察する。それは、これらの演算子がドイツ語の レキシコンに含まれるからである。狽ヘ、変数として集合と集合上で定義される命題関数を取り命題を返す。集合の統語表記は、(A,B)となる。また、演算子pairを使用して(A,B)の要素が形成される場合は、 要素a: AとB(a)の証明が必要になる。次に要素Aと証明B(p(c))から c:(A,B)を生成する投射の演算子pとqが導入される。これらの演算子は、規範的なものではない。Πは狽ニ同じタイプの演算子ですが、 範疇の割り当てから単形の規則を導くために、単形のλI抽象化とap演算子が挿入される。

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト2ーモンターギュ文法のシュガーリング

 Montague文法の意義は、表現力のある形式論およびそのような形式論と英語の断片との関係になります。つまり、分析樹の定義とシュガーリングによる英語の断片の表記が問題になるが、内包論理への翻訳は、構成性(フレーゲ原理)を基に進んでいく。但し、本書は、テキストとの マージを念頭に入れていることもあり、それほど強く構成性を意識することはない。
 次に、しばしばダイナミックMontague文法と評される論理文法 (discourse representation theory (DRT)と dynamic predicate loeic (DPL))が登場する。これらの対象表現は、例えば条件文になるが、どうして Montague文法の手法ではこうした表現の分析に可能性がないのかが議論される。例えば、不定冠詞を含んでいる分析樹が内包論理に翻訳されると、存在限量詞は含みますが普遍限量詞は含まない形に翻訳される。これは、形式化が派生上構成性の問題を含んでいるためである。つまり、Montague文法の手法を用いても普遍限量詞への翻訳は説明できない。そこで、Kamp は、Montague文法とは異なる構成性を持った談話表示理論を開発し、述語計算への翻訳により意味が決まる中間レベルの談話表示を提案した。Groenendijk と Stokliof は、その流れにのって、テキストまで含めた文法構造を表記するために、ダイナミックな述語論理(DPL) と呼ばれる形式論を採用した。 統語論についていうと、DPL は DRTより論理定項の数が多く、意味論は、モデルも用語の解釈も同じだが、割り当て関数の扱いに違いがある。 つまり、DPLでは、割り当て関数が全体の関数として機能し、部分的な割り当てにも対応できるようになっている。

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

フォーマットのシフト1ーモンターギュ文法のシュガーリング

通常、人文科学で言語学を研究する場合、人文の柱とTの逆さの認知科学の柱を並べて調節していく。また、認知科学の柱には、文系と理系の分析方法が両方含まれている。
 文学作品における作者の推論を考察するには、まず、読んで思うという自然言語の情報があるため、それを作家の執筆脳とマージさせて、何れかの理系の手法に通じるようにしなければならない。ここでは、マージの手法として論理計算を想定しているため、自然言語と論理言語間にある翻訳技法を紹介する。例えば、 Richard Montagueは、PTQという論文の中で樹形図から論理式への翻訳と自然言語の表現を導く「シュガーリング」という方法を採用した。このステップを踏むことにより、テキストのダイナミズムを論理言語によって処理する方法が次第につかめてくる。同時に、Thomas Mannのイロニーが少しずつ論理文法とマージしていく。
 ここでは作品を通して作者の推論を考察するために、自然言語を論理言語で表現する(またはその逆の)方法を考えていく。有名な例は、 MontagueがPTQの中で採用した翻訳技法シュガーリングである。この方法は、コンピュータ言語学でいうバージングの逆の処理になる。
 Montagueは、一階の述語論理によってすベての真理条件が記述できない点を克服するために、可能世界により指示対象が決まる内包論理へと述語計算を拡張した。確かにこの方法は生成的である。まず、分析樹を定義し、次にそれを英語の文へ変換する。つまり、ここで一義的な構造が壊されていくことになる。この処理は、コンピュータ用語に相応してシュガーリングと呼ばれている。Prolog (宣言型言語で、何が計算されるのかが問題となる自然言語処理システム)などによるパージングは、この逆の処理である。
 ここでは、Montague文法とパージングによる言語処理の関係およびそれらの相互作用を見ていく。こうしたステップを踏むことにより、Thomas Mannの推論自体がより具体的になっていくからである。次節と組み合わせて、テキストのダ イナミズムを論理言語で処理する方法およびその発展の様子も簡単に説明する。

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分10

6 まとめ 

 データベースの数字を用いてクラスタ解析から得られた特徴を場面ごとに平均、標準偏差、中央値、四分位範囲と考察し、それぞれ何が主成分なのか説明できている。そのため、この小論の分析方法は、既存の研究とも照合ができ、統計による文学分析が研究をさらに濃いものにしてくれている。

【参考文献】
片野善夫 ほすぴ162号 知っているようで知らない五感のしくみ−視覚 日本成人病予防協会 2018
加藤剛 多変量解析超入門 技術評論社 2013
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から 森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方−トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日语教学研究会上海分会論文集 華東理工大学出版社 2018 
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默 ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
Thomas Mann Der Zauberberg Fischer 1986

トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分9

【カラム】
A平均1.6 標準偏差0.26 中央値1.5 四分位範囲1
B平均1.1 標準偏差0.3 中央値1.5 四分位範囲1
C平均1.6 標準偏差0.49 中央値1.5 四分位範囲1
D平均1.5 標準偏差0.5 中央値1.5 四分位範囲1
【クラスタABとクラスタCD】
AB 平均1.35 やや低い、標準偏差0.28低い、中央値1.5普通、四分位範囲1普通
CD 平均1.55 普通、標準偏差0.5普通、中央値1.5普通、四分位範1普通
【クラスタからの特徴を手掛かりにし、どういう情報が主成分なのか全体的に掴む】
Bの数字が他と比べて低いため、トーマス・マンは、クロコフスキーの人当たりについて詳述している。
【ライン】合計は、言語の認知と情報の認知の和を表す指標であり、文理の各系列をスライドする認知の柱が出す数字となる。
@ 6.5、視覚+それ以外、直示、新情報、未解決 → 場面の始まりは未解決が多い。
A 5.5、視覚+それ以外、直示、新情報、解決 → カストルプ同志になる。 
B 4.5、視覚+それ以外、直示、旧情報、解決 → クロコフスキーがからかう。
C 5.5、視覚+それ以外、直示、旧情報、未解決 → 疑いの表明ではない。
D 7、視覚以外、直示、新情報、未解決 → 人間と健康が調和するか疑った。
E 6、視覚以外、直示、旧情報、未解決 → 浸潤が関心ではない。
F 7、視覚以外、比喩、新情報、解決 → 二義的である。
G 7、視覚以外、直示、新情報、未解決 → カタルは三義的。
H 4、視覚、直示、旧情報、解決 → 普通の回診。
I 5、視覚、直示、新情報、解決 → カストルプ一定の平時地にすっかり慣れる。
【場面の全体】
 視覚情報は6割であり、脳に届く通常の五感の入力信号の割合よりも少ないため、視覚意外の情報、特に聴覚も問題解決に役立っている。

花村嘉英(2019)「トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分8

◆場面2  クロコフスキーの回診
"Sie scheinen überrascht, mich zu sehen, Herr Castorp", hatte er mit baritonaler Milde, schleppend, unbedingt etwa geziert und mit einem exotischen Gaumen-r gesprochen, das er jedoch nicht rollte, sondern durch ein nur einmaliges Anschlagen der Zunge gleich hinter den oberen Vorderzähnen erzeugte; A1+2B1C2D2

"ich erfülle aber lediglich eine angenehme Pflicht, wenn ich bei Ihnen nun auch nach dem Rechten sehe. Ihr verhältnis zu uns ist in eine neue Phase getreten, über Nacht ist aus dem Gaste ein Kamerad geworden..." (Das Wort "Kamerad" hatte Hans Castorp etwas geängstigt.)  A1+2B1C2D1

"Wer hätte es gedacht!" hatte Dr. Krokowski kameradschaftlich gescherzt... "Wer häte es gedacht an dem Abend, als ich Sie zuerst begrüßen durft und Sie meiner irrigen Auffassung - damals war sie irrig - mit der Erklärung begegneten, Sie seien vollkommen gesund." A1+2B1C1D1

Ich glaube, ich drückte damals etwas wie einen Zweifel aus, aber, ich versichere Sie, ich meinte es nicht so!
 A1+2B1C1D2

Ich will mich nicht scharfsichtiger hinstellen, als ich bin, ich dachte damals an keine feuchte Stelle, ich meinte es anders, allgemeiner, philosophischer, ich verlautbarte meinen Zweifel daran, daß 'Mensch' und 'vollkommene Gesundheit' überhaupt Reimworte seien. A2B1C2D2

Und auch heute noch, auch nach dem Verlauf Ihrer Untersuchung, kann ich, wie ich nun einmal bin, und im Unterschied von meinem verstehten Chef, diese feuchte Stelle da"- und er hatte mit der Fingerspitze leicht Hans Castorps Schulter berührt - " nicht als im Vordergrunde des Interesses stehend erachten.
A2B1C1D2

Sie ist für mich eine sekundäre Erscheinung...Das Organische ist immer sekundär..." Hans Castorp war zusammengezuckt. A2B22D1

"Und also ist Ihr Katarrh in meine Augen eine Erscheinung dritter Ordnung", hatte Dr. Krokowski sehr leicht hinzugefügt. "Wie steht es damit? Die Bettruhe wird in dieser Hinsicht gewiß rasch das Ihre tun. Was haben Sie heute gemessen?"  A2B12D2

