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2017年03月30日

手塚治虫『鳥人体系』


あまり知られていませんが、手塚作品の隠れた名作で、個人的に推したいのが、この『鳥人体系』です。

あらすじは、ある日宇宙から飛来してきた謎の物質を、なぜか鳥類だけが好んで食べまくり、そのことがきっかけで鳥類の頭脳が少しずつ発展していく、というものです。

始めは鳥類をペットにしたり、家畜にしたりと虐げていた人類でしたが、鳥たちが火の扱いを覚えた事をきっかけに、徐々に立場が逆転していきます。翼というアドバンテージを持っていた鳥類は徐々に攻勢を強めていき、最終的には人類が完全に家畜化されるまでになってしまいます。

知性を発達させ、地球の支配権を取った「鳥人」の中には、好感をもてるやつもいれば、ずる賢いやつもいます。要するに、身体の構造が違うだけで、「鳥人」は「人」とほとんど変わるところがないのです。鳥人は、まるで人と同じような社会構造を作り、信仰を持ち、文化を発展させます。

そして、知性が発達すればするほど、鳥人の醜いところも、恐ろしいほどに人のそれと酷似していきます。殺人、強盗、差別、支配、戦争、虚栄、騙し合い、権力争い…

一体なぜ、知性を発展させたものは皆、こうなってしまうのでしょうか?
生命そのものに担わされた「業」なのでしょうか?

最終章「ドゥブルゥドへの査定委員会懲罰動議」では、宇宙人達による計画の意図が明かされ、それに対する査定が行われます。そして最後に提案される内容に、誰もがゾッとすることでしょう。

まったく、これほどまでに強烈な皮肉は前代未聞です!

「鳥」の話ですが、まさに「人」ごとではありません。

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グサオ
理学部生物科学科卒業。 大学の一般教養時代に哲学に目覚め、サラリーマンをしながら生物学と哲学の融合の道を日々模索しています。 特に進化論の考察を中心に進めています。 よろしくお願い致します。
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