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2024年04月10日
待ってました! 「つかこうへい正伝U」 長谷川康夫
’
「初級革命講座 飛龍伝」を
初めて観たときの衝撃は
未だに覚えてる。
機動隊が元運動家に言う
「頼むからちゃんと挫折してくれ。
じゃないと、お前を弾圧した俺らが浮かばれない」の
セリフに、身体が震えた。
感動と一緒に笑いがこみ上げる、なんて
経験を初めて味わった。
‘
本作はそんな僕にとって待望のパート2だ。
396ページ、読み進めるのが楽しくて
仕方なく、一気に半日で読了。
付箋でいっぱいになったが、ネタバレに
なるのも申し訳ないので、少しだけ引用。
’
つかこうへいとはどんな人だったのか。
風間杜夫は語る。
「なんせあの人は、どうすれば役者が輝いて
見えるかを見抜く天才だったからね。
僕らとしては、ただ、つかさんを気持ちよく
させて、いい芝居を作ってもらいたいだけ
なんだよな。
結局それが自分に返って来るわけだから」
’
そんなつかは、芝居について
「誰が誰をどう思ったか、どれだけ愛したか。
どれだけ憎んだか。そしてその両方だったか。
大事なのはそれだけ。芝居なんて、これさえ
あればいいんだ」
’
いやー、かっこいい。
’
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2024年04月09日
NHKスペシャル 「Last Days ー坂本龍一最後の日々ー」
亡くなる二日前までの映像が
切なすぎるドキュメンタリー。
’
当たり前のことだけど
「誰でも絶対に死ぬんだな」と
この頃しみじみそう思う。
番組でも彼が言ってる
「どう逝くかですよね」
うーん、ほんとその通りなんだよね。
’
大腸がんでのたうち回ってるとき、
少しでも痛くない体勢はないかと
ベッドで何百回と体を動かした。
そのとき、「ああ、人間って
切羽詰まったら、高尚なことなんて
考えないんだ。野生で動くんだ」と思った。
’
番組では教授の残した日記を軸に
最後の日々までを淡々と描く。
僕とはもちろん雲泥の差で
音楽を、芸術を、人生をきちんと
まっとうしようという意思と
知性が彼にはあふれてる。
でも時折、ストレートに「チクショウ」と
いった声を文字に残していることに
なぜかほっとし、涙が出る。
’
生きてられることの奇跡。
きちんと噛みしめろ。
指導してきた東北ユースオケの定演を
ベッドの中で指揮する教授を
見て、泣きながら自分に言い聞かせた。
二度目の読了 「酔いがさめたら、うちに帰ろう」 鴨志田穣
自己責任という言葉が嫌いだ。
大抵の場合、上から目線の奴が弱ってる
人に吐くからだ。
'
著者は漫画家の西原理恵子さんの元夫で
戦場カメラマン。
育った環境、戦場での悲惨な経験などが
トラウマとなり、アル中になった。
本作は闘病記であり、同じように入院した
患者たちの観察記にも
なっている。
'
このラインの名作に、中島らもの
「いつかどこかのバーで」があるが、
比べるとこちらのほうが軽く情けなく、より私小説的だ。
三か月酒を断つ。寿司屋に入る。
我慢してお茶を飲み、寿司でお腹一杯になる。
最後に大将がこれどうぞと小鉢を差し出す。
奈良漬け
だった。好物だったので一気にかじった。
ここからは少し長くなるが本文をひきます。
'
初めて気がついた。
奈良漬けとはなんと酒の香りと味がするのだろうか。
少し怖気づいたものの、すべて平らげてしまった。
頭と体がぼうとしてくるのがわかる。
(中略)勘定を済ませ、外に出ると、足が自然に
コンビニに向かっていた。
気がつくと手にウォッカを持っている。
「うわっ」とびっくりして、あわてて元に戻すも、
「ノンアルコールビールならいいかも」