Und von da an hatte der Besuch des Assistenten den Charakter einer harmlosen Kontrollvisite getragen, wie er ihn denn auch in den folgenden Tagen und Wochen beständigt trug:  A1B1C1D1

Dr. Krokowski kam dreiviertel vier Uhr oder auch schon etwas früher über den Balkon herein, begrüßte den Liegenden auf mannhaft heitere Art, stellte die einfachsten ärztlichen Fragen, leitete auch wohl ein kurzes, persönlicher bestimmtes Geplauder ein, scherzte kameradschaftlich, - und wenn alles dies eines Anfluges von Bedenklichkeit nicht entbehrte, so gewöhnt man sich endlich auch an das Bedenkliche, falls es in seinen Grenzen bleibt, und Hans Castorp fand bald nichts mehr gegen das regelmäßige Erscheinen Dr. Krokowski's zu erinnern, das nun einmal zum stehehnden Normaltage gehörte und die Stunde der großen Liegekur apostrophierte. A1B1C2D1

花村嘉英(2019)「トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分7

【カラム】
A平均1.8 標準偏差0.45 中央値2.0 四分位範囲2.0
B平均1.1 標準偏差0.32 中央値1.0 四分位範囲1.0
C平均1.5 標準偏差0.47 中央値1.5 四分位範囲1.0
D平均1.6 標準偏差0.55 中央値2.0 四分位範囲1.0
【クラスタABとクラスタCD】
AB 平均1.45普通、標準偏差0.3 低い、中央値1.5普通、四分位範囲1.5高い
CD 平均1.55 普通、標準偏差0.5普通、中央値1.75高い、四分位範囲1.0低い
【クラスタからの特徴を手掛かりにし、どういう情報が主成分なのか全体的に掴む】
CとDのバラツキが大きいということは、新情報及び問題未解決が多いことから、「クロコフスキーの講演」の場面でテンポよく情報が流れているが、問題帰結の因子は次の場面に持ち越しになっている。
【ライン】合計は、言語の認知と情報の認知の和を表す指標であり、文理の各系列をスライドする認知の柱が出す数字となる。
@ 7、視覚、直示、新情報、未解決 → 場面の始まりは未解決が多い。
A 5、視覚以外、直示、新情報、解決 → 聴いて愛の力を確認している。
B 7、視覚以外、直示、旧情報、解決 → 専門のテーマなので当然である。
C 5、視覚以外、直示、旧情報、未解決 → 勝手違いの感じ。
D 7、視覚以外、直示、新情報、未解決 → 真昼間にする話題なのだろうか。
E 7、視覚+視覚以外、直示、新情報、未解決 → 歌うように話す。
F 6、視覚以外、比喩、旧情報、未解決 → 色々な意味で愛を語る。
G 6、視覚以外、直示、旧情報、解決 → ハンス・カストルプは愛など口にしない。
H 5、視覚以外、直示、旧情報、未解決 → 愛が水気の多いミルクみたいに聞える。
I 5、視覚以外、直示、新情報、解決 → クロコフスキーは妄想を打破し啓蒙に乗り出す。
【場面の全体】
 全体では、視覚情報が1割で脳に届く通常の五感の入力信号の割合よりもかなり低いため、視覚意外、特に聴覚の情報が問題解決に役立っている。

花村嘉英(2019)「トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分6

◆場面1 クロコフスキーの講演

Was redete denn Dr. Krokowski? In welchem Gedankengange bewegte er sich? Hans Castorp nahm seinen Verstand zusammen, um aufs laufend zu kommen, was ihm nicht gleich gelang, da er den Anfang nicht gehört und beim Nachdenken über Frau Chauchats schlaffen Rücken Weiteres versäumt hatte. A1B1C2D2

Es handelte sich um eine Macht... jene Macht... jurzum, es war die Macht der Liebe, um die es sich handelte. Selbstverständlich!  A2B1C2D1

Das Thema lag ja im Generaltitel des Vortragszyklus, und wovon sollte Dr. Krokowski denn auch sonst wohl sprechen, da dies nun einmal sein Gebiet war. A2B1C1D1

Etwas wunderlich war es ja, auf einmal ein Kolleg über die Liebe zu hören, während sonst immer nur von Dingen wie dem Übersetzungsgetriebe im Schriffbau die Rede gewesen war. A2B1C1D2

Dr. Krokowski erörterte ihn in einer gemischten Ausdrucksweise, in zugleich petischem und gelehrtem Stile, rücksichtslos wissenschaftlich, dabei aber gesanghaft schwingenden Tones, was den jungen Hans Castorp etwas unordentlich anmutete, obgleich gerade dies der Grund sein mochte, weshalb die Damen so hitzige Wangen hatten und die Herren ihre Ohren schüttelten. A1+2B1C2D2

Insondeheit gebrauchte der Redner das Wort "Liebe" beständig in einem leise schwankenden Sinn, so daß man niemals recht wußte, woran man damit war und ob es Frommes oder Leidenschaftlich-Fleischliches bedeutete, - was ein leichtes Gefühl von Seekrankheit erzeugte. A2B2C1D2

Nie in seinem Leben hatte Hans Castorp diese Wort so oft hintereinander aussprechen hören, wie hier und heute, ja wenn er nachdachte, so schien ihm, daß er selbst es noch niemals ausgesprochen oder aus fremdem Munde vernommen habe. A2B1C1D1

Das mochte ein Irrtum sein, - jedenfalls fand er nicht, daß so häufige Wiederholung dem Worte zusatten käme. Im Gegenteil, diese schlüpfrigen anderthalb Silben mit dem Zungen-, dem Lippenlaut und dem dünnen Vokal in der Mitte wurden ihm auf die Dauer recht widerwärtig, eine Vorstellung verband sich für ihn damit wie von gewässerter Milch, - etwas Weißbläulichem, Labberigem, zumal im Verglich mit all dem Kräftigen, was Dr. Krokowski genaugenommen darüber zum besten gab. A2B1C1D2

Denn soviel ward deutlich, daß man starke Stücke sagen konnte, ohne die Leute aus dem Saale zu treiben, wenn man es anfing wie er. Keineswegs begnügte er sich damit, allgemein bekannte, doch gemeinhin in Schweigen gehüllte Dinge mit einer Art von berauschendem Takt zur Sprache zu bringen; er zerstörte Illusionen, er gab unerbittlich der Erkenntnis die Ehre, er ließ keinen Raum für empfingsamen Glauben an die Würde des Silberhaares und die Engelsreinheit des zarten Kindes.  A2B1C2D1

花村嘉英(2019)「トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分5

3 多変量の分析

 多変量を解析するには、クラスタと主成分が有効な分析になる。これらの分析がデータベースの統計処理に繋がるからである。
 多変数のデータでも、最初は1変数ごとの観察から始まる。また、クラスタ分析は、多変数のデータを丸ごと扱う最初の作業ともいえる。似た者同士を集めたクラスタを樹形図からイメージする。それぞれのクラスタの特徴を掴み、それを手掛かりに多変量データの全体像を考えていく。樹形図については、単純な二個二個のクラスタリングの方法を想定し、変数の数や組み合わせを考える。
 作成したデータベースから特性が2つあるカラムを抽出し、グループ分けをする。例えば、A:五感(1視覚と2それ以外)、B:ジェスチャー(1直示と2比喩)、C:情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)、D:情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)というように文系と理系のカラムをそれぞれ2つずつ抽出する。
まず、ABCDそれぞれの変数の特徴について考える。次に、似た者同士のデータをひとかたまりにし、ここでは言語の認知ABと情報の認知CDにグループ分けをする。得られた変数の特徴からグループそれぞれの特徴を見つける。
 最後に、各場面のラインの合計を考える。それぞれの要素からどのようなことがいえるのか考える。「魔の山」のバラツキが縦のカラムの特徴を表しているのに対し、ここでのクラスタは、一場面のカラムとラインの特徴を表している。
 なお、外界情報の獲得に関する五感の割合は、視覚82%、聴覚11%、嗅覚4%、触覚2%、味覚1%とする。(片野2018)

花村嘉英(2019)「トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分4

C  以下の章では、Traeger (1993)に基づき平易なファジイ理論が導入される。Traeger (1993)によると、ファジイ理論は、古典論理の拡張であり真偽だけではなくたくさんの中間段階を考察することができるという。つまり、ファジイ理論を言語処理に適用する面白さは、古典論理で言う真偽では説明ができない数字のずれや、「ほとんど」とか「かなり」といった修飾語を伴う日常表現も説明できる点にある。
➄  例えば、夏期休暇の避暑地における滞在に関して、「長い」の下限を21日とする。古典論理では、21日以上の場合、割り当て可能になるが、21日未満の場合、不可 能となる。しかし、20日間の滞在でも、全く該当しないわけではない。 それどころか、ほとんど該当する。こうした奇妙な現象を解決するため に、ファジィ理論は、メンバーシップ値を採用する。これにより、20日 間の滞在は、95%「長い」となり、18日間の滞在は、80%「長い」とな る。また、両方の数字の間には、ファジイコントロールと呼ばれる計算術が存在し、それは、ファジイ化、推論そして脱ファジイ化という3つの構成要素を持っている。
それでは、簡単な用例を引用しながら、やさしい曖昧な数学を見ていくことにしよう。

花村嘉英(2019)「トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分3

B  イロニーの原理
(a) 定義:トーマス・マンは、彼の散文の条件として常に現実から距離を置 く。一つには、現実をできるだけ正確に考察するために、また一つには、それを批判するために、つまり、イロニー的に。…この批判的な距離は、イロニー的な距離になりうるだろう。実際に、批判的な表現における簡潔さには、余すところなく正確に規定された概念言語の要求に対して、言語媒体そのものの特徴から反対の行動をとるある種の制限が設けられている。(Baumgart 1964) 一方、ファジイ理論は、システムが複雑になればなるほど、より正確な記述ができなくなることを主張する。(Yager et al 1987)

