2017年08月04日
幼いあたし
「おばあちゃん!もう寝るん?」
「はぁ夕方じゃけー飯食うたら寝るで」
あたしは、
まだ3歳にも満たない女の子だった
いつも近所の知らないおばぁさんお家に、お泊りに出されていた。
幼い私は、
早く寝るのが大嫌いで、
いつも駄々をこねていた。
なぜ、いつも他人の家に泊まらされてるのかも
疑問にも思わない歳だった。
小学生になってから、その理由がわかったのだけど、兄があたしにはいたが、
体が不自由で、介護が必要だった。
母は大変な苦労があっただろう。
あたしの島では、他人の家でも、自分の家でも、まったく変りなく
他人の子を、泊めてくれるような環境だった。
「おばぁーちゃん!うち、今から見たいテレビがあるけん〜みせて〜」
ばぁちゃんは、薄暗い土間の奥で、割烹着のすそをもちあげ、手をふきながら、
「じぃさんに聞いてみぃ?」
とちょっと振り返りながら、お爺さんの方に目線を送った。
あたしは、
もじもじと、ちゃぶ台の下にもぐりながら、
恥ずかし気に、
「じぃちゃん〜だめ?テレビ見ちゃダメ?〜?」
と聞いた。
おじいちゃんは、ももひきに、上半身裸で、湯呑を抱えたまま 微動たりともしてない。
「おじいちゃーーーん!テレビ見たいんじゃゆうてるの!」
やっと、聞こえたのか、
「おおそうか、テレビの?そうかテレビのぅ・・・・」
また止まった。
「いやそうじゃなく、テレビが見たいの!」
というと、
「おおみぃや、見てもええで、この相撲が終わったらのぉ」
「えぇぇぇ・・・」
あたしはそのころ、大草原の小さな家が大好きで、
すもうと同時で放映していた。
でも昔の家庭というものは、
男性上位だったので、
いくら年を取っていても、権限はおじいちゃんにあった。
早く終わらないかと、
うずうずしながら
ばぁちゃんが、敷いた布団の上で、ゴロゴロして待っていた。
2枚仕立ての、バラの花の、ふかふかの毛布がなんとも気持ちが良かったのを、今でも覚えている。
そうこうしているうちに、
「かえてもええぞ、もう見たいのが、白星じゃ。えかったえかった。」
と言ってあたしにチャンネル主導権をくれた。
「わーーーい」
あたしは胸弾ませて、布団から飛び起き、テレビに近づいて行った。
今なら寝たままリモコンもあるだろうが、
そのころはまだ、チャンネル式、
しかも、
なんCHで、やってるかなんてわからない。
ガチャガチャ変えてるうちに、
時間だけたつ。
あたしは早く見たいのだが、なかなか見れないので、
だんだんと悲しくなり涙がでた。
おじいちゃんは重い腰をあげて、
チャンネルを変えてくれた。
しかし、
映ったのは、ローラーが大草原を走っていく姿だった。・・・・
そうなのです。エンディング。
「わーーーーーーん!!!」
あたしは大声で、泣きわめきましたね。
おじいちゃんもおばぁちゃんも、あたしを、抱きすくめながら諭してくれたのを覚えてる。
落ち着いたあたしは、
泣きつかれて、布団に入った。
蛍光灯を切り、豆電球にしたとき
おじいちゃんの、
白髪頭の、てっぺんが豆電球にあたって光ってるのが、
ホタルに見えて、
微妙に笑えた。
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