三本を手に取り、成分表を見ると
“アルコール度〇・五パーセント”と書かれている。
「平気さ、これくらい」
さっそくコンビニの前で一本目を空けた。
「あーあ、始まっちゃった」
'
……バカだねぇ、ほんと。でもなんか憎めない。
著者の文章の魅力はそこにある。
もちろんアル中を擁護しているわけではない。
でも小説はダメな人間を描いているほうがとても響く。
少なくとも僕には。
同じように思ってくれる方は、ぜひご一読ください。
'
2024年04月05日
情熱大陸 「ウクライナ国立バレエ芸術監督・寺田宜弘」
知らなかった。ウクライナバレエ
団の監督が日本人だったなんて。
寺田さんは少年時代からこの地で
バレエを学びソリストしても活躍していた。
そして日本人で初めて芸術監督になった。
’
戦時下の今でも週に4回バレエとオペラの
公演をやっている。
ウクライナの人々は現実を忘れるひとときとして
このバレエ団を愛している。
’
戦禍に揺れる国にあえてとどまり、
バレエの火を灯し続ける団員と寺田さん。
観ているうちに、「頑張れ、頑張れ」と
思わずテレビに向かってつぶやいていた。
’
芸術の本当の凄さ、大切さを
寺田さんから教えてもらった。
「頑張れ、ウクライナ」
’
ネトフリ 「アメリカン・ファクトリー」
秀逸なドキュメンタリー。
閉鎖したアメリカの工場を
中国企業が買う。
多くの雇用が生まれ街は大歓迎
ムードだったが、米中の働き方の
違いで次第にトラブルが。
’
映画は淡々とお互いの国の労働者の
考え方を、クールに描いていく。
それだけに両者の違いが浮きぼりになる。
同じ日本人同士でも一緒に働くと
なるといろいろあるのに、国が違えば
さらに難しいよね。
’
第92回アカデミー長編ドキュメンタリー賞受賞。
’
2024年04月01日
うーん、これは無理があるなぁ 「オッペンハイマー」
ノーラン監督の作品はこれまで
なぜか食指が動かず本作が初。
感想を一言でいえば、寅さんの名台詞
「てめぇさしずめインテリだな」
’
わかりにくさは予習を相当したので
クリア。
映画は、天才科学者の光と闇にスポットを当て
時代が変われば世間の評価がガラリと
変わること、核の虚しさ、無意味さ、
「一人を殺せば殺人だが、百万人を殺せば
英雄である」の怖ろしさを描こうと
しているのだと思う。
’
だからゆえ、なるべく社会や政治的背景を
省き、オッペンハイマーに寄せたのも
理解はできる。
後半は、サリエリとモーツァルトを彷彿と
させる対比も有りだろう。
’
けれどことは原子爆弾だ。
政治的駆け引きの中ですべて行われた大惨事、愚行を
天才の内省だけで追いかけるのは、やはり片落ち
だろう。
’
’
せめてパート1,2と分けてもっと歴史も含め
綿密に描いて欲しかったなぁ。
’
2024年03月30日
フードフォトグラファー 石丸直人(46歳)にWOW
情熱大陸で初めて知ったけど、
素晴らしかった。
助手もつけずひとり最低限の
機材で現場へ向かう。
’
食材をこの子たちと呼び
彼らの声を聞く。
石丸さんが変わったのは、
あるパティシエから、スィーツを撮ったとき
「キレイだけど美味しそうじゃない」と
言われたのがきっかけ。
’
最初は意味がわからなかったが、
フレンチのシェフ、ピエールガニェールの
写真集を見て開眼。
その本を手本に石丸流を構築していく。
以来、ゴディバ、マクドナルド、ドミノピザや
レディーボーデンなどを始め多くのクライアントが
彼にオーダーをするように。
’
石丸の作品は、「音が聴こえる」
「食べ物が動いて見える」「舌触りを感じる」という、
"美味しい"評価を受けている。
’
これ以上は写真を見てもらうのが一番なので
彼のHPアドレスを載っけまーす。
’
2024年03月26日
50年振りのありがとう!