(b) 特徴:双方に共通の特徴として、主観性を想定することができる。周知の通り、ファジィ理論は、科学の中に客観性ではなくて、主観性を導入する。(菅野 1991) 一方、トーマス・マンと ハンス・カストルプが歩んでいく道を基にしたイロニーの原理は、自己を乗り越える原理である。(Frommer 1966) つまり、ファジィ理論における主観性は、個人的 な主観であり、Thomas Mannの主観性は、超個人的な主観(主体性)となる。しかし、何れにせよ双方共に個人による規定や決定が問題になっており、両者をまとめて広い意味で主観と呼ぶことができる。
(C) 語の選択: トーマス・マンが使用するイロニー的な語彙、例えば、形容 詞とか副詞は、意図的な不正確さを通して言葉が持っている本来の意味 合いをはずす。(Baumgart 1964)一方、ファジイ集合によって表現 される概念は、「背の大きい人達」や「多かれ少なかれ」といった曖昧 な概念であり、外延的でも内包的でもない中間的なものになる。(菅野 1991)

花村嘉英(2019)「トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分2

2 トーマス・マンのイロニーとファジィ

@ トーマス・マンのイロニーを一種の推論と見なして、テキストのダイナ ミズムを考察していく。本書は、「魔の山」を題材とするが、それは、「魔の山」がトーマス・マンの全集においてイロニーの交差点と見なされているからである。(Baumgart 1964)  Frommer (1966 ) によれば、 諸々の対象は論理的に共存できないが、それを可能にするためにイロニーが使われる。イロニーは、最終的な決定を知らない。(それ故に、一種の推論となる。)「AでもなければBでもない」とか「AでもありBでもある」の観点を対話の単位と結びつける。すると、双方の側面に対して留保することにより、両方へ同時に接近することができるようになる。これは、美的で中立な表現として主人公ハンス・カストルプのイロニーとなる。そして、その都度、他方を批判するために、双方の観点を交互に自分のものとし、彼自身の中で二重に矛盾した社会参加(アンガージユマン)の表現になっていく。
A 一方、これまで理論言語学の枠組みでイロニーを表現することは難しかった。(Hamm 1989) しかし、トーマス・マンのイロニーとZadehのファジィ理論の間に複数の共通項(イロニーの原理)が見い出せることから、本書では、トーマス・マンのイロニーを形式論で表記するためにファジィ理論を採用し、テキスト(「魔の山」)のダイナミズムを考察していく。

花村嘉英(2019)「トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分1

1 先行研究との関係

 これまでに、トーマス・マンの執筆時の脳の活動をファジィとして、モンターギュ文法やラフ集合による論理計算を通して、「トーマス・マンとファジィ」というシナジーのメタファーを作成している(花村2005、花村2017)。また、「魔の山」のデータベースを作成しながら、バラツキ、相関関係、推定といった平易な統計分析も試みている。(花村2018)
 この小論では、さらに統計処理に関して多変量解析に注目し、クラスタ分析と主成分について考察する。それぞれの場面でシナジーのメタファーが異なる視点から説明できれば、自ずと客観性が上がるためである。

花村嘉英(2019)「トーマス・マンの「魔の山」の多変量解析−クラスタ分析と主成分」より

トーマス・マンの「魔の山」の相関関係について6

4 相関係数を言葉で表す

数字の意味を言葉で確認しておく。 

-0. 7≦r≦-1.0 強い負の相関がある
-0.4≦r≦-0.7 やや負の相関がある
0≦r≦-0.4 ほとんど負の相関がない
0≦r≦0.2 ほとんど正の相関がない
0.2≦r≦0.4 やや正の相関がある
0.4≦r≦0.7 かなり正の相関がある
0.7≦r≦1 強い正の相関がある

5 まとめ

 言語の認知の意味分析、距離1近い2それ以外は、情報の認知の問題解決と未解決の組と強い相関関係になることが分かった。

参考文献
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?新風舎 2005
花村嘉英 森鴎外の「山椒大夫」のDB化とその分析 中国日语教学研究会江苏分会 2015
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默 ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
Thomas Mann : Der Zauberberg, Frankfurt a. M., Fischer 1986

トーマス・マンの「魔の山」の相関関係について5

計算表
A 2 3 合計5
偏差 −0.5 0.5 合計0
偏差2 0.25 0.25 合計0.5
B 4 1 合計5
偏差 1.5 −1.5 合計0
偏差2 2.25 2.25 合計4.5
AB偏差の積 ー0.75 −0.75 合計ー1.5

◆相関係数は、次の公式で求めることができる。
相関係数=[(A-Aの平均値)x(B-Bの平均値)]の和/
√(A-Aの平均値)2の和x(B-Bの平均値)2の和
上記計算表を代入すると、
相関係数 = -1.5/√0.5 x 4.5 = -1.5/√2.25 = -1.5/1.5 = -1
従って、強い負の相関があるといえる。

花村嘉英(2019)「トーマス・マンの『魔の山』から見えてくる相関関係について」より

トーマス・マンの「魔の山」の相関関係について4

A言語の認知(距離):1近い、2それ以外→3、2
B情報の認知:1問題解決、2未解決→⒈、4
◆A、Bそれぞれの平均値を出す。
Aの平均:(3 + 2)÷ 2 = 2.5
Bの平均:(1+4)÷ 2 = 2.5
◆A、Bそれぞれの偏差を計算する。偏差=各データ−平均値
Aの偏差:(3 – 2.5)、(2 – 2.5)= 0.5、-0.5
Bの偏差:(1 – 2.5)、(4 – 2.5)= -⒈.5、⒈.5
◆A、Bの偏差をそれぞれ2乗する。
Aの偏差2乗 = 0.25、0.25
Bの偏差2乗 =2.25、2.25
◆AとBの偏差同士の積を計算する
(Aの偏差)x(Bの偏差)= -0.75、-0.75
◆AとBを2乗したものを合計する。
Aの偏差2乗したものの合計 = 0.25 + 0.25 = 0.5
Bの偏差2乗したものの合計 = 2.25 + 2.25 = 4.5
◆AとBの偏差同士の積の合計を合計する。-0.75 -0.75 = -1.5

花村嘉英(2019)「トーマス・マンの『魔の山』から見えてくる相関関係について」より

トーマス・マンの「魔の山」の相関関係について3

イロニー的な距離が近づく場面

  "Sie scheinen überrascht, mich zu sehen, Herr Castorp", hatte er mit baritonaler Milde, schleppend, unbedingt etwa geziert und mit einem exotischen Gaumen-r gesprochen, das er jedoch nicht rollte, sondern durch ein nur einmaliges Anschlagen der Zunge gleich hinter den oberen Vorderzähnen erzeugte.
意味2 2、情報の認知3 2

  "ich erfülle aber lediglich eine angenehme Pflicht, wenn ich bei Ihnen nun auch nach dem Rechten sehe. Ihr verhältnis zu uns ist in eine neue Phase getreten, über Nacht ist aus dem Gaste ein Kamerad geworden..." (Das Wort "Kamerad" hatte Hans Castorp etwas geängstigt.)  意味2 1、情報の認知3 2

 "Wer hätte es gedacht!" hatte Dr. Krokowski kameradschaftlich gescherzt... "Wer häte es gedacht an dem Abend, als ich Sie zuerst begrüßen durft und Sie meiner irrigen Auffassung - damals war sie irrig - mit der Erklärung begegneten, Sie seien vollkommen gesund."… 意味2 1、情報の認知3 2

 Und auch heute noch, auch nach dem Verlauf Ihrer Untersuchung, kann ich, wie ich nun einmal bin, und im Unterschied von meinem verstehten Chef, diese feuchte Stelle da"- und er hatte mit der Fingerspitze leicht Hans Castorps Schulter berührt - " nicht als im Vordergrunde des Interesses stehend erachten. Sie ist für mich eine sekundäre Erscheinung...Das Organische ist immer sekundär..."… 意味2 1、情報の認知3 2

  "Und also ist Ihr Katarrh in meine Augen eine Erscheinung dritter Ordnung", hatte Dr. Krokowski sehr leicht hinzugefügt. "Wie steht es damit? Die Bettruhe wird in dieser Hinsicht gewiß rasch das Ihre tun. Was haben Sie heute gemessen?" Und von da an hatte der Besuch des Assistenten den Charakter einer harmlosen Kontrollvisite getragen, wie er ihn denn auch in den folgenden Tagen und Wochen beständigt trug.
意味2 2、情報の認知3 1

花村嘉英(2019)「トーマス・マンの『魔の山』から見えてくる相関関係について」より

トーマス・マンの「魔の山」の相関関係について2

2 データベースに見る相関関係

 サナトリウムは、午後安静療養の時間になる。バリトンで柔らかい引きずるような異国風の口蓋音rに特徴があるDr.Krokowskiの話しぶりは、Hans CastorpとJoachim Ziemßenのイロニー的な距離に影響を与える。
 「我々の関係は新しい段階に入ったのです。つまり、あなたは、客人から同胞(Kamerad)になったのです。私の目にはカタルを患っているように見えます」とDr.Krokowskiは説明する。Hans CastorpとJoachim Ziemßenの距離が同胞になったことにより、二人は、同じ病気(カタル)を患う療養所の住民という関係になる。つまり、二人のイロニー的な距離は、近づいていく。(花村 2005)
 ここでは、データベースから抽出したカラムは、意味2 距離が1近いと2 それ以外、情報の認知3 1問題解決と2未解決である。

