2016年02月17日
最高速度7GbpsのWiGig 2.4GHz帯5GHz帯60GHz帯のトライバンドへ まずは同じくらいの速度のIEEE802.11acの仕組みを考えよう
今年に入って特に話題になっている、高速無線LANであるWiGigは、今まで使用していなかった60GHz帯を使用し、しかも最高7Gbpsという高速で通信できるため、家でも会社でも干渉に悩まされている私にとっては、とても気になる存在です。
けれどもこのWiGig、一見いいところばかりではありません。
速いには速いけど、理論値は11acの6.9Gbpsとそれほど変わらない7Gbpsだし、11acは200mまで到達するのに比べて、WiGigは10mまでしか届かないとか、遮蔽物に弱いという性質を持っています。
この性質だけを見ると、11acとほぼ同じ速度のWiGigがなぜ開発されるのかという疑問がわいてきます。
同じ速度で到達距離も11acよりは短いのだったら、11acの開発により力を入れて性能アップを計ればいいんじゃないの?と思いませんか?
WiGigを11acと比較したとき、大きく違うところ、それは「通信速度の最低ライン」です。
理由は通信方法または伝送方式の違いに依ります。
ということで、WiGigと11acの違いを、伝送方式の違いから考えたいと思います。
11acの仕組みも知らないと全部説明しきれないので、2回ぐらいに分けて説明したいと思います。
まずはじめに、今回は11acの仕組みについて書きます。
11acの速度を左右する要素
11acの速度を左右する要素は以下の3つです。
- 空間多重伝送(マルチユーザMIMO)
- OFDMのこと
- 搬送波(サブキャリア)に乗せられるビット数
空間多重伝送(マルチユーザMIMO)とは
マルチ送信アンテナからデータを同時に、同じ周波数で送信する技術のことです。
こちらの絵を見てください。これはパソコンにアンテナ3本あって、親機の3本と通信する絵です。
無線LANの親機を紹介する製品ページなどで時々見かける、「2X2 MIMO」とかいうのは、親機のアンテナが2本で端末側のアンテナが2本の通信に対応していますよ、という意味です。
この絵の場合は3X3 MIMOということになります。
2.6Gbpsって書いてあるけど、あくまで理論値ですよ!!
一応、規格11nでは4空間多重(2X2)までを規定していましたが、11acでは5〜8空間多重(4x4まで)を新たに規定しました。
送信できるデータはアンテナの数に比例しますので、最大多重数で比較すると、伝送速度は2倍になります。
OFDMについて
11acは11nの機能を拡張した規格でして、両規格とも、OFDMという伝送方式を使用しています。
OFDM伝送方式では、データを多数の搬送波(サブキャリア)に乗せて送信します。
サブキャリアは、規格とチャネル幅あたりで乗せられる本数が決まっています。
規格11nでは、データ用のサブキャリアの本数は、
- 20MHz幅の中に52本
- 40MHz幅の中に108本
です。図からわかるように1チャンネルあたり20MHzの幅が基本ですが、11nでは2つのチャンネルを1つにまとめる「チャンネルボンディング」という技術を使って、40MHzのチャンネル幅を実現しています。
このサブキャリア1本あたりに乗せられるデータのビット数は同じなので、本数が増えれば増えるほど、通信速度は上がるということになります。
一方、規格11acは、5GHz帯においてチャンネルボンディングを行い、最大160MHz幅のチャンネルをまとめて使用することができます。
ちなみに、160MHz幅分を連続して使用できない場合でも、80MHz幅を2つ使って、160MHz幅としてチャンネルをまとめることができるようになっています。
160MHz幅には468本のサブキャリアを含めることができますので、40MHzまでしかまとめられない11nと比べて、468本/108本 倍の速度が出ることになります。
搬送波(サブキャリア)に乗せられるビット数
ここで、サブキャリア1本当たりに乗せられるデータビット数ですが、次の表のとおりの違いがあります。
11n | 11ac | |
1本のサブキャリアに乗せられるビット数 | 6 | 8 |
最大チャンネル幅 | 40MHz | 160MHz |
サブキャリア | 108本 | 468本 |
規格11nの最大伝送速度は 600Mビット/secなので、その値から計算すると
600Mbps×8本/4本×468本/108本×8ビット/6ビット=6.933333…Gbps
ということで理論値6.9Gbpsが算出されます。
しかし、これは理論値です。実際はこんなに早くはありません。
実際の環境では、干渉や遮蔽物など様々な要素に左右されます。
少し長くなりましたが、実際はこの3つの要素が複雑に絡み合って、11acの速度が出ているわけです。
各要素について、電波が減衰する理由がそれぞれにありますので、現時点で販売されている11ac対応の無線LAN機器では2Gbps以下の速度をうたっているものがほとんどとなっています。
また、先に説明した空間多重転送ではルータ側だけでなく、受信端末側でもこの技術に対応している必要があります。8空間多重方式(4x4 MIMO)に対応している端末は、量販店で販売されているものではまずありません。
最新機種でも2x2 MIMOくらいです。
では、次回はWiGigの伝送方法について書いていきます。
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/4745234
この記事へのトラックバック