2007年10月29日
●謙譲語・へりくだりすぎはNG
《日本語診断》
謙譲語(けんじょうご)について、一言:
謙譲語は、話し手が一歩へりくだり、相手に対し卑下謙譲を含ませて
表現する語です。
見る、を→拝見する
言う、を→申し上げる
などですね。
「素敵なハンドバックですね」
「これ、主人からいただいたのよ」
友人からバックをほめてもらったようですが、
受け答えの言葉遣いに問題があります。
この場合の「いただく」は「もらう」の謙譲語です。
ですが、自分の主人からの行為を第三者に話すとき、
敬語を使うのは変なのです。ここは「もらったのよ」と
言うのが適当です。
「これ、ちょっといただいていいですか」
「どうぞどうぞ。いただいてみてください」
これはデパートの試食コーナーでの客と店員との
やりとりです。
この場合の「いただく」は「食べる」の謙譲語です。
立場からいえば本来、客が店員に対し「いただく」という
謙譲語の必要なないかもしれません。
しかし実際は、面と向かった相手に言う場合、このくらいの
謙虚さは必要かも知れません。
一方、店員の受け答えはどうでしょう。「いただいてみてください」
では、客にへりくだらせることになってしまいます。
普通に「食べてみてください」とするか、「食べる」の
尊敬語「召し上がる」を使って、「召し上がってみてください」
とやれば、気持ちがこもります。
「誰か先方にこのサンプルを届けてくれないか」
「私が行かせていただきます」
上司の頼みを部下が進んで引き受けた場面ですが、
「行かさせていただく」には問題が二つあります。
一つは語法の誤りです。
「させて」+「いただく」は、相手の許可の下に
自分が何かをする、というときに用いる、敬意の高い
謙譲表現ですが、「行く」に用いることはできません。
したがって、正しくは「行かせていただきます」が
正しい表現といえます。
しかし通常職場で、みなが忙しく仕事をこなす場面で
は少々へりくだり過ぎの感があります。
この場合は「私が行きます」と言った方が率直に気持ちが
伝わるように思います。
昨今、お構いなしに「・・・させていただきます」を
何かと多用する傾向があるように思います。
“とにかくへりくだった言い方をしておけば安心”という
真理が働いているのかもしれません。
敬語は人間関係を円滑にする上で、とても大切です。
でも必要以上に過剰な敬語は相手を不快にさせることも
あります。
敬う心があってこその敬語ですね。
参照→西山裕子さんの日本語診断室