花村嘉英(2019)「トーマス・マンの『魔の山』から見えてくる相関関係について」より

トーマス・マンの「魔の山」の相関関係について1

1 相関の作り方

 シナジーのメタファーのために作成しているデータベースは、データの種類で見ると、俗に言う測れないカテゴリーデータからなる。数量データといわれる身長、体重、気温、湿度などとは異なり、値が連続ではなく飛び飛びで離散的となる。前野(2012)によると、カテゴリーデータは、対象の性質を表したり、現象や区別を表したりする。性別、好き、嫌い、うまい、まずい、おもしろいなどあるものの性質や現象が示される。
 相関とは原因から結果が生じ、それが互いに関係しあっていることをいう。また、相関関係があるとは、ある測定値の変化に対して他の測定値も変化する場合に使われる。相関の強さは、ピアソンの相関係数で表す。合わせて共分散という統計用語が重要になる。 

(1) 共分散の公式
共分散=[(xの各データ−xの平均値)x(yの各データ−yの平均値)]の和/データ数
   =[(xの偏差)x(yの偏差)]の和/データ数
   = xとyの偏差積の和/データ数

正の相関があると0より大きく、負の相関があると0より小さくなる。

(2) 相関係数(ピアソン)
相関係数=XYの偏差平方和/√(Xの偏差平方和)x(Yの偏差平方和)

トーマス・マンの「魔の山」の一場面から簡単な例を見てみよう。

花村嘉英(2019)「トーマス・マンの『魔の山』から見えてくる相関関係について」より

トーマス・マンの「魔の山」のバラツキについて7

3 まとめ
 
 リレーショナル・データベースの数字及びそこから求めた標準偏差により、トーマス・マンの「魔の山」に関して部分的ではあるが、既存の分析例が説明できている。従って、この小論の分析方法、即ちデータベースを作成する文学研究は、データ間のリンクなど人の目には見えないものを提供してくれるため、これまでよりも客観性を上げることに成功している。

【参考文献】
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
花村嘉英 森鴎外の「山椒大夫」のDB化とその分析 中国日语教学研究会江苏分会 2015a
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用
 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで
 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默 ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018

トーマス・マンの「魔の山」のバラツキについて6

2.2 標準偏差による分析

 グループA、グループB、グループC、グループDそれぞれの標準偏差を計算する。その際、場面1、場面2、場面3の特性1と特性2のそれぞれの値は、質量ではなく指標であるため、特性の個数を数えて算術平均を出し、それぞれの値から算術平均を引き、その2乗の和集合の平均を求め、これを平方に開いていく。
求められた各グループの標準偏差の数字は、何を表しているのだろうか。数字の意味が説明できれば、分析は、一応の成果が得られたことになる。 

◆グループA:五感(1視覚と2その他)
場面1(特性1、5と特性2、0)の標準偏差は、0となる。
場面2(特性1、0と特性2、5)の標準偏差は、0となる。
場面3(特性1、1と特性2、4)の標準偏差は、0.4となる。
【数字からわかること】
場面1、場面2、場面3を通して、視覚情報に偏りがあるため、「魔の山」は、五感の情報にバラツキがある作品といえる。
◆グループB:ジェスチャー(1直示と2隠喩)
場面1(特性1、0と特性2、5)の標準偏差は、0となる。
場面2(特性1、2と特性2、3)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、3と特性2、2)の標準偏差は、0.49となる。
【数字からわかること】
場面1、場面2、場面3を通して、比喩が多い作品といえる。

◆グループC:情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)
場面1(特性1、1と特性2、4)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、0と特性2、5)の標準偏差は、0となる。
場面3(特性1、1と特性2、4)の標準偏差は、0.4となる。
【数字からわかること】
場面1、場面2、場面3を通して、新情報の2が多いため、講演の場面は、ストーリーがテンポよく展開していることがわかる。

◆グループD:情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)
場面1(特性1、2と特性2、3)の標準偏差は、0.49となる。
場面2(特性1、2と特性2、3)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、3と特性2、2)の標準偏差は、0.49となる。
【数字からわかること】
「魔の山」は、場面1、場面2、場面3を通して問題未解決が多いため、時間をかけて調節する時間の小説であることがわかる。

花村嘉英(2018)「トーマス・マンの「魔の山」から見えてくるバラツキについて」より

トーマス・マンの「魔の山」のバラツキについて5

場面3
 "Sie scheinen überrascht, mich zu sehen, Herr Castorp", hatte er mit baritonaler Milde, schleppend, unbedingt etwa geziert und mit einem exotischen Gaumen-r gesprochen, das er jedoch nicht rollte, sondern durch ein nur einmaliges Anschlagen der Zunge gleich hinter den oberen Vorderzähnen erzeugte;
A2B1C2D1
"ich erfülle aber lediglich eine angenehme Pflicht, wenn ich bei Ihnen nun auch nach dem Rechten sehe. Ihr Verhältnis zu uns ist in eine neue Phase getreten, über Nacht ist aus dem Gaste ein Kamerad geworden..." (Das Wort "Kamerad" hatte Hans Castorp etwas geängstigt.)
A2B2C2D1
 "Wer hätte es gedacht!" hatte Dr. Krokowski kameradschaftlich gescherzt... "Wer häte es gedacht an dem Abend, als ich Sie zuerst begrüßen durft und Sie meiner irrigen Auffassung - damals war sie irrig - mit der Erklärung begegneten, Sie seien vollkommen gesund."
A2B1C2D2
Ich glaube, ich drückte damals etwas wie einen Zweifel aus, aber, ich versichere Sie, ich meinte es nicht so! Ich will mich nicht scharfsichtiger hinstellen, als ich bin, ich dachte damals an keine feuchte Stelle, ich meinte es anders, allgemeiner, philosophischer, ich verlautbarte meinen Zweifel daran, daß 'Mensch' und 'vollkommene Gesundheit' überhaupt Reimworte seien.
A1B2C2D2
Und auch heute noch, auch nach dem Verlauf Ihrer Untersuchung, kann ich, wie ich nun einmal bin, und im Unterschied von meinem verstehten Chef, diese feuchte Stelle da"- und er hatte mit der Fingerspitze leicht Hans Castorps Schulter berührt - " nicht als im Vordergrunde des Interesses stehend erachten. Sie ist für mich eine sekundäre Erscheinung...Das Organische ist immer sekundär..."
A2B1C2D1
"Und also ist Ihr Katarrh in meine Augen eine Erscheinung dritter Ordnung", hatte Dr. Krokowski sehr leicht hinzugefügt.
A2B1C2D1

花村嘉英(2018)「トーマス・マンの「魔の山」から見えてくるバラツキについて」より

トーマス・マンの「魔の山」のバラツキについて4

場面2
 Dieser Widerstreit zwischen den Mädchen der Keuschheit und der Liebe - denn um einen solchen handle es sich -, wie gehe er aus? Er endige scheinbar mit dem Siege der Keuschheit.
A2B2C2D1
 Furcht, Wohlanstand, züchtiger Abscheu, zitterndes Reinheitsbedürfnis, sie unterdrückten die Liebe, hielten sie in Dunkelheiten gefesselt, ließen ihre wirren Forderungen höchstens teilweise, aber bei weitem nicht nach ihrer ganzen Vielfalt und Kraft ins Bewußtsein und zur Betätigung zu.
A2B2C2D1
 Allein dieser Sieg der Keuschheit sei nur ein Schein- und Pyrrhussieg, denn der Liebesbefehl lasse sich nicht knebeln, nicht vergewaltigen, die unterdrückte Lieben sei nicht tot, sie lebte, sie trachte im Dunklen und Tiefgeheimen auch ferner sich zu erfüllen, sie durchbreche den Keuschheitsbann und erscheine wieder, wenn auch in verwandelter, unbekenntlicher Gestalt...
A2B2C2D2
 Und welches sei denn nun die Gestalt und Maske, worin die nicht zugelassene und unterdrückte Liebe wiedererscheine? So fragte Dr. Krokowski und blickte die Reihen entlang, als erwarte er die Antwort ernstlich von seinem Zuhörern. Ja, das mußte er nun auch noch selber sagen, nachdem er schon so manches gesagt hatte. Niemand außer ihm wußte es, aber er würde bestimmt auch dies noch wissen, das sah man ihm an.
A2B1C2D2

花村嘉英(2018)「トーマス・マンの「魔の山」から見えてくるバラツキについて」より

トーマス・マンの「魔の山」のバラツキについて3

2  場面のイメージを分析する

2.1 データの抽出

 作成したデータベースから特性が2つあるカラムを抽出し、標準偏差によるバラツキを調べてみる。例えば、A:五感(1視覚と2それ以外)、B:ジェスチャー(1直示と2隠喩)、C:情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)、D:情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)というように文系と理系のカラムをそれぞれ2つずつ抽出する。

