2008年01月09日
墨攻 レビュー 人は何のために戦うのか?
人は、果たして、何のために戦うのだろうか?
「墨攻」の舞台は、紀元前370年ごろの古代中国。
墨攻 DVD
★★★★
製作年: 2006年
製作国: 中国/日本/香港/韓国
収録時間: 173分
出演者: アンディ・ラウ アン・ソンギ ワン・チーウェン ファン・ビンビン ウ・チーロン チェ・シウォン
監督: ジェイコブ・C・L・チャン
脚本: ジェイコブ・C・L・チャン
詳細: 原作:森秀樹/酒見賢一/久保田千太郎
メーカー: アミューズ
ジャンル: アクション アジア 史劇
墨攻 関連作品
戦乱の中国を舞台に、“墨守”という故事で知られる戦闘集団“墨家”の天才戦術家・革離(かくり)の活躍を描いた森秀樹の同名コミックを、中国・日本・香港・韓国の合作で映画化した歴史アクション超大作。
「10万の敵に、たった一人で立ち向かう」とは、おおげさなコピーだが、心理戦の部分では、まんざら、嘘ともいえない。
近年の、中国歴史ロマンシリーズの映画は、とてもよい。
なんといっても、「HERO」はすごかった。
あの中国の故事とも言えるストーリーを、現代の映像技術を駆使して、まさに「絵巻」ともいえる映像作品に仕上げた。
「HERO」「LOVERS」…といった、この一連の作風は、その「美」が高く、観るものを魅了する。
「墨攻」もその流れと感じている。
戦争が主眼のため、「LOVERS」などと比べると、モノクロの世界に近いが、それでも、戦の軍隊が押し寄せるシーンなどは圧巻だ。
墨家という戦闘集団。戦術の天才たち。
墨家のひとり。革離(かくり)が梁城に現れ、大国・趙が送り込んだ10万の大軍を前に城を守り抜くというお話だ。
ただし、単に戦争ものというよりは、政治・嫉妬・裏切り・策略といった内部の人間の争いに巻き込まれていくストーリー。
ただ、惜しむらくは、その辺のストーリーは、あまりよく、描ききれていないと思う。
墨家の思想が、攻撃をせずに守り抜く「非攻」という平和思想であるのなら、なぜ、この原作および映画は「墨攻」という題名なのであろうか。
その辺だけは、もう少し語って欲しかった。
ただ、私にとってインプレッションを呼び起こす「名シーン」が、この映画にもあった。
ひとつは、城のまえの頂で、戦いを始める前に、革離(かくり)と敵の猛将軍・巷淹中が二人だけで、ゲーム(スゴロクと軍人将棋をあわせたかのような)をするシーン。
そして、またもうひとつは、ラストに梁城を占拠した趙軍の追い出しに成功したが、その結果、裏切りの梁王が復活して、絶望を感じ、弓の名者の若者がみずから命を閉じたシーン。
倒れたまま、刀がさされているのであろう。カメラは死者をけして写さず、ただ体に刺して垂直に立っている刀のみを写す。そして、それを見た部下の兵たちは、同じく希望をなくし、武器をすて、国を捨て、野に帰っていく。
この二つの名シーンが見れただけで、けっこう満足。
こういう、古典ロマンは、やはり、いい。
ひとは、何のために戦うのだろうか?
友のため、愛する者のため、それとも、自分のため、いや、生きるためであろうか?