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2015年10月30日

第四章第二節 川島芳子と七叔

段霊雲の記憶の中ではっきりと覚えているのは、父親の段連祥が《七叔》の前では慇懃に敬意を払って、タバコや水を渡す時も「下僕」のような態度を取っていたことだ。ご飯を食べる時も、《七叔》と方おばあさんが母屋で食事し、父親段連祥と彼女は東の脇部屋で食事していた。《七叔》がいない時だけ、方おばあさんは父親段連祥と彼女を母屋に呼んで一緒にご飯を食べていた。
子供時代の段霊雲の印象に残っているのは、父親の段連祥は第三者がその場にいる時には、《七叔》のことを《七哥》と呼んでいた。しかし彼ら二人だけでいる時には、段霊雲は父親が《七叔》のことを《七爺》と呼ぶのを聞いた。その内情は今となっては知る由もない。しかしこれまでのところ、我々が知りえたのは秀竹はかつて四平の満州警察学校で于景泰と段連祥の教官(上司)であったこと、また秀竹が段連祥から《七爺》と呼ばれていたのは彼らが上下の「組織で」の地位にあったためか或いは秀竹の出身家系や身分と関係があるのかもしれない。これらは皆さらなる検証が必要である。

段霊雲(小雲子)の眼から見た《七叔》はやさしく親しげであった。二〇世紀の五〇年代に、新立城の方おばあさんの家で《七叔》に会うと、《七叔》はいつも尋ねるのであった。
「小雲子、最近方おばあさんから何首詩を教えてもらった?字はどれくらい覚えたか?学校では先生の言うことを聞いているか?七叔がしばらくいなかったから、七叔のことが恋しいかったか?ほら七叔がお前に何を買ってきたかわかるか?」
《七叔》はまるで変装でもするかのように、後ろのほうから布の袋を取り出し、バサッと袋をひっくり返すと、沢山の物がオンドルの上に出てきた。罫線のあるノート、白紙のノート、筆箱、ペン、鉛筆、それからオハジキなどがあった。小雲子は次々と手にとって並べると、うれしくて何度も「ありがとう七叔!」と言った。この時に方おばあさんが部屋に入って来た。《七叔》が彼女に向かって言った。「雲子、ここにいないで、オハジキを持って庭で遊んできなさい。」そのころは、《七叔》が方おばあさんの家に来ると、毎回のように小雲子に彼女が好きな文房具とかお菓子のような物を持ってきてくれた。
段霊雲の記憶では、《七叔》はめったに方おばあさんのところには来ず、方おばあさんと《七叔》の連絡は、どうやら伝書鳩で伝えているようだった。なぜなら新立城では方おばあさんは鳩を沢山飼っていたからである。
《七叔》は《文革》が始まって間もなく、雲南にいる老母の世話に行くからお別れだと言って、段霊雲は長春駅まで彼を見送りに言ったのを覚えている。それ以後は、《七叔》が新立城に来ることはなくなった。
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