場面1
 Hans Castorps Gedanken verwirrten sich, während er auf Frau Chauchats schlaffen Rücken blickte, sie hörten aud, Gedanken zu sein, und wurden zur Träumerei, in welche Dr. Krokowski's schleppender Bariton, sein weich anschlagendes r wie aus weiter Ferne hereintönte.
A1B1C2D2
 Aber die Stille im Saal, die tiefe Aufmerksamkeit, die ringsumher alle im Bann hielt, wirkte auf ihn, sie weckte ihn förmlich aus seinem Dämmern. Er blickte um sich... Neben ihm saß der dünnhaarige Pianist, den Kopf im Nacken, und lauschte mit offenem Munde und gekreuzten Armen.
A1B1C2D2
 Die Lehrerin, Fräulein Engelhart, weiter drübern, hatte gierige Augen und rotflaumige Flecke auf beiden Wangen, - eine Hitze, die sich auf den Gesichtern anderer Damen wieder fand, die Hans Castorp ins Auge faßte, auch auf dem der Frau Salomon dort, neben Herrn Albin, und der Bierbrauersgattin Frau Magnus, derselben, die Eiweiß verlor.
A1B1C2D1
Auf Frau Stöhrs Gesicht, etwas weiter zurück, malte sich eine so ungebildete Schwärmerei, daß es ein Jammer war, während die elfenbeinfarbene Levi mit halbgeschlossenen Augen und die flachen Hände im Schoß an der Stuhllene ruhend, vollständig einer Toten geglichen hätte, wenn nicht ihre Brust sich so stark und taktmäßig gehoben und gesenkt hätte, wodurch sie Hans Castorp vielmehr an eine weiblich Wachsfigur erinnerte, die er einst im Panoptikum gesehen und die ein mechanisches Triebwerk im Busen gehabt hatte.
A1B1C1D1
 Mehrer Gäste hielten die hohle Hand an die Ohrmuschel oder deuteten dies wenigsten an, indem sie die Hand bis halbwegs zum Ohre erhoben hielten, als seien sie mitten in der Bewegung vor Aufmerksamkeit erstrrt.
A1B1C2D2

花村嘉英(2018)「トーマス・マンの「魔の山」から見えてくるバラツキについて」より

トーマス・マンの「魔の山」のバラツキについて2

1.2 標準偏差

 標準偏差は、グループの全ての値によってバラツキを決めていく。グループの個々の値から算術平均がどれだけ離れているのかによって、バラツキの大きさが決まる。
 グループd(1、1、4、7、7)の算術平均は4である。それぞれの値から算術平均を引くと、1-4=-3、1-4=-3、4-4=0、7-4=3、7-4=3となる。この算術平均から離れている大きさを平均してやると、バラツキの目安が求められる。しかし、-3、-3、0、3、3を全部足すと0になるため、さらに工夫が必要になる。
 例えば、絶対値をとる方法とか値を2乗してマイナスの記号を取る方法がある。2乗した場合、9、9、0、9、9となり、平均値を求めると、5で割って7.2となる。但し、元の単位がcmのときに、2乗すればcm2となるため、7.2を開いて元に戻すと、√7.2 cm2≒2.68 cmというバラツキの大きさになる。
 
(1) 標準偏差の公式
σ=√Σ (Xi−X)2/n

 次にグループe(1、4、4、4、7)について見てみよう。算術平均は4である。それぞれの値から算術平均を引くと、1-4=-3、4-4=0、4-4=0、4-4=0、7-4=3となる。この算術平均から離れている大きさを平均すると、バラツキの目安が求められる。しかし、-3、0、0、0、3を全部足すと0になるため、それぞれを2乗して、9、0、0、0、9として平均値を求め、5で割って3. 6を求める。
 但し、元の単位がcmのときに2乗すれば、cm2となるため、3. 6を開いて元に戻すと、√3. 6 cm2≒1.89 cmというバラツキの大きさになる。従って、グループdの方がグループeよりもバラつきが大きいことになる。
以下では、標準偏差(1)の公式を使用して、作成したトーマス・マンの「魔の山」のデータに関するバラツキから見えてくる特徴を考察していく。 

花村嘉英(2018)「トーマス・マンの「魔の山」から見えてくるバラツキについて」より

トーマス・マンの「魔の山」のバラツキについて1

1 簡単な統計処理

1.1 データのバラツキ

 グループa(5、5、5、5、5)とグループb(3、4、5、6、7)とグループc(1、3、5、7、9)は、算術平均がいずれも5であり、また中央値(メジアン)も同様に5である。算術平均やメジアンを代表値としている限り、この3つのグループは差がないことになる。しかし、バラツキを考えると明らかに違いがある。グループaは、全てが5のため全くバラツキがない。グループbは、5が中心にあり3から7までばらついている。グループcは、1から9までの広範囲に渡ってバラツキが見られる。グループbのバラツキは、グループcのバラツキよりも小さい。  
 次に、グループd(1、1、4、7、7)とグループe(1、4、4、4、7)だと、どちらのバラツキが大きいことになるのだろうか。グループdは、中心の4から3も離れた所に4つの値がある。グループeは、中心に3つの値があって、そこから3離れたところに値が2つある。 
 バラツキの大きさを定義する方法で最も有名なのが、レンジと標準偏差である。レンジはグループの最大値から最小値を引くことにより求めることができる。グループdは、7-1=6で、グループeも7-1=6となる。レンジだけでバラツキを定義すれば、グループdとグループeは同じことになるが、グループ内の最大値と最小値だけを問題にするため、他の値が疎かになっている。そこでもう一つのバラツキに関する定義、標準偏差について見てみよう。

花村嘉英(2018)「トーマス・マンの「魔の山」から見えてくるバラツキについて」より

イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ25

参考文献

*Ajdukiewicz, Kazimierz:Syntactic Connexion. In S. McCall(ed.), Polish Logic 1920-1939. Oxford. Oxford University Press. Pp. 207-231.1967.
*Casaudio, Claudia: Semantic Categories and the Development of Categorial Grammar. In R.T. Oehrle, E, Bach and D. Wheeler(eds.), Categorial Grammars and Natural Language Structures. Dordrecht. Reidel. Pp. 95-123.1988.
*Chomsky, Noam: Lectures on Government and Binding. Dordrecht. Foris. 1981.
*Dowty, David:; Grammatical Relations and Montague Grammar. In P.Jacobson and G.K.Pullum(eds.). The Nature of Syntactic Representation. Dprdrecht. Reidel. p.79-130.1982.
*Dowty, David, Robert Wall and Stanley Peters: Introduction to Montague Semantics. Dordrecht. Reidel.1981.
*Fillmore, Charles: The case for case. Universals in linguistic Theory, 1-88, Rinehart and Winston. 1968.
*Fleischer, Wolfgang: Phraseologie der deutschen Gegenwartssprache. Leipzig. Bibliographisches Institut. 1982.
*Friedrich, Wolf: Moderne deutsche Idiomatik. Munchen.Hueber.!976.
*Gazdar, Gerald, Ewan Klein, Geoffrey Pullum and Ivan Sag: Generalized Ohrase Structure Grammar. Cambridge. Harvard University Press. !985.
*Gebauer, Haiko: Montague Grammatik. Tubingen. Niemeyer. !978.
*花村嘉英 Anfangen、beginnen、aufhörenにおける様相因子の動きから生まれる文の曖昧性−モンタギュー文法による形式意味論からの考察 立教大学大学院文学研究科博士前期課程ドイツ文学専攻修士論文 1987.
*Hanamura, Yoshihisa: Die Textanalyse von HPSG - zur Ironie im Zauberberg Thomas Manns. Abgegebene Hausarbeit zur Neuphilologischen Fakultät der Eberhard-Karls-Universität zu Tübingen. 1995.
*花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ 推論といえるのか? 新風舎. 2005.
*花村嘉英 計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る ブイツーソリューション. 2022.
*池谷 彰 MGからGPSG,HG、HPSGへ. 論理文法研究会. 上智大学.1988.
*井口省吾, 山科正明, 白井賢一郎, 角道正佳, 西田豊明, 風斗 博之 モンタギュー意味論入門, 三修社, 1987(Dowty, Wall and Peters (1981)からの翻訳).
*Klein, Ewan and Ivan Sag: Typ-driven Translation. In Linguistics and Philosophy 8. p.163-201. 1985.
*Montague, Richard: The Proper Treatment od Quantification in Ordinary English. In R. Thomason(ed.), Formal Philosophy. New Haven. Yale University Press. P.247-270. !974.
*Nauman, Sven: Generalized Phrasenstrukturgrammatik: Parsingstrategien, Regelorganisation und Unifikation. Tubingen. Niemeyer. 1988.
*論理文法研究会編 様相論理学.上智大学.1989.
* Russel, Graham: A GPS-Grammar for German Word Order. In U. Klenk (ed.), Kontectfreie Syntaxen und verwandte Systeme. Tubingen. Niemeyer. p.19-32. 1985.
*白井賢一郎 形式意味論入門. 産業図書.1985.
*Stucky, Suan: Verb Phrase Constituency and Linear Order in Makua. In G. Gazdar, E, Klein and G. Pullum(eds.). Order, Concord and Constituency. Dordrecht Foris. P.75-94. 1983.
*Thomason, Richmond: A Semantics Theory of Sortal Oncorrectness. In Journal of Philosophical Logic 1. P.209-258. 1972.
*Uszkoreit, Hans: Constraints on Order. In Linguistics 24. O.883-906. 1986.
*Uszkoreit, Hans:Word Order and Constituent Structure in German. CSLI Lexture Notes 8. 1987.
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花村嘉英(2022)「モンタギュー文法からGPSGへ−イディオムの構成性をめぐるモデル理論の修正」より

イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ24

8頁
*ibid. S. 174。
*Chomsky(1981). S. 146. 注94。
*Gazdar et al (1985). S. 236。
*複合的な語彙の翻訳は、believeのような繰り上げ動詞などを扱うために導入されている。believe‘(>)とfR(believe‘)(>>は、意味公準∀V∀P1・・・
Pn□[fR(ζ)(V)(P1)・・・(Pn)→ζ(V(P1)・・・(Pn))]により同意であることが保証されている(ibid. S. 214)。

