2018年07月15日
喜劇『運命の男』
課題「喜劇」
『運命の男』
登場人物
大京寺恭子(29)広告代理店のOL
三宅光男(35)電気メーカーの研究員
ピエール(30)学芸員・フランス人
キャビンアテンダント(40)フランス人
恭子の母(55)
○飛んでいる飛行機
○飛行機・中
座席が二つ並んでいる。
窓側の席に大京寺恭子(29)が座っている。恭子、落ち着かない様子。
恭子、化粧ポーチを持って立ち上がる。
通路に三宅光男(35)が立っている。
三宅はメガネにスーツ。
恭子と三宅が鉢合わせになる。
恭子の唇が三宅のほほに触れる。
恭子「やだー、ごめんなさい!」
三宅「逆セクハラ?」
三宅はハンカチで顔を拭く。
恭子「え?」
三宅「まわりをよくみろよ」
恭子「人が謝ってるのに、なによ、その言い方?」
三宅「今度は逆切れか」
恭子「は?」
と、キャビンアテンダントがきて、
CA「どうされました?(フランス語で)」
恭子「えっと……」
三宅「何でもありません、ちょっと挨拶してただけです、マダム(フランス語で)」
CA、笑顔で去っていく。
恭子、ポカーンとしている。
恭子「今、何て?」
三宅は体をどけて、
三宅「通るの?通らないの?」
恭子「通ります!」
恭子、プリプリしながら歩く。
○トイレ・中
恭子、ドアを勢いよく締め、
恭子「なんだ、アイツ!さいてー!」
恭子、口紅を塗り直す。
○二人座席
恭子が窓側、三宅が通路側に座っている。
CAが飲み物のサービスにくる。
恭子「み、みず、ワータープリーズ」
CAが水の入ったコップを渡す。
三宅「シャンパンをください(フランス語で)」
三宅とCAがフランス語で談笑。
恭子は震えている。
恭子「なんなの?この差は」
三宅、シャンパンを美味しそうに飲む。
恭子、毛布を掛け、震えている。
三宅、恭子、目が合う。
三宅「なに?」
恭子「羨ましいなあと、思いまして」
三宅「なにが?」
恭子「いや、フランス語はペラペラだし、寒くなさそうだし、シャンパン飲んでるし」
三宅「君も飲めば?」
恭子「……緊張しちゃって。実は初めてなんです。一人で海外行くの」
三宅「何しに行くの?」
恭子「……運命の人を探しに」
三宅「見つからないと思うよ」
恭子「えっ」
三宅は恭子をジロジロ見て、
三宅「日本で見つからないから海外で見つけようったって、君みたいな子じゃあ」
恭子「き、君みたいって、私のこと何にも知らないくせに!」
三宅「年齢は二十代後半、仕事はマスコミ関係、親と同居ってかパラサイト、若いころはそこそこモテたが最近は合コンにも誘われなくなった、いい感じの男はいたが振られたばかりで腹いせに一人海外旅行ってとこかな?」
恭子「な、な、なんで?」
三宅「運命の人なんて見つからない、絶対」
恭子「ひどい」
三宅「僕は本当のことを言っただけ」
恭子「あなた、さいてー」
恭子、毛布を被る。
○空港・荷物受取
スーツケースが流れている。
三宅が黒いスーツケースを取り、歩き出す。
恭子も、黒いスーツケースを取り、歩き出す。
反対方向に向かって行く二人。
○パリ・全景
○安ホテル・中
部屋でスーツケースを開けようとする恭子。鍵が開かない。焦る恭子。
恭子、スーツケースをよく見る。
『M・M』のシールが貼ってある。
恭子「やだー、あたしのじゃない!」
鍵を無理やり開けようとする恭子。
と、ケータイが鳴る。
恭子、電話に出る。
恭子「もしもし……お母さん?」
母の声「恭子ちゃん、今、どこ?男の人から
電話があって、カバン間違えちゃったって」
恭子「え!なんていう人?」
母の声「みやけさん。みやけ、みつおさんていう人」
恭子「みやけ、みつお、M・M……あっ、その人のカバンわたしもってる!」
母の声「え!そうなの?恭子ちゃんもカバン間違えちゃったの?アハハハハ」
恭子「アハハハハ」
○同・ロビー
恭子がスーツケースを持って、待っている。
三宅がタクシーから降りてくる。
三宅は眉間にシワを寄せている。
三宅「中は見てないだろうな」
恭子「当たり前でしょ!鍵が開かないんだから!」
三宅「俺は見た。最悪だった。ぐっちゃぐちゃで吐き気がした」
○三宅の回想
三宅がスーツケースを開ける。
中身がぐちゃぐちゃで、下着が飛び出す。
三宅「ひーーーー」
○ホテルのロビー
恭子、赤面。
恭子「個人情報の漏えい!」
三宅「俺のカバンは?」
三宅、スーツケースを奪い取る。
鍵を開けて、中を見る。
小さな紙の箱が整然と並んでいる。
ほっと溜息をつく三宅。
恭子「ね、無事でしょ?」
三宅、恭子の顔をじっと見る。
恭子、ゴクリとつばをのむ。
三宅「……時間がない」
恭子「それだけかい!」
三宅がドアを開け、道路に出る。
○ホテルの前の道
車が一台走ってくる。
と、フランス人の子供が飛び出す。
三宅が飛び出す。
三宅「あぶない!(フランス語で)」
三宅、こどもを抱きかかえる。
車は急ブレーキ。
恭子がホテルから出てくる。
恭子「大丈夫ですか?」
三宅は額から血を流している。
○走る救急車
○救急車の中
三宅がストレッチャーに寝ている。
付き添う恭子。
三宅「スーツケース」
恭子「え?なに?ここにあるよ」
三宅「届けて欲しい」
恭子「わたしが?どこへ?」
三宅「ベルサイユ宮殿」
恭子「べ、ベルサイユきゅうでん?」
三宅「早くしないと間に合わない」
恭子「一体何を届けるの?」
三宅「うっ(痛そうに)」
恭子「誰に渡せばいいの?」
三宅「ピエールという男だ」
恭子「ピエール」
救急車が止まる。
三宅が運ばれていく。
恭子は、スーツケースを持って走る。
○ベルサイユ宮殿(夕)
○同・門の前(夕)
ピエール(30)が立っている。
恭子が走ってくる。
ピエールと恭子、目が合う。
恭子「もしかして、ピエール?」
ピエールはうんうんとうなずく。
恭子「これ、三宅さんから。み、や、け」
ピエールは恭子を抱きしめる。
恭子、まばたきをする。
○ベルサイユ宮殿・中(夜)
ピエールがスーツケースを開ける。
中から紙の箱を取り出す。
紙の箱からLED電球が出てくる。
電球をシャンデリアに飾ってゆく。
シャンデリアがパッと輝く。
恭子の顔が明るく照らし出される。
ピエール「間に合った(フランス語で)」
お客さんたちが入ってくる。
と、ケータイが鳴る。恭子、出る。
三宅の声「君は勝利の女神だ。お礼がしたい。
おい、聞いてるのか?」
ピエール、恭子に壁ドン。
※この物語はフィクションです。
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