2017年03月25日
手塚治虫『火の鳥』鳳凰編
鳳凰編は、『火の鳥』の最高傑作との呼び声も高い、作品中の白眉です。
主人公は青年期に、苦しみと怒りに駆られて幾人もの人を殺めた極悪人、我王。
そして我王とは対照的に描かれるもう一人の主人公は、正直者で、一途に仏師の道を志す茜丸。
我王は茜丸を襲って右腕を負傷させ、茜丸の仏師としての将来を危ぶませます。読者は誰しも、我王に対する憎悪の念を感じるはずです。反対に、それでもめげずにひたむきに努力する茜丸のことを、応援したくならない人はいないでしょう。
しかし、物語が進むにつれて、奇妙な事が起こります。序盤であれほどはっきりと分かれていた我王と茜丸に対する敵意と好意が、読者の中で少しずつ入れ変わっていくのです!
我王は速魚や良弁僧正との出会いを経て徐々に公正し、仏の道に近づいていきます。逆に茜丸は物欲が純粋な気持ちを忘れさせ、どんどんおかしくなっていってしまいます。
平凡な発想力では決してありえない、劇的なストーリー展開。この物語の構成そのものに、手塚治虫の天才的感性が感じ取れます。
さらに作中では、「因果応報」や「輪廻転生」といった仏教思想が説かれていきます。(分かりやすく仏教思想に触れることができるのも、この作品の魅力です。)我王がついに悟りを開く瞬間は、決して見逃せない名シーンです。
そして何より、物語のクライマックス。
そこで我王が見たものとは…
そして確信したこととは…
私はこれほどまでに感動的なシーンを、他に見たことがありません。
ぜひ。
価格:648円 |
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