2018年02月12日
スノウホワイト / 憤狼のクラッシャー
俺は王だ。誰よりも強く大きい、残虐な狼の王である。
雪山にこだまする羊達の悲鳴など、最高の余興だった。
だが獲物を引き裂く高揚感は、突然の雪崩に打ち消された。
気が付くと、羊が心配気に覗き込んでいた。しかも怪我まで手当て済みだ。馬鹿め、治ったら残らず食い殺してやる。そう思っていたが、いつしか親身な羊達に心を惹かれ始めていた。
怪我が癒えて群れに戻った俺は驚愕した。羊達の罠で多くの仲間が死んだという。優しいあいつらが、そんなことをする訳がない。復讐を叫ぶ仲間を後に、俺は羊達のもとへ急いだ。
「復讐をしただけ」と羊は言った。だが俺は奴らを憎めない。愛を教えてくれた羊達は、もう仲間と同じく大切な存在だった。両者が争うくらいならば、いっそ俺が、全てを殺して――
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