9頁
*Montague (1974 ). S. 257。
*Thomason (1972). S. 219。

10頁
*ibid. S. 242。
*ibid. S. 221。
*ibid. S. 224。 

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イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ23

7頁
*Dowy et al (1981). S. 279。但し、Montague(1974)は、次のようなパズルを解くために個体概念の必要性を説いた。
a) The temperature is ninety.
b) The temperature rises.
c) Ninety rises.
 a)からc)への推論は、temperatureにある時点での個体定項の外延を当てただけでは不十分ゆえに成立しない。従って、Montagueは、riseのタイプを<e, t>ではなく、内包的な<<s, e>, t>とした(ibid. S. 267)。しかし、これにより設定されたriseのような内包動詞とは別種の自動詞の外延性を規定する意味公準[∃M∀x□[δ(x)→M{v x}]](MはILの個体の属性タイプの変項、xはILの<s, e>タイプの変項、δはILの個体概念の集合タイプの定項)が、量化のかかったNP主語のIL個体概念の変項の値を制限するために、普通名詞の外延性に関する意味公準[□[δ(x)→∃ux=∧U]](uはeタイプの変項でxに体操する還元形である)と同じ役割を果たすことになり、規則の上で余剰が生じる。これが、個体概念(s, e)を放棄する一つの理由である。
*Klein and Sag(1985). S. 168。
*ibid. S. 171。

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イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ22

5頁
*Gazdar et al(1985).S.57。変形との違いについては、メタ規則が規則を操作するのに対し、変形が規則により生成された構造記述にかかるとあり(ibid.S.66)、これにより、GPSGの表示レベルは単層と呼ばれている。
*SAIメタ規則を応用してドイツ語のja/nein疑問文を分析した例にRussel(1985)がある。(10)4の(12)を通した出力(S[[INV, +],[SUB], +]→V[2]),NP[NOM]とFCR5([INV,+]⊃[[AUX, +],[FIN]])、およびLP規則NP[NOM]<NP[ACC]により、次のような気が認可される(ibid.S.25).
                 
                 S[INV, +]
                  △
       V[INV,+]     NP[NOM]    NP[ACC]
       Liest          △         △
                 Det N1       Det N1
                  ein |         ein |
                  N           N
                 Mann         Buch

*Gazdar et al (1985). S.79。

6頁
*ibid. S.83。
*ibid. S.94。
*ibid. S.183。
*ibid. S.187。

花村嘉英(2022)「モンタギュー文法からGPSGへ−イディオムの構成性をめぐるモデル理論の修正」より

イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ21

4頁
*Stucky(1983). S. 80。
*Gazdar et al(1985). S.44. GPSGのLP既読に対して、Uszkoreit(1986)がドイツ語の語順を検討し、修正案を出している。ドイツ語は、固定されたクラス(z.B. Det

イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ20

2頁
*Gazdar, Klein, Pullum and Sag(1985). S. 17。
*ibid. S. 43。
*ibid. S. 57。
*ibid. S. 75。
*ibid. S. 245。

3頁
*ibid. S. 16。
*GPSGには、文脈に依存した語彙装入規則がなく、前終端(preterminal)のカテゴリーAの規則を共有する語彙項目がAの下位カテゴリー化環境に従う。
a)VP→V[SUBCAT, 2](V[2]と略記される)。
b)<lesen, [N, −],[V, +],[BAR, 0],[SUBCAT,2 ], { }, lesen‘>
 a)は、語彙項目b)を支配している。語彙項目は、音韻、カテゴリー、不規則な形態(ここでは空)、意味に関する情報を含んでいる(ibid. S. 34)。
*ibid. S. 26。
*ibid. S. 27。
*ibid. S. 29。

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イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ19

注釈

1頁
*MGの解説書としては、Gebauer(1978)、Dowty, Wall and Peters(1981)、白井(1985)などがある。
*GPSGの解説には、Naumann(1988)、Uszkoreit(1987)、池谷(1988)などがある。
*この小論では、慣用句(Phraseologie)の基準といえるイディオム性(Idiomatizität)、安定性(Stabilität)、語彙化(Lexikalisierung)、および再生(Reproduzierbarkeit)の中で、特に、イディオム性の高い表現を指してイディオムと呼ぶ。(Fleischer 1982. S. 34)イディオム性とは、個々の構成要素の意味と全体の意味との不規則な関係であり、安定性とは、構成要素の交換の難しさを指し、語彙化とは意味に関する辞書的な扱いであり、語彙化とともに統語上固定したと語彙的な単位を指す。 
*カテゴリー文法の解説の一つにAjdukiewicz(1967)がある。その中で、基本的なカテゴリーといえる文(s)および名詞(n)と複合的なカテゴリーs/nnは区別され、これらの操作するための規則として、相殺(s/nn→s/n)を持つUCG(Unidirectional Categorial Grammar)が提唱されている(ibid. S.213)。PTQは、この手法を継承する。カテゴリー文法の歴史に関する詳細な説明は、Casaudio(1988)にある。
*Montague(1974)S.249。
*(2)S2のような統語規則と統語操作の区別の意義については、Dowty(1982)による説明がある。彼は、主語や目的語に対応する文法概念は、個別言語から離れて、一般的に規定されるとし、例えば、「主語−述語」規則としてS3:<IV, T>,t>を設け、その入力IV(動詞句)、T(名詞句)、その出力t(文)およびこれらを取り持つ統語操作F2のカテゴリー的な指定を普遍的な役割としてS3に課している。
 これに対して、言語間で異なるのは統語操作Fであり、英語(SVO)と日本語(SOV)などの語順の違いは、F2により説明される。このように、統語規則と統語操作の区別を含む統語規則S3により、IVの語句と結びつけられる名詞句は、主語と定義される(ibid. S. 84)。

花村嘉英(2022)「モンタギュー文法からGPSGへ−イディオムの構成性をめぐるモデル理論の修正」より

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 Thomason(1972)は、(24)のような述語の誤った種類への適用から生じた表現を分類上不正確(sorial incorrectness)と呼び、それに対して真理値はないと考えている。*

(24)Der Schatten der Zentralheizung ist warm.

(24)の否定が一見真であるようにみえる。しかし、否定には、選択的な意味(ある選択をすることがすでに他を選択している)と排他的な意味(単に否定されることが拒絶される)があるとして、(24)の否定を前者の意味と考え、真理値付与の対象外として扱っている。* では、真でも偽でもない表現は、どこに位置づけられるのであろうか。
 諸々の特性なり役割からなる論理空間(Logical Space: LS)があるとする。* これは、ある種の概念上の資源から生成される。LSにおける形式言語Lには、二項述語QにLSの部分集合(LSの構成要素の順序対の集合)を割り当てる分類上の指定Eがある。* この部分集合(Eの地域)は、Qが肯定も否定もされうる点を含んでいる。 
(24)の所在地は、ここである。言語Lには、Eと関連して二項述語QにE(Q)の部分集合s(Q)(sは指標<i, j>)を当てるsが存在する。すなわち、ILの基本表現に指示対象を対応付けるために、ここでは、PTQとは異なる二段階の手順を踏んでいる。
 M、i、j、gに関するILの有意表現αの外延記述を(25)の形に修正する。

(25)αM,E, i, j, g

 s(Q)を設けることにより、LS中の点pを占める個体Qv1, v2(v1, v2はそれぞれ個体変項)を満たすように、pの集合を指定することができ、spielen‘‘が項としてdie-erste-Geigeだけを選択することが説明される。

花村嘉英(2022)「モンタギュー文法からGPSGへ−イディオムの構成性をめぐるモデル理論の修正」より

イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ17

 修飾語の分析例として、GPSGの枠組みで構成性(フレーゲの原理)を維持するために、イディオムの一部に修飾語を付加 することができるかどうか自身で試したことがある(花村 1991)。但し、本書では、論理文法の歴史に従って構成性を強く意識することはない。条件文やテキストを扱うために、中間処 理に依存する方向で理論が展開していくためである。GPSGは、統語論に文脈自由の句構造文法を、そして意味論にMontague Grammarを採用した世界的に有名な言語理論である。
 ここでの問題点は、例文(36)に示されている。形容詞leibhaftig の形態統語的な修飾は、確かに名詞Hundに掛かっているが、意味的な修飾は、この名詞ではなく動詞になるからである。それ故、本書では、leibhaftigをファジィ論理でいうある種のヘッジとして扱い、さらに、イディオム自体もヘッジと見なすことができるという立場でこの問題を処理している(イディオムの原理)。
 その理由は、Fleischer (1982)が説くように、慣用句がイゾトピー(同位元素性)のようなテキスト内の様相パラメータを 特別な方法で識別することができると考えているからである。これにより、Montague Grammarのイディオム分析は、拡張されることになる。なお、Fleischer (1982)は、イディオム性を語彙の構成要素の意味と文全体の意味の間に存在する不規則な関係としている。

花村嘉英(2022)「イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ」より

イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ16

 この立場に立つと、例えば、schön Xの内容は、 Xの意味にかなり依存することになる。 しかし、(30)のように「美しい」の標準が修飾される名詞(肋骨)によって決まらないことがある。重要な特徴(レントゲン写真)は、むしろ前述の文脈によって提供されると考えた方が自然である。標準(STANDARDの属性値としての役割を果たすパラメータのアンカー)は、修飾される名詞の特徴(関係)によって決まるが、文脈に依存する場合もあるということになる。
 Angeblich(自称の、表向きの)のような形容詞は、angeblich XがXである必要はないという理由から、解説7で説明した制約と一致しないように見える。この場合、名詞の制約は、angeblich な関係の変数として挿入される(31を参照すること)。そして、 angeblicher TäterのようなNʼの内容は、(32)に示されているnom− objになる。この種の名詞により言及される個人は、文脈上決まるある個人が実際に犯罪者でなくても、犯罪者であると主張すれば、成立するからである。