15歳だった。
初めて訪れた彼のねぐらは
倉庫みたいでコンクリート
打ちっぱなしだった。
’
名前はジュンちゃん。
板金工をやってた。
彼は言った。
「お前、映画好きらしいけど、田中登監督の
人妻集団暴行致死事件って見たか」
「いえ」
「じゃあ、(秘)色情めす市場は?」
「それってポルノ映画でしょ。そんなの
見ないっすよ」
「バーカ、お前はわかってないな。
ポルノにもいい映画はあるんだよ」
’
早速観に行った。
凄い作品で衝撃を受けた。
カルチャーは、もっと幅広いって教えてくれた。
「去年ジュンちゃんが君に会いたいって言ってたよ」
伝えてくれたのは、今日一緒に飲んでた同級生のFさん。
昔のシーンが蘇った。
’
すぐにタクシー飛ばして会いに行った。
玄関入った途端、彼は思い出してくれた。
僕は言った。
「ジュンちゃんがポルノの良さを教えてくれた。
あれが映画を作る原点になった」
彼は返した。
「マジで?……泣くよ」
’
僕は静かに頭を下げたあと、気づいた。
あれから50年経ってた。
あはは。呆れるね。
’
2024年03月20日
憧れのひと 「ショーケン 天才と狂気」 大下英治
萩原健一さんにオファーをしかけた
ことがある。
企画していた映画の主役に
お願いしようと思ったのだ。
けれどキャスティングの責任者から
「彼が出るのは自分は降りる。トラブルのは
目に見えてるので」と断られ、諦めた。
’
現場で突然切れる、自分の演技アイデアを
押し付ける、監督以上の演出を他の俳優たちに
行う、などそのときにもいろんな話を聞いたが、
この本を読んで、同じような場面がいくつも
出てくるので納得した。
’
ドラマ「傷だらけの天使」とLP「熱狂雷舞」が
今の僕の3割ぐらいを作っているので、
ショーケンは彼がどんな人であれ、憧れの
存在だ。
誰よりもナイーブで尊大で、小心で大胆で
綿密で杜撰で、無愛想で人たらしで、と
ありとあらゆる矛盾を抱えたスターは
僕にとって唯一無二。
’
でも読後つくづく思う。
企画した映画は頓挫してしまったので、
もしショーケンの出演が決まっていたら……。
あー、考えただけで足が震える。
’
2024年03月16日
三國清三シェフに乾杯!
NHK最後の講義。
貧しい漁村で生まれ中卒で
米問屋の丁稚になった少年が
世界の料理人になるまでの
道のりを明るく語るシェフ。
’
三國さんの本はこれまで読んで
きたので、その半生は知ってましたが、
受講生に料理を振る舞う姿を
見て、改めてかっこいいなと感激。
’
「志を高く持ち、やるべきことを
コツコツとやっていく」
’
母の教えを70になった今でも心に刻み、
カウンター8席ほどの店を作り
自分ひとりで即興の料理を振る舞うことが
新たな夢だそうだ。
’
オレもまだまだ64。
のんびりやるには、まだ早いね。
’
貧しい漁村で生まれ中卒で
米問屋の丁稚になった少年が
世界の料理人になるまでの
道のりを明るく語るシェフ。
’
三國さんの本はこれまで読んで
きたので、その半生は知ってましたが、
受講生に料理を振る舞う姿を
見て、改めてかっこいいなと感激。
’
「志を高く持ち、やるべきことを
コツコツとやっていく」
’
母の教えを70になった今でも心に刻み、
カウンター8席ほどの店を作り
自分ひとりで即興の料理を振る舞うことが
新たな夢だそうだ。
’
オレもまだまだ64。
のんびりやるには、まだ早いね。
’