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5 HPSGによるイディオム分析

 論理文法では、量化と同様に、修飾の問題もしばしば取り上げられている。* ここでは、名詞を修飾する形容詞がテーマになる。また、これと関連してイディオムの内部を修飾する形容詞、例えば、auf den leibhaftigen Hund kommenのleibhaftigについても検討するが、これは、フレーゲの構成性原理がポイントになる。*
 ここでの研究の対象は、修飾語、特に名詞を修飾するまたはイディオムの一部を修飾する形容詞である。まず、付加的な形容詞「青い」の語彙登録に関するローカルな値の処理を見てみよう。(27)のような形容詞は、指標の制限が形容詞からなるpsoa とNʼ主要部の名詞からなるpsoaを含んだNʼを形成するために、名詞の構成要素と結合することになる。
 しばしば議論になるが、色彩用語は、その値自体が目盛りを固定する隠れたパラメータになることがある。ここでは、「青さ」を決定する尺度がそれに当たる。つまり、「青い」という関係が付加的な役割(STANDARD)を持っていて、その値は、文脈上で決まる特徴であり、「青さ」を決定するための標準を提供してくれる。これにより(29)のような形容詞に対して制約を設けることが可能になる。これらは、修飾する名詞と関連した特徴を変数とする関数として処理されるべきである。

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 Thomason(1972)は、(24)のような述語の誤った種類への適用から生じた表現を分類上不正確(sorial incorrectness)と呼び、それに対して真理値はないと考えている。*

(24)Der Schatten der Zentralheizung ist warm.

 (24)の否定が一見真であるようにみえる。しかし、否定には、選択的な意味(ある選択をすることがすでに他を選択している)と排他的な意味(単に否定されることが拒絶される)があるとして、(24)の否定を前者の意味と考え、真理値付与の対象外として扱っている。* では、真でも偽でもない表現は、どこに位置づけられるのであろうか。
 諸々の特性なり役割からなる論理空間(Logical Space: LS)があるとする。* これは、ある種の概念上の資源から生成される。LSにおける形式言語Lには、二項述語PにLSの部分集合(LSの構成要素の順序対の集合)を割り当てる分類上の指定SPがある。* この部分集合(SPの地域)は、Qが肯定も否定もされうる点を含んでいる。 
 (24)の所在地は、ここである。言語Lには、SPと関連して二項述語QにSP(Q)の部分集合s(Q)(sは指標<i, j>)を当てるsが存在する。すなわち、ILの基本表現に指示対象を対応付けるために、ここでは、PTQとは異なる二段階の手順を踏んでいる。
 M、i、j、gに関するILの有意表現αの外延記述を(25)の形に修正する。

(25)αM,E, i, j, g

 s(Q)を設けることにより、LS中の点pを占める個体Qv1, v2(v1, v2はそれぞれ個体変項)を満たすように、pの集合を指定することができ、spielen‘‘が項としてdie-erste-Geigeだけを選択することが説明される。

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4.2 モデル理論の修正

 GPSGが採用しているPTQのモデルの定義とは、基本表現に対して次の形式で指示対象を当てていく。あるタイプの可能な指示対象の集合として、De、Dt、D(a, b) 、D(s, a) がある。*

(23)M=<A, I, J,≦,F>およびg。
1 A, I, Jは、それぞれ空でない個体、可能世界、時点の集合。
2 ≦は、Jに関する線形順序。
3 Fは、ILのすべての定項を定義域とする関数。
4 a∈Type、α∈Conaならば、F(a) ∈S a。
5 gは、ILのすべての変項の集合を定義域とする関数。
6 uがタイプaの変項であるとg(u) ∈D a。  

 ここで、Fは、aタイプの定項(Con aは、ILのaタイプの定項の集合)に対してその内包としてS aの要素を当て、gは、aタイプの変項に対してその指示対象D aの要素を当てる。しかし、(22)の2種のspielenの内包表現にこの方式を当てた場合、指標の指定に問題が生じる。spielen‘とspielen‘‘は、それそれ<NP, VP>タイプの抵抗ゆえにそれらの外延は、指標に依存することになる。(23)4 αM, i, j, g=F(α)。ここでαは、spielen‘またはspielen‘‘。Mは、上記モデル、iは、i∈I、jは、j∈Jである。または、これらがNPタイプを項とし、VPタイプの複合表現を生むことから関数適用規則が使われる。α(β)M, i, j, g=αM, i, j, g(βM, i, j, g)。ここで、βは、die-erste-Geige‘またはdie-erste-Geige‘‘である。この際、spielen‘‘がその項としてdie-erste-Geigeだけを選択する点が説明できない。この点をThomason(1972)に従って修正してみよう。

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4 イディオムの構成性

4.1 GPSGのイディオム表記

 これまでのイディオムに関する分析の多くがイディオム内に統語構造は認めるが、その全体の意味が部分の意味からは合成されないとの立場に立っている。* 一方、GPSGは、イディオムの一部に修飾(19)なり量化(20)がかかることを理由として上げ、その部分的な意味にも目を向けた記述法を採用している。*

(19)auf den leibhaftigen Hund kommen.
(20)zweiten Nachwuchs ins Leben rufen.
(21)die erste Geige spielen.

 (21)のdie erste Geige とspielenは、複合的な語彙翻訳のメカニズムによって、それぞれ2種の内包表現が割り当てられる。* インフォーマルに記すと、前者は、die-erste-Geige‘(第一バイオリンの内包)とdie erste Geige‘‘(音頭の内包)、後者は、spielen‘(弾くの内包)とspielen‘‘(取るの内包)である。これらの内包表現は、他動詞の翻訳をNPタイプの内包からVPタイプの指示対象への部分関数として扱うことにより結びつけられる。

(22)fi(spielen‘(die-erste-Geige‘))=spielen‘‘(die-erste-Geige‘‘)

 ここで、fiは意味上の結合しであり、spielen‘とspielen‘‘の定義域は異なる。しかし、このような部分関数を適用するには、モデル理論に関する若干の修正が必要である。

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 次に、Cラベルの接点の娘の翻訳を結ぶ際に、(16)のタイプ駆動の方式が採用されている。*

(17)α∈ME(a, b), β∈ME a, →α(β)∈ME b

(17)は、α、βがそれぞれ意味タイプ<a, b>、<a>を持つILの有意表現ならば、α(β)は、タイプの有意表現となることを示している。例えば、(15)のS、NP、VPタイプのILへの翻訳は、(18)となる。

(18)1 FR:(S, {NP‘, VP‘}m)={ VP‘(NP)}
2 FR:(NP, {Det‘, N‘}m)={ Det‘(N)}
3 FR:(VP, {V[2]‘, NP‘}m)={ V[2]‘(NP)}

 関数実現(Functional Realization: FR)は、タイプaとマルチセットS(有限回繰り返される同一要素を含む集合)を入力都市、関数適用の際、要素の複数買いの使用を禁止する制限およびタイプaのILの適切な表現を条件とする集合が出力となる。* こうして(10)のID規則、それに対するLP規則、素性に関する諸条件、(15)のタイプ割り当ておよびタイプ駆動の翻訳を経て、(11‘‘)の木が認可される。

(11‘‘)  S, lesen‘(ein‘(Buch‘))(ein‘(Mann‘))
△  NP, ein‘(Mann‘) Det, ein‘ N1, Mann‘ VP, lesen‘ (ein‘(Buch‘)) V [2], lesen‘ NP, ein‘(Buch‘)
Ein  N[1], Mann‘ liest Det, ein‘ N1, Buch‘ ein N[1],Buch‘, Buch

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 ここでは、Dowty et al (1981)に従い、PTQで採用されている個体概念(s, e)の代わりに単に個体(e)を当てている。表現のタイプ付与は、モデル内でのそのタイプの可能な支持対象(D)の決定につながる。指示対象は、モデル理論のプリミティブな要素(個体(e), 真理値(t), 内包または指標(s))からなり、例えば、D(指標(s)(可能世界(i)と時点(j)の対)の集合からtタイプの集合への関数と読む)は、命題を、Dは、個体の集合を、D<s, , t>>は、個体の集合の属性を表す。
 PTQのように、統語カテゴリーに意味タイプを割り当ててから翻訳規則が設定されることはない。まず、カテゴリーCの語彙項目(α)の翻訳が(16)の部分木により認可される。* 

(16) C,α‘
     ↓
     α

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3.2 タイプと翻訳

 PTQは、統語カテゴリーと意味タイプ(ILの有意表現の意味上のクラス分け)間に準同形または構成性の写像を持つが、GPSGでは、双方をつなぐ関数タイプを準同形としては扱わない。これは、1.2.1にも示したように、GPSGでは、統語カテゴリーが意味構造の反映のない素性値指定の場合からなる複合体と見なされているからである。関数タイプによる(10)の統語カテゴリーに対するタイプ割り当ては、(15)になる。但し、複合タイプには、簡略化のためにカテゴリーラベルを用い、Sは、文カテゴリーを、Sは、内包タイプを表している。

(15)
1 TYP(S):
2 TYP(NP): , t>>
3 TYP(N1): , t>>
4 TYP(Det):< N1, NP>
5 TYP(VP):

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イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ8

3 意味論

3.1 GPSGの意味論

 モデル理論の枠組みで優位表現に対し指示対象を回帰的に定義していくGPSGの意味論は、Montague Grammar 同様、真理条件意味論および可能性世界意味論を備えている。しかし、若干の修正は見られ、以下でその点を考察していく。

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2.2.4 FFP、CAP、HFC

 これらは、木の中での素性の分布を決定する普遍的な制約である。FFPは、部分木の親カテゴリーの足素性がその娘の足素性のユニフィケーションに等しいことを示してくれる。*足素性は、NP[NULL, +]/NPというカテゴリーのSLASH素性や関係代名詞の素性値指定[WH[WHMOR R]]などに現れる。NULLは、空のX2を導く(13)のメタ規則により認可される。

(13)スラッシュ終端メタ規則1(Slash Termination)
   X→W, X2

X→W, X2[NULL, +]

(14) ein Mann, dessen die Welt bedarf, liest ein Buch. 
S △ NP[PLU, −] → VP 
△ liest ein Buch NP[PLU, −] S
ein Mann △
NP[WH[WHMOR R]] S/NP

N[WH[WHMOR R]]   NP[PLU, −] →VP/NP
dessen die Welt NP[NULL, +]/NP V bedarf

 CAPは、部分木の娘同士の素性間を受け持つ。例えば、部分木の文末のうち、因数であるカテゴリーの素性を関数であるカテゴリーに引き渡す役割を果たす。* この種のCAPが作用して、(14)のNP素性がVPに伝わる。HFCは、部分木の語彙的主要部となる娘カテゴリーにその親カテゴリーが待つ主要部素性を受け渡していく。* HFCは、部分木の語彙的主要部となる娘カテゴリーにその親カテゴリーが持つ主要部素性を受け渡していく。

(11‘)S[N, −][V, +][V[FIN]]
△ NP[N, +][V, −][PLU, −][PER, 3] VP[N, −][V, +][V[FIN]][PLU, −]
△ Det N1 [N, +][V, −][PLU, −][PER, 3] △  V[N, −][V, +][V[FIN]][PLU, −] NP
Ein Mann N[N, +][V, −][PLU, −][PER, 3] liest ein Buch

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2.2.3 メタ規則

 メタ規則は、基本的なID規則だけでは表現できない、ID規則からID規則への関係(受身、等値、スラッシュな)を扱う。その適用範囲は、語彙的ID規則に限られている。また、この規則は、回帰的には使われない。その数を有限とすることで文脈自由の性質を保つのである。*

(12)主語−助動詞倒置メタ規則(Subject-Aux Inversion: SAI)
V2[[SUBJ, −]] →W
V2[[INV, +], [SUBJ, +]] →W, NP

(12)のメタ規則は、(10)4のようなID規則から文カテゴリーSを平らなS構造へと展開する。Wは、ID規則の中の任意のカテゴリーを表す変数である。また、素性値指定[INV, +]は、[VFORM[FIN]](時制)を素性値指定[SUBJ, +]は、[N, −], [V, +], [BAR, 2]を含意している。*

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イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ5

2.2.2 ID規則とLP規則

 親とそれが直接支配する娘とからのみ構成される部分木は、ID規則により写し出される。ID規則の担う情報は、親と娘の直接支配関係だけで、部分木の構成要素間の線的順序は、LP規則に委ねられる。こうした情報の二分化は、ドイツ語などに比べてより語順が自由な言語の場合*、従来のPSGでは、一度に一つの規則が述べられるだけで、句構造を全て列挙しなければならなくなるゆえに取られた措置である。* 

(9)
PSG A→BCD, B→BDC, B→CD, C→ABD, C→BAD, C→BDA
GPSG ID規則 A→B, C, D, B→C, D, C→A, B, D LP規則 B

イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ4

 素性と素性値の対の集合からカテゴリーが構成される。* この対は、素性値指定と呼ばれる。(4)のNPを正確に記すと、それは、次のような素性値指定の集合と考えられる。但し、カテゴリーのNと素性のNを混同してはならない。

(5)NP=[N, +], [V, −], [BAR, 2], [PLU, −], [PER, 3], [CASE, NOM]]

 カテゴリーには、主要なものと副次的なものとがある。前者は、N、V、A、Pおよびそれらの投射、後者は、Det(限定詞)、CONJ(接続詞)、COMP(補文標識)などで、これらは、BAR素性の値を欠いている。しかし、GPSGでは、BAR指定がなくてもSUBCATが指定されていれば、語彙カテゴリーのメンバーなのである。*

(6)A=[N, +], [V, −]
B=[N, +], [PLU, −]
Unif(A, B) =extension(A) =extension(B)

 (6)は、Unif(A, B)がカテゴリーA、 Bの合成([N, +], [V, −], [PLU, −])を値とする関数で、それがAとBのそれぞれに含まれるすべての素性値指定を拡張したものになるということを表している。カテゴリーA、Bのユニフィケーションとは、A、Bの拡張であり、かつ最小のカテゴリーを求めることである。*
 素性間には、その一定の依存性を表したFCRがある。*

(7)FCR1 [BAR, 0] =[N]&[V]&[SUBCAT]
FCR2 [BAR, 1] ⊃〜[SUBCAT]
FCR3 [BAR, 2] ⊃〜[SUBCAT]
FCR4 [NULL, +] ⊃[SLASH]

 FCR1は、あるカテゴリーが[BAR, 0](語彙的主要部)となるには、N、V、SUBCATに関する素性の指定がある時に限るという意味である。FCR2とFCR3は、語彙的主要部の当社が下位カテゴリー化をせず、SUBCATの値を持つことはないといっている。また、FCR4により、NULLから足素性値SLASHが導かれる。NULLは、FFPの説明の際、再び取り上げる。
 素性と素性値が取る通常値を指定するためにFSDがある。*

(8)FSD1 〜[NULL]
FSD2 〜[NOM]
FSD3 [INV, −]

 FSD1とFSD2は、素性[NULL]と素性値[NOM]が有標であることを、FSD3は、限られた場合に等値が起こることを表している。

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イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ3

 素性は、3種ある。部分木の親と語彙的主要部が等しい値を持つ主要部素性(N、V、PER、BAR、SLASH、INV、VFORM、SUBJなど)、部分木のどの子からも上昇可能な足素性(SLASH、WHなど)そして一つの接点に留まって他に伝わることのない素性(CASE、WHMOR、NULL)とである。CASE、WHMOR(Wh形態)、NULL(音韻的に空)など。*
 素性値には原始的な値とカテゴリー的な値がある。

(3)PLU+, −
PRE 1, 2, 3
CASE NOM, ACC, FEN, DAT
(4)S NP[[PER, 3], [PLU, −]]
VP[AGR NP[[PER, 3], [PLU, −]]]

 (3)は、数、人称、格素性がそれぞれ取ることのできる原始的な素性を示し、(4)は、主語と動詞との一致を示す際に用いられるカテゴリー(名詞句で3人称単数)が素性値となる素性AGRを示している。CAPの説明の際に、一致については再び取り上げる。

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イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ2

2 統語論

2.1 PTQの統語規則

 PTQで採用されている17の規則の多くがカテゴリー文法*に基づく関数適応規則になっており、(1)のように規定されるカテゴリー間を連接していく。*

(1) 1 e, t∋Cat、2 A, B∈Catならば、A/B, A//B∈Cat
(2)S1 すべてのカテゴリーに対してBA⊆PA、S2 α∈PIV/IVまたはα∈PIV//IVでβ∈PIVならば、F1(α, β)∈PIV

(1)では、eが個体を、tが真理値を表すカテゴリーで、A/B、A//BはともにBカテゴリーと結び付いてAカテゴリーを派生する。2種のスラッシュは、統語上の区別のために採用されている。(2)S1は、複合表現を派生する規則ではなく、任意のカテゴリーに関し、そのすべての基本表現がその句の集合に含まれることを説明している。(2)S2は、例えば、動詞句修飾の副詞langsam(IV//IV)がlaufenなどの自動詞(IV=t/e)と結び付いて新たな動詞句を派生する一方、lesenと結びついてversuchen zu lesenのような表現を派生するversuchenのカテゴリーがIV//IVとなることを示している。*
 PTQには話法の助動詞のカテゴリーはない。これは、内包論理の中で演算子として現れる。否定詞も基本表現には含まれず、時制演算子とともに主部と述部を結びつける統語規則の中で導入され、接続詞も文なり句なりを結ぶ統語規則として組み込まれている。さらに、限定詞に関する統語規則の一つとして普通名詞に不定冠詞を加えて名詞句を派生する規則がある。

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イディオム−モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ1

1 はじめに

 この論文は、モンタギュー文法(Montague Grammar: MG)*から一般化句構造文法(Generalized Phrase Structure Grammar: GPSG)*そして主要部駆動句構造文法(Head driven Phrase Structure Grammar:HPSG)への理論的な変遷を追いつつ、GPSGやHPSGが採用しているイディオムや修飾語の分析*に対し、モデル理論からの修正を試みる。
 最初に、それぞれの理論の統語規則を考察し、GPSGによるMGの意味論の修正を行い、イディオムに関する内包論理(Intensional Logic: IL)の有意表現に対する指示対象の割り当て方を検討する。
 続いて、GPSGの統語論と意味論を拡張することに成功したHPSGを使用して、イディオムの内部が修飾される例を分析する。形容詞の修飾は、統語的であるが、意味的には副詞のように動詞にかかる。これをHPSGによるイディオムの原理で説明する。また、イディオムが小説に入ったときの扱いについても合わせて検討する。

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プロフィール
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花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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